地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか③~定年による退職の特例とは?~はじめに
これまで公務員の年金支給年齢が徐々に引き上げられてきました。
そして、令和3年度末退職の昭和36年度生まれの方以降は、公務員の年金支給開始年齢が65歳となりました。(特定警察職員等の一部の職種を除く。)
このことにより生じた、給料も年金も支給されない空白期間を解消するため、公務員の定年年齢が引き上げられることになりました。
令和3年6月4日に成立した「国家公務員法改正法」と「地方公務員法改正法」により、公務員の定年年齢は令和5年度に60歳を迎える昭和38年度生まれの方から、2年ごとに1歳ずつ引き上げられます。(「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか①~定年前再任用短時間勤務制~」参照)
これにより、令和9年度に60歳を迎える昭和42年度生まれの方以降、公務員の定年が65歳となります。(一部の職種の方は除きます。)
しかし、昭和42年度以前に生まれた公務員の方は、依然として、定年退職後に、給料も年金ももらえない空白期間ができてしまいます。(昭和35年度生まれの方までは、条件が合えば65歳前に「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。)
今回そんな公務員の方に是非お教えしたい制度があるんです!!
それは、
「定年による退職の特例」
です。
実は現行の法律にも改正後の法律にも定年が延長される制度があるんです。
さらに今回の改正で定年を延長される条件が増えたんです。
「そんな制度があるなら、是非利用したい。」
と考える公務員の方もいらっしゃるでしょう。
そういう方のために、この記事では、この「定年を延長できる制度」である、「定年による退職の特例」という制度について説明します。
説明するにあたり、関連する内容として「平成11年7月22日の地方公務員法一部改正」を比較対象とします。
そして「平成11年7月22日の地方公務員法一部改正当時」と、「令和3年6月4日地方公務員法の一部改正後」を比較していきます。
その中で、今回の改正で「定年による退職の特例」がどのように変わったのか、どのような場合に適用されるのか、明らかにします。
地方公務員法改正案施行で【定年による退職】がどう変わるのか(平成11年7月22日当時と令和3年6月4日一部改正後)
「定年による退職」比較
地方公務員法第二十八条の二(定年による退職)(平成11年7月22日当時)
- 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以降における最初の三月三十一日までの間において、条例で定める日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
- 前項の定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする。
- 前項の場合において、地方公共団体における当該職員に関しその職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより国の職員につき定められている定年を基準として定めることが実情に即さないと認められるときは、当該職員の定年については、条例で別の定めをすることができる。この場合においては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衝を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
- 第三項の規定は、臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員には適用しない。
地方公務員法第二十八条の六(定年による退職)(令和3年6月4日一部改正後)
- 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以降における最初の三月三十一日までの間において、条例で定める日(次条第一項及び第二項ただし書において「定年退職日」という。)に退職する。
- 前項の定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする。
- 前項の場合において、地方公共団体における当該職員に関しその職務の責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより国の職員につき定められている定年を基準として定めることが実情に即さないと認められるときは、当該職員の定年については、条例で別の定めをすることができる。この場合においては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衝を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
- 第三項の規定は、臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員には適用しない。
「定年による退職」比較まとめ~
地方公務員法改正案施行で【定年による退職の特例】がどう変わるのか(平成11年7月22日当時と令和3年6月4日一部改正後)
「定年による退職の特例」の比較
地方公務員法第二十八条の三(定年による退職の特例)(平成11年7月22日当時)
- 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定(定年による退職)により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
- 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存ずると認められる十分な理由があるときは、条例で定めるところにより、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
地方公務員法第二十八条の七(定年による退職の特例)(令和3年6月4日一部改正後)
- 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定(定年による退職)により退職すべきこととなる場合において、次に掲げる事由があると認めるときは、同項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、当該職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、当該職員を当該定年退職日において従事している職務に従事させるため引き続き勤務させることができる。ただし、第二十八条の五第一項から第四項までの規定(管理監督職勤務上限年齢による降任等及び管理監督職への任用の制限の特例(※))により異動期間(これらの規定により延長された期間も含む。)を延長した職員であって、定年退職日において管理監督職を占めている職員については、同条第一項(当該職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職員の他の職への降任等により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由)又は第二項(当該職員の職務の特殊性を勘案して、当該職員の他の職への降任等により、当該管理監督職の欠員の補充が困難となることにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由)の規定により当該定年退職日まで当該異動期間を延長した場合に限るものとし、当該期間は、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して三年を超えることができない。(※「管理監督職勤務上限年齢による降任等及び管理監督職への任用の制限の特例」については、後日「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか⑤~定年による退職の特例が実際適用される場面は?~」で詳しく説明します。)
①前条第一項の規定(定年による退職)により退職すべきこととなる職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職員の退職により、公務の運営に著しい支障が生じると認められる事由として条例で定める事由
②前条第一項の規定(定年による退職)により退職すべきこととなる職員の職務の特殊性を勘案して、当該職員の退職により、当該職員が占める職の欠員の補充が困難となることにより、公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として条例で定められる事由
- 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項各号に掲げる事由が引き続きあると認めるときは、条例で定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、当該期限は、当該職員に係る定年退職日(同項ただし書に規定する職員にあっては、当該職員が占めている管理監督職に係る異動期間の末日)の翌日から起算して三年を超えることができない。
- 前二項に定めるもののほか、これらの規定による勤務に関し必要な事項は、条例で定める。
「定年による退職の特例」比較まとめ~
地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか③~定年による退職の特例とは?~まとめ
今回は、地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか③~定年による退職の特例とは?~というテーマで調べたことをまとめました。
「平成11年7月22日の地方公務員法一部改正当時」と、「令和3年6月4日地方公務員法の一部改正後」を比較した結果、
”令和3年6月4日改正後は、「職員の職務の特殊性を勘案して、当該職員の退職により、当該職員が占める職の欠員の補充が困難となることにより、公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として条例で定められる事由」による「定年による退職の特例」が加わった”
ことが分かりました。
規模の小さい自治体では、職員の数が限られているため、大事な役職に就いている人が定年退職すると、その仕事を引き継ぐことのできる人がいなくなってしまう場合などがあるからでしょう。
仕事の引き継ぎが困難になっている原因としては、国の施策により、公務員の人数が減らされてきたことによって公務員全体の人手が不足していたり、公立学校教員の人件費の、国から地方自治体への補助金が2分の1から3分の1に減らされたことによって、公立学校教員が不足したりしていることも考えられるでしょう。
それは、令和3年6月4日の地方公務員法改正後に「管理監督職勤務上限年齢制」(役職定年制)ができたのにかかわらず、「管理監督職勤務上限年齢による降任等及び管理監督職への任用の制限の特例」ができ、条件が合えば管理監督職として上限年齢到達後も定年まで勤務することができる制度や、場合によっては定年後も当該管理監督職として継続して勤務することができる制度ができたことからも分かります。
次回は「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか④~公務員は定年退職後は必ず再任用されるの?~」というテーマでお送りします。
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