- はじめに
- 教育振興基本計画について
- 「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の概要と学校における働き方改革に関連する部分の抽出
- 「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の政策目標と基本施策の分析(学校における働き方改革の観点から)
- 1.学校における働き方改革に有効であると思われる施策…34個(項目数56)
- 新しい施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…19個(項目数30)
- 一部が新しい施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…3個(項目数4)
- 以前からある施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…12個(項目数22)
- 学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策(施策自体には意味があるが、現在の教職員定数で教職員の勤務時間内に総授業時数内で実施することが困難であるもの)…55個(項目数99)
- 新しい施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…15個(項目数23)
- 一部が新しい施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…8個(項目数13)
- 以前からある施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…32個(項目数63)
- 政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」
- 政策目標2「豊かな心の育成」
- 政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成」
- 政策目標4「グローバル社会における人材育成」
- 政策目標5「イノベーションを担う人材育成」
- 政策目標6「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成」
- 政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
- 政策目標8「生涯学び、活躍できる環境整備」
- 政策目標9「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」
- 政策目標10「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」
- 政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」
- 政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」
- 政策目標15「安全・安心で質の高い教育研究環境の整備、児童生徒等の安全確保」
- 学校における働き方改革にほぼ影響のない施策…26個(項目数43)
- 1.学校における働き方改革に有効であると思われる施策…34個(項目数56)
はじめに
今回の記事では、第4期教育振興基本計画となる「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の内容を精読し、第3期教育振興基本計画と比べて学校の負担を減らすことが可能な内容となっているかについてまとめました。
結論は「次期(第4期)教育振興基本計画には学校における働き方改革に有効な施策が増えているが、学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策が増えていることや、以前からある学校の負担となる施策が減っていないことから、全体として学校の負担を減らすことが可能な内容とはなっていない。」です。
世間では相変わらず教員のなり手不足や現場の教員の人員不足、教員の病気休職の多さが問題になっています。
そして、教育委員会や各学校で働き方改革の取組が進み、教員の在校等時間が少しずつ解消されつつあるとはいえ、まだまだ十分ではありません。
私はこのような教員不足の理由、学校における働き方改革がなかなか進まない理由の1つとして、教育振興基本計画の内容や学校教育で扱う施策の量に問題があるのではないかと思っています。
そこで、次期(第4期)教育振興基本計画は学校における働き方改革を配慮した内容や量となっているのか調べることにしたのです。
「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」が発表されたこと
令和5年1月13日に中央教育審議会教育振興基本計画部会が第4期教育振興基本計画となる「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」を発表しました。
同時に、この報告に対して意見募集も行いました。
さらに、令和5年1月20日と1月23日には、次期教育振興基本計画の策定に向けた審議経過報告に関する関係団体ヒアリングを開催しました。
そして、令和5年2月7日の中央教育審議会教育振興基本計画部会(第13回)では、「次期教育振興基本計画について(答申(素案))が発表されました。
さらに、令和5年2月24日には「次期教育振興基本計画(答申(案))」が発表されました。
※今回の記事は、「次期教育振興基本計画について(答申(素案))が発表される前の段階で書いたものになりますので、この記事で引用した次期教育振興基本計画の内容は、「次期教育振興基本計画(答申(素案))」や「次期教育振興基本計画(答申(案))」とは部分的に異なります。
そして、この記事内の「次期教育振興基本計画の策定に向けた審議経過について(報告)」の引用部分に関しては、後に「次期教育振興基本計画(答申(案))」として修正されたことで意味が全く変わってしまうような大きな変更はなく、そのため私の考察にも変更はありませんので、ご了承ください。
教育振興基本計画について
これまでの教育振興基本計画の策定の経緯
昭和22年に教育基本法が制定されてから半世紀後の平成18年12月22日に新しい教育基本法が公布・施行されました。
(この改正教育基本法については、私の記事「あなたが考えるいじめや暴力行為対策として有効だった施策は?いじめ認知率を上げること?!」に詳しく書いてありますのでご覧ください。)
この改正教育基本法で教育振興基本計画を定めることが規定されました。
それを受けて第1期教育振興基本計画は平成20年7月1日、第2期は平成25年6月14日、第3期は平成30年6月15日と、5年に1度ずつ策定されてきました。
令和5年は第4期教育振興基本計画として策定され閣議決定されていく予定です。
(第1期教育振興基本計画については、私の記事「学校における働き方改革は可能か⑦~平成21年度概算要求~」をご覧ください。
第2期と第3期の教育振興基本計画の内容については、私の記事「学校における働き方改革は可能か㉞~第3期教育振興基本計画、経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)~」に詳しく書いてありますのでご覧ください。)
教育振興基本計画の在り方について
そもそも教育振興基本計画が何のためにあってどういう内容なのか、教職員などの教育関係者でも詳しく知らない方が多いのではないか思います。
地方公共団体は国の教育振興基本計画を参酌し、地域の実情に応じて教育振興基本計画を策定するように努めなければならないことが教育基本法で定められています。
そして、各地方公共団体は、独自の教育振興基本計画の政策目標が達成できるように様々な施策を行い、施策に対する事後評価もします。
このように、国の教育振興基本計画は、教育現場で働く教職員にとって極めて関係の深いものなのです。
そこで、教育関係者の方をはじめそのほかの皆さんにも教育振興基本計画が何のためにあってどういう内容なのかが端的に分かる資料を探しました。
すると、平成15年3月20日に発表された「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(答申)」の資料の中に「教育振興基本計画の在り方について」というものがありました。
その中から教育振興基本計画を策定する必要性や教育振興基本計画の基本的考え方について記述した部分を紹介します。
教育振興基本計画策定の必要性
- 昭和22年に制定された教育基本法には、基本計画を策定する規定が置かれておらず、現在まで、教育に関する政府全体の基本計画は策定されてこなかった。
- 最近では「21世紀教育新生プラン」のように教育施策を体系化して国民に分かりやすく示す試みも行われている。しかし、これらは、文部科学省の施策の枠内で取りまとめられたものであり、政府全体として教育の重要性に明確な位置付けを与え、総合的に取り組む計画とはなっていない。
- 政府として、未来への先行投資である教育を重視するという明確なメッセージを国民に伝え、施策を国民に分かりやすく示すという説明責任を果たすためにも、教育の根本法である教育基本法に根拠を置いた、教育振興に関する基本計画を策定することが重要である。
- 教育基本法改正後、同法の理念や原則を実現するために必要な諸施策の実施につき、関係府省に対しても幅広く協力を求め、政府全体として教育振興基本計画を速やかに策定されることを期待する。
教育振興基本計画の基本的考え方(3)政策目標の設定及び施策の総合化・体系化と重点化
- 今後おおむね5年間に重点的に取り組むべき分野・施策を明確にするとともに、具体的な政策目標と施策目標を明記する必要がある。
- これらの目標の策定に際しては、国民に分かりやすいものとすることが重要である。
- 施策目標のうち可能なものについてはできる限り数値化するなど、達成度の評価を容易にし、施策の検証に役立つように留意する必要がある。
- 計画の策定に当たっては、1施策の総合化・体系化、2政策効果についての十分な検証を踏まえた施策の優先順位の明確化と施策の重点化、3これまでの答申等における提言の実現状況等に十分に留意。
教育振興基本計画の基本的考え方(4)計画の策定、推進に際しての必要事項
教育投資の充実
- 現在の厳しい財政状況の下で、未来への先行投資である教育投資の意義について、国民の支持・同意を得るためには、今まで以上に教育投資の質の向上を図り、投資効果を高めることにより、その充実を図っていくことが重要である。
- 教育投資の効率化に努めるとともに、政策評価の結果を適切に反映させる必要がある。
国と地方公共団体、官民の適切な役割分担
- 教育における地方分権、規制改革を一層推進するとともに、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持向上を図る観点から、国が責任を負うべき施策と地方公共団体が責任を負うべき施策とを明確に区別した上で、相互の連携・協力が図られるようにする必要がある。
- 関係行政分野との連携・協力に努めるとともに、行政と民間との間の適切な役割分担、連携・協力にも配慮することが大切。
施策評価の実施
国民に対する説明責任を果たすため、評価結果の積極的な公開を行うとともに、国民からの意見を計画に適切に反映されることが大切である。
「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の概要と学校における働き方改革に関連する部分の抽出
まず、令和5年1月13日に発表された「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の概要をお知らせするために、「Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策(考え方)」を紹介します。
次に、「Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望」、「Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針」から学校における働き方改革に関連する部分を抽出して紹介します。
Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策(考え方)
- 本計画においては、令和5(2023)年度から令和9(2027)年度までの5年間における①教育政策の目標、②目標を実現するために必要となる基本施策、③目標の進捗状況を把握するための指標を示す。
- 国の教育振興基本計画は、教育活動の多くは地方公共団体や民間において自律的に行われるものであることに留意しつつ、国全体としての目標や成果に係る指標、国自身が取り組む施策を明らかにするものである。
- 各実施主体における具体的な教育の在り方については、国全体の目標も参考にしつつ、各地域や教育実践の現場において、それぞれの実情も踏まえながら各関係者が自主的に設定することが期待される。
- なお、本計画に示す指標については、以下のことに留意が必要である。
- 「今後5年間の教育政策の目標」の状態を表す指標として、現在の水準等を踏まえ、改善の方向を示すことが必要かつ適切であるものについて、指標として設定したこと。
- その数値の達成が自己目的化され、本来の目指すべき状況とのかい離や望まざる結果を招かないよう、十分留意することが必要であること。
- 指標のみをもって目標の達成状況に係る全ての要因を評価することは困難であることに留意する必要があること。
- 当該指標の推移に加え、関連する情報も含め、多角的な評価を行うことが重要であること。
- 子供・保護者等が置かれている環境は様々であることから、個々の状況に配慮しながら、各施策の実施・評価に取り組んでいくことが求められること。
- より適切な指標の在り方について不断に検討し、計画期間中であっても指標の見直しを行う柔軟な取扱いも可能とすること。
- 教育基本法においては、地方公共団体は、国の定める計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるように努めなければならないこととされており、各地域の実情を踏まえ、特色ある目標や施策を設定し、取組を進めていくことが重要である。
- 国の設定する指標等も参酌しつつ、それぞれの実情に応じた地域の発意による指標の設定や全国レベルの調査結果との比較による適切な指標の設定について検討するとともに、複数の指標及び他のデータも含めた分析による現状把握等により、PDCAサイクルを構築することが期待される。
Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望
- 学校における働き方改革については、その成果が着実に出つつあるものの、依然として長時間勤務の教職員も多く、引き続き取組を加速させていく必要がある。
- 近年の大量退職等に伴う採用者数の増加や既卒の受験者数の減少、産休・育休取得者や特別支援学級の増加等が要因となり、採用倍率の低下や教師不足といった課題も生じている。
Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針
日本社会に根差したウェルビーイングの向上・日本発の概念整理
- 子供たちのウェルビーイングを高めるためには、教師のウェルビーイングを確保することが必要であり、学校が教師のウェルビーイングを高める場となることが重要である。
- 子供の成長実感や保護者や地域との信頼関係があり、職場の心理的安全性が保たれ、労働環境などが良い状態であることなどが求められる。
5つの基本的な方針①グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成(マルチステージの人生生涯にわたって学び続ける学習者の育成)
- 生涯学習社会を実現するためには、まず、生涯にわたって学び続ける学習者としての基盤を学校教育等において培うことが重要である。
- 初等中等教育や高等教育において、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解することや、興味・関心を喚起する学びを提供することなどにより、学びを習慣化し、生涯にわたって能動的に学び続けるための態度を涵養することが重要である。
5つの基本的な方針⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話(指導体制・ICT環境等の整備)
- 我が国の教師の仕事時間は国際的に見て長くなっていることに加え、教師不足の問題が顕在化している。
- 次期教育振興基本計画の実効性確保のためには、教師の人材確保が不可欠であり、学校における働き方改革の更なる推進とあわせて、指導体制の整備等を通じ、教職の魅力の向上を図る必要がある。
- 多様化する困難等に対し、「チーム学校」として対応するためには、教員業務支援員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の支援スタッフの役割も重要である。
- 本年度教員勤務実態調査の結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含めた処遇の在り方を検討していく必要がある。
- これらの取組を推進していくためには、地方教育行政の充実を図ることが必要であり、教育委員会の機能強化・活性化や教育委員会と首長部局の連携等を推進することが求められる。
5つの基本的な方針⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話(各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップ)
- 計画策定に向けては、教育関係団体や関係省庁から意見を聴くとともに、教育の当事者である子供からの意見を聴くことも必要である。
- その上で、対話を通じて計画の策定・広報・フォローアップを行うことで、教育現場、地方公共団体(教育委員会及び首長部局)、子供・学生・保護者・学習者、大学等の高等教育機関など、各ステークホルダーと政府が一体となって教育を振興していく共通意識を持つことが重要である。
「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の政策目標と基本施策の分析(学校における働き方改革の観点から)
ここでは、「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」で示された国の基本施策(全115施策)について、学校における働き方改革の観点から分類してみたいと思います。
あくまでも私の主観に基づくものです。
学校の負担を軽減することが可能な内容となっているかどうかという観点から全115個の基本施策を分類した結果になります。
ただし、ここでいう学校とは、大学等の高等教育機関を除きます。
主に幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、義務教育学校、特別支援学校のことです。
分類の仕方は以下のようになります。
- 学校における働き方改革に有効であると思われる施策
- 新しい施策
- 一部が新しい施策
- 以前からある施策
- 学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策
- 新しい施策
- 一部が新しい施策
- 以前からある施策
- 学校における働き方改革にほぼ影響がない施策
これらの政策目標、施策名、施策の数、項目の数をまとめたものを紹介します。
どうしてそのように分類したのかを書き添えたものもあります。
ただし、2の「学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策」とは、施策自体には意味があるが、これらの施策を現在の教職員の勤務条件や指導体制のまま行うことに無理があると思われるもののことです。
決してその施策自体を否定するものではありません。
そして、「新しい施策」とは第3期教育振興基本計画に類似の施策がないか、あっても単独の施策名がついていなかったものです。
また、「一部が新しい施策」には施策名は同じだけれど新たな内容が加わったものが含まれます。
さらに、「以前からある施策」には名前が違うけれど以前も同じ内容であったものが含まれます。
なお、各施策名の後の数字はその施策の項目数です。
1.学校における働き方改革に有効であると思われる施策…34個(項目数56)
新しい施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…19個(項目数30)
政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成」
スポーツ実施者の安全・安心の確保…3
体育・スポーツ施設の整備・充実…1
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
教育相談体制の整備…1
高等専修学校における教育の推進…1
政策目標8「生涯学び、活躍できる環境整備」
学習履歴の可視化の促進…2
政策目標9「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」
部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行…1
政策目標11「学校DXの推進・デジタル人材の育成」
基盤的ツールの開発・活用…1
教育データの標準化…1
教育データ分析・利活用…1
政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」
初等中等教育段階/地方教育行政の充実…1
部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行…4
政策目標14「NPO・企業・地域団体等との連携・協働」
NPOとの連携…1
医療・保健機関との連携…1
警察・司法との連携…2
スポーツ・文化芸術団体との連携…1
福祉機関との連携…1
関係省庁との連携…1
政策目標15「安全・安心で質の高い教育研究環境の整備、児童生徒の安全確保」
文教施設の官民連携…1
政策目標16「各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップ」
各ステークホルダー(子供含む)からの意見聴取・対話…1
一部が新しい施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…3個(項目数4)
政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた心身の育成」
運動部活動改革の推進と身近な地域における子供のスポーツ環境の整備充実…1
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
海外で学ぶ日本人・日本で学ぶ外国人等への教育の推進…2
日本語教育の充実…1
以前からある施策で学校における働き方改革に有効であると思われる施策…12個(項目数22)
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
子供の貧困対策…1
夜間中学の設置・充実…1
高等学校定時制課程・通信制課程の質の確保・向上…1
政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」
校務DXの推進…1
政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」
初等中等教育段階/指導体制の整備…3
初等中等教育段階/ICT環境の充実…1
政策目標13「経済的状況・地理的条件によらない質の高い学びの確保」
へき地や過疎地域等における学びの支援…3
災害時における学びの支援…1
教育費負担の軽減に向けた経済的支援…4
政策目標15「安全・安心で質の高い教育研究環境の整備、児童生徒等の安全確保」
学校における教材等の充実…2
学校施設の整備…1
私立学校の教育研究基盤の整備…3
学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策(施策自体には意味があるが、現在の教職員定数で教職員の勤務時間内に総授業時数内で実施することが困難であるもの)…55個(項目数99)
★…指導内容や行事が増えるため教職員の負担が増すもの
☆…個別に対応するための配慮事項が増えて教職員の負担が増すもの
◆…研究や実践で教職員の負担が増すもの
◇…研修や授業準備で教職員の負担が増すもの
▲…教職員の事務的負担が増えるもの
新しい施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…15個(項目数23)
政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」
★☆◆◇個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実…1
◆文理横断・文理融合教育の推進…2
政策目標2「豊かな心の育成」
★子供の権利利益の擁護…1
☆発達支持的生徒指導の推進…1
- 「全ての児童生徒を対象に児童生徒が自発的・自主的に自らを発達させていくことを尊重し、学校・教職員がいかにそれを支えるかという発達支持的生徒指導の側面に重点を置いた働きかけを進める。」とあり、手間と時間がかなりかかりそう。果たして今の学校現場にそのような余裕があるのか。
★生命の安全教育の推進…1
- 「学校等における「命(いのち)の安全教育」の全国展開を推進」とあるが、性犯罪・性暴力については、社会全体の問題であるので、学校で扱うよりも社会教育として保健所や公民館などで扱うようにしたらどうか。
★文化芸術による子供の豊かな心の育成…1
政策目標4「グローバル社会における人材育成」
◆在外教育施設の魅力向上…1
政策目標5「イノベーションを担う人材育成」
★☆◆◇探求・STEAM教育の充実…4
★▲理工系分野をはじめとした人材育成及び女性の活躍推進…3
政策目標6「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成
★子供の意見表明…1
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
☆ヤングケアラーの支援…1
☆特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援…1
政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」
◇教師の指導力向上…1
★☆◆◇▲1人1台端末の活用…2
政策目標14「NPO・企業・地域団体との連携・協働」
★▲企業との連携…2
一部が新しい施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…8個(項目数13)
★…指導内容や行事が増えるため教職員の負担が増すもの
☆…個別に対応するための配慮事項が増えて教職員の負担が増すもの
◆…研究や実践で教職員の負担が増すもの
◇…研修や授業準備で教職員の負担が増すもの
▲…教職員の事務的負担が増えるもの
政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」
★▲キャリア教育・職業教育の充実…4
- 「初等中等教育段階においては「キャリア・パスポート」等を活用し」の記載あり。「キャリア・パスポート」は手間がかかる割に活用されていないという声を聞くので廃止にするべきではないかと思う。
政策目標2「豊かな心の育成」
★☆◆主観的ウェルビーイングの向上…1
- 第3期教育振興基本計画では、「子供たちの自己肯定感・自己有用感の育成」という施策名であったものが名称と内容を少し変更したものだと思われる。
- 「日本社会に根差したウェルビーイングの概念整理を踏まえた上で、幸福感や自己肯定感、他者とのつながりなどの主観的ウェルビーイングの状況を把握し、学校教育活動全体を通じて子供たちのウェルビーイングの向上を図る。」とあり、教職員が学習指導等の他の指導をしつつ児童生徒の主観的ウェルビーイングを把握しウェルビーイングの向上を図るのは難しそうだから、実施するのなら、別に「ウェルビーイング専門員」を最低でも学校に1人ずつ派遣してほしい。
★読書活動の充実…1
★伝統や文化に関する教育の推進…2
- 「宗教に関する一般的な教養に関する教育を推進する。」と学校教育で扱う内容を増やそうとしているが、児童生徒のみの問題ではないので、社会教育として公民館などで行うことが必要なのではないかと思う。
政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成」
★☆◆◇スポーツを通じた共生社会の実現・障害者スポーツの振興…1
★☆◆◇生活習慣の確立、学校体育の充実・高度化…2
- 「社会全体で子供たちの生活リズムを整えることの重要性を共有するため、子供が情報機器に接する機会の拡大による生活時間の変化等の状況等も踏まえつつ、学校における指導や」とあるが、子供でなく保護者の理解が最も重要なので、生活習慣の確立については学校でなく全て社会教育として公民館などで行うべき。
- 「体力や技能の程度、性別や障害の有無等にかかわらず共に学ぶ体育活動」とあるが、普通学級では1クラス35人(小学校)もしくは40人(中学校)に教師1人(支援員が入っても合計2人程度)の指導体制。このような状況では実施は難しいので、体育の授業内でなく、社会教育として地域のスポーツ施設などで地域の人が協力して行うべき。
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
★障害者の文化芸術活動の推進…1
- 「小・中学校・特別支援学校等において、実演芸術の公演や障害のある芸術家の派遣により、子供たちに対し文化芸術の鑑賞・体験等の機会を提供する」とあるが、学校行事を増やすことになるので、社会教育として地域にある劇場などで行えばよい。
政策目標9「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」
▲コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進…1
以前からある施策で学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…32個(項目数63)
★…指導内容や行事が増えるため教職員の負担が増すもの
☆…個別に対応するための配慮事項が増えて教職員の負担が増すもの
◆…研究や実践で教職員の負担が増すもの
◇…研修や授業準備で教職員の負担が増すもの
▲…教職員の事務的負担が増えるもの
政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」
★◆◇幼児教育の質の向上…1
★☆◆◇高等学校教育改革…1
★☆▲全国学力・学習状況調査の実施・分析・活用…1
- 「本体調査の毎年度、悉皆での実施」との記載あり。毎年学校や児童生徒に負担を強いる状態が続いてしまう。
★☆◆◇新しい時代に求められる資質・能力を育む学習指導要領の実施…2
★☆▲大学入学者選抜改革…2
◆◇▲学校段階間・学校と社会の接続の推進…2
政策目標2「豊かな心の育成」
★◆◇道徳教育の推進…1
★☆◆◇いじめ等への対応、人権教育の推進…5
★◆◇▲体験活動・交流活動の充実…2
★青少年の健全育成…1
政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成」
★☆学校保健、学校給食・食育の充実…3
- 「子供たちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、学習指導要領に基づき、小・中・高等学校等における各教科等を通じた食育を推進する。」とあるが、家庭に大いに関係する問題であるため、学習指導要領から食育を消去して社会教育として公民館や保健所で行うべき。すると、給食の時間は支援員が指導し、教師は休憩時間とすることができる。
政策目標4「グローバル社会における人材育成」
★☆◆◇▲外国語教育の充実…3
- 「各都道府県等の負担軽減など必要な改善を行いつつ、「英語教育改革プラン」の策定とそれに基づく計画的な取組を促し」とある。新しい計画の策定とその実行を義務づけることで、各教育委員会や学校の負担がさらに増える。
- 「大学入学者選抜において、「読む・書く・聞く・話す」の4技能に関する総合的な英語力を適切に評価」とあり、高等学校や大学等や児童生徒の負担が増す。
★◆高等学校・高等専門学校・大学等の国際化…3
☆▲外国人留学生の受入れの推進…2
▲日本人学生・生徒の海外留学の推進…3
政策目標5「イノベーションを担う人材育成」
☆▲優れた才能・個性を伸ばす教育の推進…2
★◆◇▲起業家教育の推進…1
政策目標6「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成」
★◆◇▲主権者教育の推進…2
★◆◇▲持続可能な開発のための教育(ESD)の推進…2
★☆男女共同参画の推進…1
★消費者教育の推進…1
★◆◇環境教育の推進…2
★災害復旧教育の推進…2
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
★☆◆◇▲特別支援教育の推進…5
☆◆◇▲不登校児童生徒への支援の推進…3
★☆高校中退者に対する支援…1
- 「中途退学を余儀なくされる状態を未然に防ぐため、生徒指導、キャリア教育・進路指導が連携し、小・中学校段階も含め、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力の育成を図る」とあり、小・中学校段階において指導すべき内容が増える。
政策目標8「生涯学び、活躍できる環境整備」
★◆◇▲現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進…2
政策目標9「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」
★家庭教育支援の充実…1
政策目標10「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」
▲地域課題の解決に向けた関係施設・施策との連携…1
政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」
★◆◇▲児童生徒の情報活用能力の育成…1
政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」
◆◇初等中等教育段階/教師の資質能力の向上…2
政策目標15「安全・安心で質の高い教育研究環境の整備、児童生徒等の安全確保」
★◇▲学校安全の推進…2
学校における働き方改革にほぼ影響のない施策…26個(項目数43)
政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」
学修者本位の教育の推進…3
政策目標3「健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成」
アスリートの発掘・育成支援…1
スポーツを通じた健康増進…1
政策目標4「グローバル社会における人材育成」
芸術家等の文化芸術の担い手の育成…1
国際教育協力と日本型教育の海外展開…1
政策目標5「イノベーションを担う人材育成」
大学院教育改革…2
高等専門学校の高度化…1
若手研究家・科学技術イノベーションを担う人材育成…1
大学・専門学校等における専門人材育成…3
大学の共創拠点化(新しい施策)…1
政策目標7「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」
障害者の生涯学習の推進…2
大学等における学生支援…1
政策目標8「生涯学び、活躍できる環境整備」
女性活躍に向けたリカレント教育の推進…1
働きながら学べる環境整備…2
リカレント教育のための経済支援・情報提供…2
大学等と産業界の連携等によるリカレント教育の充実…3
生涯を通じた文化芸術活動の推進…1
リカレント教育の成果の適切な評価・活用…3
高齢者の生涯学習の推進…1
政策目標10「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」
社会教育施設の機能強化…1
社会教育人材の養成・活躍機会拡充…1
政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」
社会教育分野のデジタル活用推進…1
教育環境のデジタル化の促進(高等教育)…3
デジタル人材育成の推進(高等教育)(新しい施策)…1
政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」
高等教育段階/教育研究の質向上に向けた基盤の確立…2
高等教育段階/高等教育機関の連携・統合…3
「Ⅳ 今後5年間の教育政策の目標と基本施策」の目標別基本施策の指標候補に対する見解
次に、「Ⅳ 今後5年間の教育政策の目標と基本施策」の目標別基本施策の指標候補について、違和感を感じるものが多くありますので、学校における働き方改革とは無関係なものもありますが、それらに対する私の見解を述べます。
政策目標1「確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成」の指標候補について
- 「知識・技能、思考力、表現力等、学びに向かう力・人間性等の資質・能力の調和がとれた個人を育成し」とあるが、多様性を求める時代においても調和のとれた個人が求められるのはなぜなのか疑問がある。
- 「「OECD」の「PISA」において、科学的リテラシー及び数学的リテラシーについては引き続き世界トップレベルたる現状の水準を維持し、読解力については同水準への到達を目指す。また、TIMSSにおいては、引き続き現状の水準の維持・向上を図る。」とあるが、「子供たちのウェルビーイングの向上」とか「多様な個々の状況に応じた学びの実現を目指す。」といった考え方に対立する指標のように思う。
- 「将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加」とあるが、児童生徒に無理矢理将来の夢や希望を持たせることはナンセンスだと思う。
政策目標2「豊かな心の育成」の指標候補について
- 「先生は自分のいいところを認めてくれると思う児童生徒の割合の増加」とあるが、35人学級(小学校)ないしは40人学級で、一人一人のいいところを見つけて認め、それを児童生徒に伝えていくことは負担がある。特に小学校では1人で1つの学級の全ての授業を受け持つこともあるので負担が大きい。
- 「過去に、文化芸術の鑑賞・体験機会がない子供たちが、学校等での鑑賞・体験事業を通じて、文化芸術への興味関心を持った割合の増加」とあるが、文化芸術に関する学校行事があることを見込んで指標例が示されている。学校は行事の精選をする必要があるため、学校外で大人も巻き込んで社会教育として行うべき。
政策目標4「グローバル社会における人材育成」の指標候補について
- 「英語力について、中学校卒業段階でCEFRのA1レベル相当以上、高等学校卒業段階でCEFRのA2レベル相当以上を達成した中高生の割合の増加(5年後目標値:6割以上)などの指標候補がたくさん挙げられているが、学校、教師、児童生徒にとって負担が大きい。
政策目標6「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成」の指標候補について
- 「学級生活をよりよくするために学級会(学級活動)で話し合い、互いの意見のよさを生かして解決方法を決めていると答える児童生徒の割合の増加」とあるが、小学校低学年でこの指標に基づいて学級会を行うのはかなり難しい。他の学年でもこの指標に基づいてじっくり時間をかけて学級会を行う時間的な余裕がない。
政策目標11「教育DXの推進・デジタル人材の育成」及び政策目標12「指導体制・ICT環境の整備、教育研究基盤の強化」の指標候補について
- 「ICT機器を活用した授業頻度の増加」とあるが、ICT活用で逆に使用方法や使用ルールに関する指導事項が増えてしまい、他の学習に支障が出ることが懸念される。ICT機器を使い個別最適化された授業を目指すなら、他の学習内容を削るなどの措置が必要だと思う。
まとめ
この記事で第4期教育振興基本計画の基となる「次期教育振興基本計画に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の内容を学校における働き方改革の観点から読み解いてきました。
すると、「5つの基本的な方針」には「学校における働き方改革の更なる推進とあわせて、指導体制の整備等を通じ、教職の魅力の向上を図る」「給特法等の法制的な枠組みを含めた処遇の在り方を検討」などの文言が入っており、学校における働き方改革を進めていく方針であることが分かりました。
さらに、学校の負担が軽減される内容となっているかどうかという観点から全115個の基本施策を分類した結果は以下のとおりとなりました。
- 学校における働き方改革に有効であると思われる施策…34個→29.6%(およそ3割)
- うち新しい施策数…19個(教育相談体制の整備、部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行、警察・司法との連携など)
- 学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策…55個→47.8%(およそ5割)
- うち新しい施策数…15個(生命の安全教育の推進、探求・STEAM教育の充実、ヤングケアラーの支援、特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援、教師の指導力向上、1人1台端末の活用など)
- 学校における働き方改革にほぼ影響がない施策…26個→22.6%(およそ2割)
つまり、第4期教育振興基本計画となる「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」の内容を精読し、第3期教育振興基本計画と比べて学校の負担を減らすことが可能な内容となっているかを調べた結果、
「次期(第4期)教育振興基本計画には学校における働き方改革に有効な施策が増えているが、学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策が増えていることや、以前からある学校の負担となる施策が減っていないことから、全体として学校の負担を減らすことが可能な内容とはなっていない。」
という結論となりました。
これは、この記事内で述べたように、あくまでも私の主観に基づくものであり、 「学校における働き方改革に逆行するおそれのある施策」と考えているものであっても、決してその施策自体を否定するものではありません。
あくまでも、これらの施策を現在の教職員の勤務条件や指導体制のまま行うことに無理があると思われるもののことです。
文部科学省や教育委員会からは、学校における働き方改革は、学校が無駄な業務を削減する、教職員が効率的に業務を行うなどの方法により達成するように伝えられます。
しかしその割には、次期教育振興基本計画にも、例えば「生命の安全教育」のような新しい学習内容を増やしたり、人手や手間のかかる「発達支持的生徒指導」というような指導方法を提唱したり、「個別最適な学びと協同的な学びの一体的充実」のような授業準備や研究に時間がかかりそうな新しい指導方法を盛り込んだりしています。
ほかにも「生涯学習社会を実現するためには、まず、生涯にわたって学び続ける学習者としての基盤を学校教育等において培うことが重要である。」というように、学校教育以外が担うべき教育までも学校教育の役割として組み込み、そのためにまたしても学校教育において指導すべき内容が増えています。
このように、全ての国民に無償で実行することができるという利点を生かし、社会問題を解決する手段や経済を発展させる手段として必要な施策を新たに学校教育の内容に組み込むということが、次期(第4期)教育振興基本計画策定でも行われています。
しかも、それらの施策を実行するために、どれだけの標準授業時数や教職員の労働力が必要かということには一切触れないまま施策を立案しています。
この「次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(報告)」でも、「小学校における35人学級の計画的整備や高学年教科担任制の推進等の教職員定数改善と支援スタッフの充実、通級による指導の担当教員の基礎定数化、外部人材への財政支援の拡充等を実施した」などと、指導体制が整ったことを強調していますが、「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進」などの多くの目標を達成するためにはまだまだ十分な指導体制とは言えません。
そして、現在の指導要領のように多すぎる指導内容と標準授業時数のままでは、「子供たちのウェルビーイングを高める」ことも「教師のウェルビーイングを確保する」ことも、どちらも不可能だと考えます。
令和5年2月24日に発表された次期(第4期)教育振興基本計画答申(案)はこのまま閣議決定されることでしょう。
そして、今までどおりの改訂間隔だとすると令和9年度(2027年)までの5年間の、学校での教育内容はほぼ変わらないでしょう。
しかし、次期学習指導要領の改訂が2027年度から始まる見通しですので、それに向けて、学校における働き方改革を中心に見据えた教育振興基本計画の見直しを、前倒しで行うことが私の願いです。
そうすることで、教師へのなり手不足や病気による休職増加の問題、教師の在校等時間の多さの問題もほぼ解決すると思うからです。
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