はじめに
教育振興基本計画について
皆さんは、「教育振興基本計画」というものが存在することをご存じでしょうか?
平成18年に、「教育基本法」※が改正されたのを機にできた制度で、改正教育基本法の理念を踏まえ、政府として総合的・計画的に教育振興に関する施策を行うため、策定されます。
そして、この国の「教育振興基本計画」を基に、地方公共団体も、地域の実情に応じて教育振興基本計画を定めるように努めることが、教育基本法で定められています。
公立学校の教員の方は、ご自分の勤務している学校の自治体が作成した「教育振興基本計画」は、見たことがある方が多いのではないでしょうか。
(※教育基本法の改正については、私の記事の「あなたが考えるいじめや暴力行為対策として有効だった施策は?いじめ認知率を上げること?!」の中で詳しく説明していますので、そちらを参考にして下さい。)
国の「教育振興基本計画」は、平成20年度以降、5年に1度、政府のその年度当初の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の発表と同時期に発表されてきました。
つまり、5年ごとの教育政策の方針は、事前に政府により、大筋が決められている、ということです。
そして、その計画は、教育再生により、国の経済を発展させ、財政運営を成功させることを主眼において、「経済財政運営と改革の基本方針」に則って立てられた計画なのです。
第1期計画は、平成20年度から24年度、第2期計画は、平成25年度から29年度、第3期計画は平成30年度から34年度(2022年度)の計画として策定されました。
(「第1期教育振興基本計画」については、「学校における働き方改革は可能か⑦」に内容の説明が記載されていますので、ご覧下さい。)
「第2期教育振興基本計画」については、今までの記事で触れてこなかったため、この記事でその内容を説明したいと思います。
そして、令和元年度以降の予算に関係する、平成30年に策定された「第3期教育振興基本計画」についてもこの記事内で説明します。
この記事の内容の概要
「学校における働き方改革は可能か㉜」では、「新しい時代の教育の向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ」が、平成29年12月22日に発表されたことを書きました。
今回は、それを受けて平成30年2月9日に通知された「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理に係る取組の徹底について」の内容をまずお伝えします。
その後、平成30年3月29日に内閣府より発表された「経済・財政一体改革の中間評価のポイント」について書きます。
そして、平成30年4月25日に行われた「学校における働き方改革特別部会」の「学校の組織運営体制のあり方に関する参考資料」から、「事務職員関係」の文書の内容を紹介します。
次に、前述したように、まだ、このシリーズで未掲載であったため、平成25年度に策定された「第2期教育振興基本計画」について記載します。
さらに、平成30年6月15日に発表された「第3期教育振興基本計画」と「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)」について、お伝えします。
続いて、「学校における働き方改革」が、実際の現場でどのぐらい進んでいるかが分かる資料として、平成30年8月22日に発表された「平成30年度教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査の結果【概要】」の内容をお見せします。
学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について(事務次官通知/平成30年2月9日)
「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に関する取組の徹底について」が、平成30年2月9日に通知されました。
文部科学省として取り組む「学校における働き方改革に関する緊急対策」について周知するとともに、学校における働き方を見直し、限られた時間の中で教師が専門性を生かしつつ、授業や授業準備、研修の時間や、児童生徒と向き合うための時間を十分確保し、教師が自らの人間性を高め、児童生徒に対して効果的な教育活動を行うため、各教育委員会等における取組(中教審「中間まとめ」で取り組むべきとされた方策)の徹底を呼びかけるものでした。
私立学校及び国立大学附属学校にも別途通知されました。
学校における業務改善について
業務の役割分担・適正化のために教育委員会が取り組むべき方策について
業務改善方針・計画の策定及びフォローアップ
目標設定、PDCAサイクルの構築、業務実施の統一的な方針の策定等
事務職員の校務運営への参画の推進
研修の実施、共同学校事務室の活用、庶務事務システムの導入等
専門スタッフとの役割分担の明確化及び支援
スクールカウンセラー、スクールソ-シャルワーカー、部活動指導員等の専門スタッフの研修、人員確保等
学校が教育活動に専念するための支援体制の構築
法的アドバイス、トラブル時の対応支援等
業務の管理・調整を図る体制の構築
業務量について俯瞰し、業務を付加する際には調整を図る体制の構築
関係機関との連携・協力体制の構築
教委主導による福祉部局・警察等関係機関との連携・協力体制の構築
学校・家庭・地域の連携の促進
コミュニティ・スクールの導入、地域学校協働活動の推進等
統合型校務支援システム等のICT活用推進
校務支援システムの導入、教材の共有化、都道府県単位の取組等
研修の適正化
重複した内容の整理・精選、報告書の簡素化、時期の工夫等
各種研究事業等の適正化
研究テーマの精選、報告書の形式の工夫等
教育委員会事務局の体制整備
教育委員会における業務の適正化、首長部局との連携等
授業時数の設定等における配慮
教育課程の編成・実施の際の働き方改革への配慮
各学校における業務改善の取組の促進
各学校の業務の可視化、経営方針の明確化、管理職の着実なマネジメント等、各学校における業務改善の取組の促進・支援
個別業務の役割分担及び適正化について
- 「中間まとめ」で示された考え方を踏まえ、下記の点に留意しつつ、下記個別業務の役割分担及び適正化を図ること。
- 下記個別業務の他、各学校や地域の状況、教育目標・教育課程に応じて発生する業務については、下記個別業務の整理を踏まえ、服務監督権者である教育委員会において、その受皿の整備・確保を進めつつ、中心となる担い手を学校・教師以外の者に積極的に移行していくという視点に立って検討を行うこと。
基本的には学校以外が担うべき業務
登下校に関する対応
学校・関係機関・地域の連携を一層強化する体制の構築
放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
学校・警察等関係機関・地域の連携を一層強化する体制の構築
学校徴収金の徴収・管理
銀行振込・口座引落、教育委員会事務局や首長部局による徴収・管理の実施等
地域ボランティアとの連絡調整
学校側の窓口としての地域連携担当教職員を校務分掌上位置づけることの促進等
学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
調査・統計等への回答等
調査の対象・頻度・時期・内容・様式等の精査、研究事業の精査・精選、民間団体からの依頼に対する対応の精選等
児童生徒の休み時間における対応
地域人材等の参画・協力、輪番による負担軽減等の取組の実施
校内清掃
回数・範囲の合理的設定、地域人材等の参画・協力、輪番による指導の負担軽減等の取組の実施
部活動
部活動指導員等の積極的参画、部活動数の適正化、地域クラブ等との連携、活動時間や休養日の基準設定、入試における評価の見直し、人事配置等における評価の見直し等
学校が作成する計画及び学校の組織運営に関する見直しについて
- 業務適正化の観点から、計画の統合も含め真に効果的な計画作成の推進
- 個別の指導計画・教育支援計画等について、複数の教師が協力して作成し共有化するなどの取組の推進
- 計画等の整理・合理化、PDCAサイクルで活用されやすい計画等のひな形の提示
- 校内の委員会等について、合同設置や構成員の統一など、業務の適正化に向けた運用の徹底。 等
勤務時間管理の徹底及び適正な勤務時間の設定について
- 厚生労働省のガイドラインを踏まえた教師の勤務時間管理の徹底
- ICTの活用やタイムカードなどにより勤務時間を客観的に把握・集計するシステムの構築
- 登下校、部活動、学校の諸会議等の適切な時間設定、休憩時間の確保
- 通常の勤務時間外に「超勤4項目」以外の業務を命ずる場合の、勤務の割り振り等適正な措置の徹底
- 緊急時の連絡方法を確保した上での、留守番電話の設置やメールによる連絡対応等の体制整備
- 一定期間の学校閉庁日の設定
- 学校運営協議会の場等の活用による、保護者や地域の理解促進と必要な要請の実施 等
教職員全体の働き方に関する意識改革について
- 管理職のマネジメント能力を養成する研修の実施、管理職登用の際のマネジメント能力の適正評価
- 学校の教職員全体に対する、働き方に関する必要な研修の実施
- 学校の重点目標や経営方針への教職員の働き方に関する視点の導入、人事評価の活用
- 学校評価への業務改善や教職員の働き方に関する項目の導入、第三者評価の積極的検討
- 教育委員会の自己点検・評価における学校における業務改善の観点の導入 等
※これらのほか、今後の対応に当たっては、「中間まとめ」及び「緊急対策」を参考とすること。
※文部科学省としても、各教育委員会の取組状況について定期的にフォローアップを実施。
経済・財政一体改革の中間評価のポイント(平成30年3月29日/経済・財政一体改革推進委員会/内閣府)
「経済・財政一体改革の中間評価のポイント」が、平成30年3月29日に、経済・財政一体改革推進委員会から発表されました。
経済・財政一体改革の取組と評価(総括的評価)
デフレ脱却・経済再生
- 5年にわたるアベノミクスにより、GDP※の増加(551兆円と過去最大)、雇用の増加(251万人増)、景気回復の長期化「デフレ※ではない」状況を作り出すなど、大きな成果を生み出した。(※GDPとは…国内総生産のこと。一定期間内に国内で算出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示すもの。(付加価値とは、サービスや商品などを販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いた価値。儲け。)※デフレとは…デフレーション。普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が全体的に下がる現象。モノに対して貨幣の価値が上がっていく状態。)
- しかし、デフレ脱却と実質※2%程度、名目※3%程度を上回る経済成長の実現は、いまだ道半ば。(※実質(GDP)とは…名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたもの。数量ベースによる評価。※名目(GDP)とは…GDPをその時の市場価格で評価したもの。物価変動の影響を受ける。金額ベースでの評価。)
財政健全化
- 歳入面では、2018年度の国・地方の税収は過去最高水準(2012年度より24兆円増加)を更新する見込み。
- 歳出面では、2016~2018年度本予算については、計画で定めた一般歳出等の目安(伸びを1.6兆円程度に抑制)に沿った予算編成が行われた。
- しかし、2018年度のPB※赤字対GDP比は、▲1%の目安に対し、▲2.9%の見込み。(※PBとは…プライマリーバランス。社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標。行政サービスのために借金している状況が、「PB赤字」で、現在の日本がこの状態。)
- また、「人づくり革命」の安定的財源として、2019年10月に予定されている消費税率の引上げ分の使い道を見直すこととした。これに伴い、2020年度の黒字化目標達成は困難となったが、本年の骨太方針において、PB黒字化の目標を堅持しつつ、その達成時期、裏付けとなる具体的かつ実効性のある計画を示すこととした。
これまでの主な成果
経済再生
経済成長
- 実質GDPは28年ぶりの8四半期※連続の前期比プラス(※四半期とは…1年を4つの期間に分ける考え方で、1つの期間は3ヶ月。)
デフレ脱却
- 政権交代後、極めて短い期間で「デフレではない」状況
- 足元では、GDPギャップ※のプラス転換等、デフレ脱却に向けた局面変化(※GDPギャップとは…国の経済全体の総需要と供給力の乖離のこと。「需要ギャップ」。プラスの場合(総供給より総需要が多い)は、インフレギャップ、マイナスの場合(総需要より総供給が多い)は、デフレギャップと呼ぶ。)
潜在成長率
- 潜在成長率※は2012年0.7%から2017年には1.1%へ(※潜在成長率とは…国内にあるモノやサービスを生産するために必要な「資本」、「労働力」、「生産性」という3つの「生産要素」を最大限に活用できた場合の国内総生産(GDP)の伸び率のことで、理論上の数値。)
- 労働、資本の寄与はプラスに転換
雇用環境
- 女性の労働参加率は米国越え
- 2017年度まで4年連続2%程度の着実な賃上げ、2018年度は3%を目指す。最低賃金は5年で約100円増
企業動向
- 企業収益も過去最高(75兆円)へと改善
- 設備投資は2012年72.2兆円から2017年84.6兆円へ
財政健全化
歳入面の動向
- 国・地方の税収は、2018年度見込みで102.5兆円と、2012年度本予算に比べ約24兆円増加し、過去最高の水準を更新する見込み
歳出面の動向
- 国の一般歳出の伸びは3年間で1.6兆程度、社会保障関係費の伸びは同1.5兆円程度に抑制、地方財政の一般財源総額は実質的に2015年度と同水準を確保、との目安を設定して予算編成
PB対GDP比
- 2010年度から2015年度までのPB赤字半減目標は達成(2010年度▲6.3%⇒2015年度▲2.9%)
債務残高対GDP比
PB改善の進捗の遅れの要因分析
- 2018年度のPB赤字対GDP比は、2015年7月試算の▲1.7%程度に対し、2018年度試算では、▲2.9%程度に悪化。
- このPBの変動要因は主に以下の4つ
- 歳出の目安に沿って効率化努力が実施されたこと
- 本予算に追加した補正予算の影響
- 成長低下に伴い税収の伸びが緩やかだったこと
- 消費税率引上げの延期の影響
これまでの評価から得られる課題と今後求められる取組
歳出面
歳出抑制とマクロ経済への影響
課題
- 持続的な経済成長が確実となっていない中で、景気を腰折れさせない取組が不可欠
- 本予算で目安に沿って抑制しても結果的に毎年度補正予算で追加的財政需要に対応
今後求められる取組
- 財政健全化の取組は持続的経済成長の実現に向け、景気を腰折れさせない健全化ベースで着実に実行
- 必要な予算は本予算で手当てするとともに、生産性革命、人づくり革命などに予算を重点化
- デフレ脱却・経済再生の取組を一層進め、補正予算に頼らない経済を構築
歳出改革
課題
- 賃金物価上昇の中で、これまで以上に歳出改革の必要性が拡大
- 高齢化が進展する中で社会保障の負担と給付の制度改革の進捗に遅れ、先進事例の横展開は緒に就いたばかり
- QOL※向上・経済活性化の成果が不十分。効果の低い歳出の削減と高い歳出への重点化をより徹底・強化する必要(※QOLとは…人生の質、生活の質。健康寿命を延ばして生涯にわたって活き活きとした生活が送れるように、QOLを向上させる必要がある、とされる。)
今後求められる取組
- 歳出改革について、これまで以上のペースと範囲で実施するための全体的コンセンサス※作りが必要(全世代型社会保障制度の構築、先進事例の横展開等に向けて)※コンセンサスとは…複数の人の合意や意見の一致
- 行動変容のための見える化※、インセンティブ改革※等の取組の加速・拡大に向け、優先順位をつけて予算を組み、成果を出すことにコミットしていくことが必要(※見える化とは…企業や組織における財務、業務、戦略などの活動実態を具体化し、客観的に捉えられるようにすること。)(※インセンティブ改革とは…公共サービスの質の向上に取り組む必要性に対する気づきを広げ、現状を変えていく動機付けをすることによって、住民や企業等の行動変化につなげ、公共サービスの量的な増大を抑制するとともに、経済・財政の再生向けた前向きな改革を促すこと。)
歳入面
税収の伸び
課題
- デフレ脱却、実質2%程度、名目3%程度を上回る経済成長の実現は、未だ道半ば
- 企業の設備・人材・研究への積極的な投資も課題
今後求められる取組
- 生産性革命を通じた潜在成長率の引上げ
- 働き方改革を通じた労働参加の促進、人づくり革命を通じた人材育成が不可欠
- 企業の設備・研究・人材への継続的な投資拡大、可処分所得※の継続的な拡大などに向けた環境整備が必要(※可処分所得とは…個人の家計収入から、支払いを義務づけられている税金や社会保険料などの非消費支出を差し引いた金額のこと。)
消費税
課題
- 2014年4月の引上げ時には駆け込み需要とその反動減など大きな影響
- アジアの新興国や資源国等の景気下振れによる下押しリスクにより、10%への引上げを2019年10月に再度延期
今後求められる取組
- 予算や税制の活用、価格設定の柔軟化に向けた検討を含め効果的な対策を講じ、消費税率引上げに伴う反動減に対応し、安定的な成長軌道に乗せていくことが必要
2020年代にかけての変化と今後の対応
2020年代にかけての変化
- 団塊世代が75歳に入り始める(2022年から)ことにより、社会保障の増加額が0.9兆円程度に
- 高度成長期以降に整備されたインフラは、何ら対策を講じなければ、更新費が増大する見込み
- イノベーションの加速化、地政学リスクの高まりに伴う新たな財政需要への対応等
今後の対応
- 予防・健康作りを通じた健康寿命の延伸、医療介護分野での技術革新・ビッグデータの活用と生産性向上、医療・介護の提供体制の効率化等の制度改革
- 施設の集約・複合化、長寿命化等により施設の維持管理・更新費の抑制や、PPP/PFI※等により民間活力を活用、投資効果の高い計画的な社会資本整備(※PPP/PFIとは…PPPとは、公共団体と民間が連携して公共サービスを提供する手法を幅広く捉えた概念。PFIとは、PPPの一手法。公共施設等の設計・建設、維持管理、運営等を民間の資金や経営能力、技術的能力などを活用することで、効率化やサービスの向上を図る公共事業の手法。)
- 未利用資源、運営権等の活用による民間資金受入の拡大を通じた公共投資余力の拡大
今後の経済・財政一体改革の推進(新たな計画に向けて)
基本的考え方
- 「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針を堅持。
- 経済再生と財政健全化の両立を目指し、財政健全化は着実、かつ景気を腰折れさせることのないようなペースと機動性を持って行う。
- 2019年度予算に向けては、前回の消費税率引上げが景気面で影響を残した経験を踏まえた予算とすべき。
財政健全化目標
- PB黒字化目標の実現を確実にする仕組みを構築すべき。財政健全化と毎年度の予算編成を結びつける枠組みが必要。また、PB黒字化と財政健全化に向けて、何らかの中間的な取組の進捗を管理する仕組みを構築。
歳出改革に向けた取組の加速・拡大
- 「公的サービス産業化」、「インセンティブ改革」、「見える化」、「技術革新を活用した業務イノベーション」、「先進事例の横展開等」の重要性は、これまで以上に高まっていく。これまでの取組を加速・拡大していくべき。
- 歳出全般にわたり聖域なき徹底した見直し行い、改革工程表に沿って確実に改革を実行することで、これまでの取組を加速していくことも重要。
(参考1)この3年間の本予算における歳出抑制
- 集中改革期間中の社会保障関係費は、3年間合計で自然増約1兆9,400億円に対して約4,400億円の歳出を抑制(診療報酬本体・介護報酬等の引上げ、保育士・介護職員等の処遇改善を行う一方、薬価の見直しなどの価格の引下げや高額療養費の見直し等により歳出を抑制)
- 社会保障関係費以外の一般歳出については、3年間合計で約1,000億円の増加に抑制(防衛関係費が増加する一方、恩給費、食料安定供給関係費等が縮小)
(参考2)公債等残高対GDP比の状況
- 公債等残高対GDP比は、2012年度末から2018年度末までの6年間の上昇率は8.6%pt程度であり、それまでの10年間(2002年度末~2012年度末)の上昇率62.3%ptと比べ緩やかな伸び。
- しかし、計画時の2015年7月試算では公債等残高対GDP比は6.0%pt低下と見込んでいた一方で、2018年1月試算では2.6%pt上昇の見込み。
学校の組織運営体制のあり方に関する参考資料~事務職員関係~(平成30年4月25日/学校における働き方改革特別部会)
次に、平成30年4月25日の「学校における働き方改革特別部会」に示された「学校の組織運営体制のあり方に関する参考資料」の中から、事務職員関係の資料を提示します。
事務職員について
- 事務職員は、学校における基幹的職員であり、小中学校等で原則必置(学校教育法第37条第1項)。
- 【参考】公立小中学校における事務職員の数(負担法による配置分)※平成29年学校基本調査より:小学校20,884人(1校あたり1.06人)、中学校10,829人(1校あたり1.14人)
- 事務職員は、事務をつかさどり(学校教育法第37条14号)、学校組織における唯一の総務・財務等に通じる専門職。
- 平成29年3月に学校教育法の一部改正により事務職員の職務規程を見直し(「事務に従事する」→「事務をつかさどる」)。
- 学校組織マネジメントの中核となる校長・教頭等の業務負担が増加するなどの状況にあって、学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため、事務職員がその専門性を生かして、学校の事務を一定の責任をもって自己の担任事項として処理し、より主体的・積極的に校務運営に参画することが求められている。
学校事務の共同実施について
- 学校事務の共同実施は、日常は学校で勤務している学校事務職員が、週1回程度一つの学校に集まるなどして、複数の学校の事務業務を共同で行うもの。
- 平成29年3月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正により「共同学校事務室」を制度化(併せて「公立義務諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」の一部改正により「共同学校事務室」を置いている場合に事務職員定数を加配措置できるよう整備)し、事務の効率化などを推進。
【参考】学校事務の共同実施を推進している自治体の数(平成29年度)※教育委員会による学校の業務改善のための取組状況調査結果より
都道府県
34(72.3%) 前年度比+6.3%
政令市
12(60.0%) 前年度比+5.0%
市区町村
1,137(66.2%) 前年度比+9.1%
期待される効果
事務を共同処理することにより、学校間の事務の標準化、教材などの共同購入による調達コストの削減、OJT※の実施による事務職員の育成及び資質の向上など、事務処理の更なる効率化及び質の向上が実現。※OJTとは…職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法のこと。
「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」(平成29年12月22日 中央教育審議会)【概要】から主な事務職員関係
学校・教師が担う業務の明確化・適正化
「これまで学校・教師が担ってきた代表的な業務の在り方に関する考え方」から、事務職員の業務に関わるもの
- ③学校徴収金の徴収・管理
- ④地域ボランティアとの連絡調整
- ⑤調査・統計等への回答等
- ⑫学校行事の準備・運営
- ⑬進路指導
「業務の役割分担・適正化を着実に実行するための方策」から、事務職員の業務に関わるもの
- 国…学校や教師の担うべき業務範囲の明確化、学校管理規則モデル等の提示
- 教育委員会等…事務職員の資質・能力・意欲向上、学校事務の共同実施の促進
【参考】事務職員に関するこれまでの主な提言・制度改正
平成10年
「今後の地方教育行政の在り方について」(中央教育審議会答申)
学校の裁量拡大の中で、学校事務を効率的に執行する観点から、事務の共同実施を推進
平成16年
「学校の組織運営の在り方について(作業部会の審議のまとめ)」(中央教育審議会>初等中等教育分科会>教育財政部会>学校の組織運営に関する作業部会)
より効果的、効率的な事務処理を図り、学校経営の専門スタッフとして中心的な役割を担うことが期待/事務処理の効率化・標準化や職員の資質の向上のため、事務の共同実施を推進
平成19年
「今後の教員給与の在り方について」(中央教育審議会答申)
教員が抱える事務負担を軽減するため、学校運営に一層積極的に関わる/事務の共同実施を促進、質の向上のための研修を充実/大規模校や事務の共同実施組織に事務長を置けるよう制度を整備
平成27年
「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(中央教育審議会答申)
学校の事務が複雑化・多様化していることに伴い、より権限と責任を持って学校の事務を処理することが期待/事務機能の強化を推進するため、事務の共同実施組織の制度を整備
平成29年
学校教育法等の一部改正
職務規程を見直し(事務に「従事する」→事務を「つかさどる」)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正
共同学校事務室を制度化/共同学校事務室を置いている場合に事務職員定数を加配できるよう整備
「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・組織運営の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」(中央教育審議会)
学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため、より主体的・積極的に校務運営に参画/事務処理を効率化/採用から研修等を通じて、資質・能力、意欲の向上のための取組を進める
第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)
教育振興基本計画とは
教育振興基本計画は、教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。
教育行政の4つの基本的方向性
改正教育基本法の理念を踏まえ、教育再生を実現するため、生涯の各段階を貫く方向性を設定し、成果目標・指標、具体的方策を体系的に整理
1 社会を生き抜く力の養成~多様で変化の激しい社会の中で個人の自立と協働を図るための主体的・能動的な力~
2 未来への飛躍を実現する人材の養成~変化や新たな価値を主導・創造し、社会の各分野を牽引していく人材~
- 創造性やチャレンジ精神、リーダーシップ、日本人としてのアイデンティティ、語学力・コミュニケーション能力などの育成に向けた多様な体験・切磋琢磨の機会の増大
- 優れた能力と多様な個性を伸ばす環境の醸成
3 学びのセーフティ・ネットの構築~誰もがアクセスできる多様な学習機会を~
- 教育費負担軽減など学習機会の確保や安全安心な教育研究環境の確保
4 絆づくりと活力あるコミュニティの形成~社会が人を育み、人が社会をつくる好循環~
- 学習を通じて多様な人が集い協働するための体制・ネットワークの形成など社会全体の教育力の強化
- 人々が主体的に社会参画し相互に支え合うための環境整備
(共通理念)
- 教育における多様性の尊重
- ライフステージに応じた「縦」の接続
- 社会全体の「横」の連携・協働
- 現場の活性化に向けた国・地方の連携・協働
(教育投資の在り方)
今後の教育投資の方向性
- 協働型・双方向型学習など質の高い教育を可能とする環境の構築
- 家計における教育費負担の軽減
- 安全・安心な教育研究環境の整備(学校施設の耐震化など)
教育投資の確保の必要性
- 教育の再生は最優先の政策課題の一つ
- 欧米諸国を上回る質の高い教育の実現が求められている
- OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とする
- 第2部において掲げる成果目標の達成や基本施策の実施に必要な予算について財源を措置する
- 真に必要な教育投資を確保していくことが必要
(危機回避シナリオ)
- 個々人の自己実現、社会の「担い手」の増加、格差の改善(若者・女性・高齢者・障害者などを含め、生涯現役、全員参加に向けて個人の能力を最大限伸長)
- 社会全体の生産性向上(グローバル化に対応したイノベーションなど)
- 一人一人の絆の確保(社会関係資本の形成)
- ⇒一人一人が誇りと自信を取り戻し、社会の幅広い人々が実感できる成長を実現
我が国を取り巻く危機的状況
少子化・高齢化の進展
- 生産年齢人口の減少(2060年には、我が国の人口は2010年比約3割減の約9千万人まで減少。そのうち4割が65歳以上の高齢者。)
- 経済規模縮小、税収減、社会保障費の拡大
- ⇒社会全体の活力低下
グローバル化の進展
- 人・モノ・金・情報等の流動化
- 「知識基盤社会」の本格的到来
- 新興国の台頭等による国際競争の激化
- 生産拠点の海外移転による産業空洞化
- ⇒我が国の国際的な存在感の低下
雇用環境の変容
- 終身雇用・年功序列等の変容
- 企業内教育による人材育成能力の低下
- ⇒失業率、非正規雇用の増加
地域社会、家族の変容
- 地域社会等のつながりや支え合いによるセーフティネット機能の低下
- 価値観・ライフスタイルの多様化
- 個々人の孤立化、規範意識の低下
格差の再生産・固定化
- 経済格差の進行→教育格差の再生産・固定化(同一世代内・世代間)
- ⇒一人一人の意欲減退、社会の不安定化
地球規模の課題への対応
- 環境問題、食料・エネルギー問題、民族・宗教紛争など様々な地球規模の課題に直面しており、かつてのような物質的豊かさのみの追求という視点から脱却し、持続可能な社会の構築に向けて取り組んでいくことが必要。
【我が国の様々な強み】
- 多様な文化・芸術や優れた感性
- 勤勉性・強調性、思いやりの心
- 人の絆
- 科学技術、「ものづくり」の基盤技術
- 基礎的な知識技能の平均レベルの高さ
【震災の教訓】危機打開に向けた手がかり
- 諦めず、状況を的確に捉え自ら考え行動する力
- イノベーションなど未来志向の復興、社会づくり
- 安心して必要な力を身に付けられる環境
- 人々や地域間、各国間に存在するつながり、人と自然との共生の重要性
第1期計画の評価
第1期計画で掲げた「10年を通じて目指すべき教育の姿」の達成はいまだ途上
- 様々な取組を行ったが、学習意欲・学習時間、低学力層の存在、グローバル化等への対応、若者の内向き志向、規範意識・社会性等の育成など依然として課題が存在。
- 一方、コミュニティの協働による課題解決や教育格差の問題など新たな視点も浮上。
背景
- 「個々人の多様な強みを引き出すという視点」
- 「学校段階間や学校・社会生活間の接続」
- 「十分なPDCAサイクル」 の不足など
今後の社会の方向性
「自立」「協働」「創造」の3つの理念の実現に向けた生涯学習社会を構築
自立
一人一人が多様な個性・能力を伸ばし、充実した人生を主体的に切り開いていくことのできる生涯学習社会
創造
自立・協働を通じて更なる新たな価値を創造していくことのできる生涯学習社会
協働
個人や社会の多様性を尊重し、それぞれの強みを生かして、ともに支え合い、高め合い、社会に参画することのできる生涯学習社会
基本的方向性1 社会を生き抜く力の養成~多様で変化の激しい社会の中で個人の自立と協働を図るための主体的・能動的な力~
成果目標1 生きる力の確実な育成(幼稚園~高校)
生涯にわたる学習の基礎となる「自ら学び、考え、行動する力」を確実に育てる。
成果指標例
- 国際的な学力調査で世界トップレベルに
- いじめ、不登校、高校中退者の状況改善
- 今後10年間で子供の体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す など
取組の例
- 新学習指導要領を踏まえた言語活動等の充実
- ICTの活用などによる協働型・双方向型学習の推進
- 各地域の実情を踏まえた土曜日の活用促進
- 高校生の到達度テスト導入など高校教育の改善・充実
- 道徳教育の推進(「心のノート」の充実・配布、道徳の教科化の検討)
- いじめ、暴力行為等の問題への取組の徹底
- 教員の資質能力向上(養成・採用・研修の一体的な改革)
- 全国学力・学習状況調査(全数調査の継続実施)
- 子どもの成長に応じた柔軟な教育システム等の構築に向けた、学制の在り方を含めた検討 など
成果目標2 課題探求能力の習得(大学~)
どんな環境でも「答えのない問題」に最善解を導くことができる力を養う。
成果指標例
- 学生の学修時間の増加(欧米並みの水準)
- 全学的な教学システム(教育課程の体系化、授業計画の充実等)の整備状況の向上など
取組の例
- 教育サポートスタッフ充実や図書館の機能強化
- アクティブ・ラーニングの充実など大学の学修環境整備
- 学生の学修時間や留学等の多様な経験を行う機会を確保するための就職・採用活動開始時期の変更
- 大学教育の質の保証のためのトータルシステム(設置基準、設置認可、認証評価等)の確立
- 高校生の到達度テストの結果活用などを含めた入試の抜本的改革 など
成果目標3 自立・協働・創造に向けた力の修得(生涯全体)
社会を生き抜く力を生涯を通じて身に付けられるようにする。
取組の例
- 現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進
- 様々な体験活動・読書活動の推進
- 学習の質の保証と学習成果の評価活用を推進 など
成果目標4 社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成
成果指標例
- 就職率や早期離職率等の改善に向けたインターンシップ等の実施状況の改善、大学等への社会人の受入状況の改善 など
取組の例
- 社会的・職業的自立に向け必要な能力を育成するキャリア教育の充実
- 各学校段階における職業教育の推進
- 学び直しの機会の充実(教育機関と産業等との協働による実践的なプログラムの開発、奨学金制度の弾力的運用)など
基本的方向性2 未来への飛躍を実現する人材の養成~変化や新たな価値を主導・創造し、社会の各分野を牽引していく人材~
成果目標5 新たな価値を創造する人材、グローバル人材等の養成
成果指標例
- 英語力の目標※を達成した中高生の割合50%
- 世界で戦えるリサーチ・ユニバーシティ※を10年後に倍増(※リサーチ・ユニバーシティとは…研究開発活動に重点を置く大学。研究大学。
- 大学の国際的な評価の向上
- 卒業時の英語力の到達目標※を設定する大学の数及びそれを満たす学生の増加
- 英語教員に求められる英語力※を達成した英語教員の割合増加(中学校50%、高校75%)
- 日本人の海外留学者数、外国人留学生の増加…2020年を目標に日本人の海外留学者数の倍増(大学等:6万人→12万人、高校:3万人→6万人)、「留学生30万人計画」の実現 など
取組の例
- 高等学校段階における早期卒業制度の検討
- 小学校における英語教育の教科化等の検討
- 日本人留学生の経済的負担を軽減するための官民が協力した新たな仕組みの創設や、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れの促進
- 徹底した国際化に取り組む大学への重点支援 など
※英語力の目標
- 中学校卒業段階:英検3級程度以上
- 高等学校卒業段階:英検準2級程度から2級程度以上
- 大学:(例)TOEFL iBT80点
- 英語教員:英検準1級、TOEFL iBT80点、TOEIC730点程度以上
基本的方向性3 学びのセーフティネットの構築~誰もがアクセスできる多様な学習機会を~
成果目標6 意欲ある全ての者への学習機会の確保
成果指標例
- 家庭の経済状況等が学力に与える影響の改善
- 奨学金の貸与基準を満たす希望者のうち、貸与を受けることができた者の割合の増加
- 低所得世帯の学生のうち授業料減免を受けている者の割合の改善 など
取組の例
- 幼児教育無償化への取組の推進
- 低所得世帯等の高校生への修学支援
- 無利子奨学金について、学生等の卒業後の所得水準に応じて毎年の返還額を決める制度への移行や延滞金の賦課率の見直しの検討
- 挫折や困難を抱えた子ども・若者の学び直しの機会を充実
成果目標7 安全・安心な教育研究環境の確保
成果指標例
- 平成27年度までの公立学校施設の耐震化の完了
- 学校管理下における事件・事故災害で負傷する児童生徒等の減少、死亡する児童生徒等のゼロ化 など
取組の例
- 学校の耐震化、非構造部材の耐震対策を含む防災機能強化、老朽化対策の推進
- 防災教育等の学校安全に関する取組の推進 など
基本的方向性4 絆づくりと活力あるコミュニティの形成~社会が人を育み、人が社会をつくる好循環~
成果目標8 互助・共助による活力あるコミュニティの形成
成果指標例
- 全学校区に学校と地域の連携・協働体制を構築
- コミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割(約3,000校)に拡大
- 家庭教育支援チームの増加等による家庭教育支援の充実 など
取組の例
- コミュニティ・スクール、学校支援地域本部の普及
- 大学等のセンターオブコミュニティ構想(COC構想)の推進
- 子の教育に第一義的責任を有している保護者の学びの充実に向けた取組や家庭教育支援体制の強化など
4つの方向性を支える環境整備
教育委員会の抜本的改革
教育委員会の責任体制の確立などに向けた抜本的な改革のための検討 など
きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備
少人数学級の推進、習熟度別指導、小学校における専科指導の充実 など
大学におけるガバナンスの機能強化
学長のリーダーシップによる適切な意思決定を可能とする組織運営の確立 など
大学の財政基盤の確立と施設整備
国立大学運営交付金や私学助成金など財政基盤の確立と基盤的経費のメリハリある配分 など
私立学校の振興
基盤的経費等の公財政支援その他の施策の充実・推進、学生等の経済的負担の軽減など
社会教育推進体制の強化
社会教育行政が様々な主体と連携・協働し、地域課題の解決に取り組んでいる先進的な地方公共団体の支援 など
※この他、東日本大震災からの復旧・復興支援策についても4つのビジョンごとに整理。
第3期教育振興基本計画(平成30年6月15日閣議決定)
第3期教育振興基本計画(平成30年6月15日閣議決定)の計画期間
平成30年6月15日付けで、第3期教育振興基本計画が閣議決定されました。
対象期間は、平成30(2018)年度から平成34(2022)年度です。
第3期教育振興基本計画の概要 第1部 我が国における今後の教育政策の方向性
教育の普遍的な使命
改正教育基本法を規定する教育の目的である「人格の完成」、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と、教育の目標を達成すべく、「教育立国」の実現に向けさらなる取組が必要
教育をめぐる現状と課題
これまでの取組の成果
- 初等中等教育段階における世界トップレベルの学力の維持
- 給付型奨学金制度、所得連動返還型奨学金制度の創設
- 学校施設の耐震化の進展 等
社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえ、取り組むべき課題
社会状況の変化
- 人口減少・高齢化、技術革新、グローバル化、子供の貧困、地域間格差 等
教育をめぐる状況変化
- 子供や若者の学習・生活面の課題
- 地域や家庭の状況変化
- 教師の負担
- 高等教育の質保証等の課題
教育をめぐる国際的な政策の動向
2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項
第2期計画の「自立」「協働」「創造」の方向性を継承し、以下の姿を目指す。
個人と社会の目指すべき姿
個人
自立した人間として、主体的に判断し、多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する人材の育成
社会
一人一人が活躍し、豊かで安心して暮らせる社会の実現、社会(地域・国・世界)の持続的な成長・発展
教育政策の重点事項
- 「超スマート社会(Society5.0)※」の実現に向けた技術革新が進展するなか「人生100年時代」を豊かに生きていくためには、「人づくり革命」、「生産性革命」の一環として、若年期の教育、生涯にわたる学習や能力向上が必要。※Society5.0とは…サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指すもの。
- 教育を通じて生涯にわたる一人一人の「可能性」と「チャンス」を最大化することを今後の教育政策の中心に据えて取り組む。
今後の教育政策に関する基本的な方針
- 夢と志を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力を育てる
- 社会の持続的な発展を牽引するための多様な力を育てる
- 生涯学び、活躍できる環境を整える
- 誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する
- 教育政策推進のための基盤を整備する
今後の教育政策の遂行に当たって特に留意すべき視点
客観的な根拠を重視した教育政策の推進
教育政策においてPDCAサイクルを確立し、十分に機能させることが必要
- 企画・立案段階:政策目標、施策を総合的・体系的に示す。【ロジックモデルの活用、指標設定】
- 実施段階:毎年、各施策のフォローアップ等を踏まえ着実に実施。【職員の育成、先進事例の共有】
- 評価・改善段階:政策評価との連携、評価結果を踏まえた施策・次期計画の改善
客観的な根拠に基づく政策立案(EBPM(Evidence-Based Policy Making))
客観的な根拠に基づく政策立案(EBPM(Evidence-Based Policy Making))を推進する体制を文部科学省に構築、多様な分野の研究者との連携強化、データの一元化、提供体制等の改革を推進
教育投資の在り方(第3期計画期間における教育投資の方向)
- 人材への投資の抜本的な拡充を行うため、「新しい経済政策パッケージ」等を着実に実施し、教育費負担を軽減
- 各教育段階における教育の質の向上のための教育投資の確保
- OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし、必要な予算を財源措置し、真に必要な教育投資を確保
- その際、客観的な根拠に基づくPDCAサイクルを徹底し、国民の理解を醸成
新時代の到来を見据えた次世代の教育の創造
- 超スマート社会(Society5.0)の実現など、社会構造の急速な変革が見込まれる中、次世代の学校の在り方など、未来志向の研究開発を不断に推進
- 人工減少・高齢化などの、地域課題の解決に向け、「持続可能な社会教育システム」の構築に向けた新たな政策を展開
- 次世代の教育の創造に向けた研究開発と先導的な取組を推進
第3期教育振興基本計画の概要 第2部 今後5年間の教育政策の目標と施策群
第1部で示した5つの基本的な方針ごとに、
- 教育政策の目標
- 目標の進捗状況を把握するための測定指標及び参考指標
- 目標を実現するための必要となる施策群 を整理
基本的な方針1 夢と希望を持ち、可能性に挑戦するために必要となる力を育成する
教育政策の目標
- 確かな学力の育成<主として初等中等教育>
- 豊かな心の育成<〃>
- 健やかな体の育成<〃>
- 問題発見・解決能力の獲得<主として高等教育段階>
- 社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成<生涯の各段階>
- 家庭・地域の教育力の向上、学校との連携・協働の推進<〃>
測定指標・参考指標(例)
- 知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力、人間性等の資質・能力の調和がとれた個人を育成し、OECDのPISA調査等の各種国際調査を通じて世界トップレベルを維持
- 自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合の改善
- いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合の改善 など
施策群(例)
- 新学習指導要領の着実な実施等
- 子供たちの自己肯定感・自己有用感の育成
- いじめ等への対応の徹底、人権教育 など
基本的な方針2 社会の持続的な発展を牽引するための多様な力を育成する
教育政策の目標
- グローバルに活躍する人材の育成
- 大学院教育の改革等を通じたイノベーションを牽引する人材の育成
- スポーツ・文化等多様な分野の人材の育成
測定指標・参考指標(例)
- 外国人留学生数30万人を引き続き目指していくとともに、外国人留学生の日本国内での就職率を5割とする
- 修士課程修了後の博士課程への進学率の増加 など
施策群(例)
- 日本人生徒・学生の海外留学支援
- 大学院教育改革の推進 など
基本的な方針3 生涯学び、活躍できる環境を整える
教育政策の目標
- 人生100年時代を見据えた生涯学習の推進
- 人々の暮らしの向上と社会の持続的発展のための学びの推進
- 職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進
- 障害者の生涯学習の推進
測定指標・参考指標(例)
- これまでの学習を通じて身に付けた知識・技能や経験を地域や社会での活動に生かしている者の割合の向上
- 大学・専門学校等での社会人受講者数を100万人にする など
施策群(例)
- 新しい地域作りに向けた社会教育の振興方策の検討
- 社会人が働きながら学べる環境の整備 など
基本的な方針4 誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する
教育政策の目標
- 家庭の経済状況や地理的条件への対応
- 多様なニーズに対応した教育機会の提供
測定指標・参考指標(例)
- 生活保護世帯に属する子供、ひとり親家庭の子供、児童養護施設の子供の高等学校進学率、大学等進学率の改善 など
施策郡(例)
- 教育へのアクセスの向上、教育費負担の軽減に向けた経済的支援 など
基本的な方針5 教育施策推進のための基盤を整備する
教育施策の目標
- 新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備等
- ICT利活用のための基盤の整備
- 安全・安心で質の高い教育研究環境の整備
- 児童生徒等の安全の確保
- 教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革
- 日本型教育の海外展開と我が国の教育の国際化
測定指標・参考指標(例)
- 小中学校の教諭の1週間あたりの学内総勤務時間の短縮
- 学習者用コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備
- 緊急的に老朽化対策が必要な公立小中学校施設の未改修面積の計画的な縮減
- 私立学校の耐震化等の推進(早期の耐震化、天井等落下防止対策の完了)
- 学校管理下における障害や重度の負傷を伴う事故等の発生件数の改善 など
施策群(例)
- 教職員指導体制・指導環境の整備
- 学校のICT環境整備の促進
- 安全・安心で質の高い学校施設等の整備の推進
- 学校安全の推進 など
経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)(平成30年6月15日/閣議決定)より抜粋
「第3期教育振興基本計画」と同時に「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)」が平成30年6月15日に閣議決定されました。
「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太2018)」のうち、教育政策に関係のあるものを中心に、抜粋してお伝えします。
第2章 力強い経済成長の実現に向けた重点的な取組
1.人づくり革命の実現と拡大
- 我が国は、健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、今後の更なる健康寿命の延伸も期待される。
- こうした人生100年時代には、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことがせきる社会をつくる必要があり、その重要な鍵を握るのが「人づくり革命」、人材への投資である。
- 「人づくり革命」では、第一に、幼児教育無償化を一気に加速する。
- 3歳から5歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化する。
- 幼稚園、保育所、認定こども園以外についても、保育の必要性があると認定された子供を対象にして無償化する。
- 0歳から2歳児については、待機児童解消の取組と併せて、住民税非課税世帯を対象として無償化を進める。
- 「人づくり革命」では、第二に、最優先の課題である待機児童問題を解消し、女性就業率80%に対応できる「子育て支援プラン」を前倒しし、2020年度末までに32万人分の受け皿整備を進めるとともに、保育士の更なる処遇改善に取り組む。
5.重要課題への取組
投資とイノベーションの促進
教育の質の向上等
- 「第3期教育振興基本計画」や教育再生実行会議の提言に基づき、「Society5.0」に向けた総合的な人材育成をはじめとした教育の質の向上に総合的に取り組む。
- 新学習指導要領を円滑に実施するとともに、地域振興の核としての高等学校の機能強化、1人1社制の在り方の検討、子供の体験活動の充実、安全・安心な学校施設の効率的な整備、セーフティプロモーションの考え方も参考にした学校安全の推進などを進める。
- 在外教育施設における教育機能の強化を図る。
- 障害、いじめ・不登校、日本語能力の不足など様々な制約を克服し、チーム学校の実現、障害者の生涯を通じた学習活動の充実を図る。
- 学校現場での教員の勤務実態を改善するため、適正な勤務時間管理の徹底や業務の効率化・精選などの緊急対策を具体的に推進するとともに、学校の指導・事務体制の効率的な強化・充実や学校の実態に応じた教員の勤務時間制度の在り方などの勤務状況を踏まえた勤務環境の見直し、小学校における教育課程の弾力的運用についての検討を進める。
第3章「経済・財政一体改革」の推進
2.2019年10月1日の消費税率引上げと需要変動の平準化
消費税率引上げ分の使い道の見直し
- 社会保障の充実と財政健全化のバランスを取りつつ、人づくり革命の安定財源を確保するために、2019年10月1日に予定している消費税率引上げ分の使い道の見直しを行った。
- 具体的には、消費税率の2%の引上げによる5兆円強の税収のうち、従来は5分の1を社会保障の充実に使い、残り5分の4を財政再建に使うこととしていたが、これを変更し、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と、財政再建とに、それぞれ概ね半分ずつ充当する。
- このうち、介護人材の処遇改善について消費税率引上げ日の2019年10月1日に合わせて実施するとともに、幼児教育の無償化についてもこれを目指し、消費税率引上げによる経済的な悪影響を緩和することとする。
3.新経済財政・再生計画の策定
財政健全化目標と実現に向けた取組
財政健全化目標と毎年度の予算編成を結びつけるための仕組み
- 社会保障関係費については、再生計画において、2020年度に向けてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、2019年度以降、その方針を2021年度まで継続する。
- 消費税率引上げとあわせて行う増(これまで定められていた社会保障4経費に係る公経済負担)については、別途考慮する。
- なお、2022年度以降については、団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費が急増することを踏まえ、こうした高齢化要因を反映するとともに、人口減少要因、経済・物価動向、社会保障を取り巻く状況等を総合的に勘案して検討する。
4.主要分野ごとの計画の基本方針と重要課題
文教・科学技術等
基本的考え方
- 全ての子供たちが必要な力を身に付け、その質を持続発展させていくとともに、少子化や施設老朽化等の中長期的展望の下、学部人材等の多様なリソースを活用しながら、頑張る教育機関が報われる仕組みの拡充などメリハリをつけた予算配分を行う。
- 世界最高水準の「イノベーション国家創造」に向けて、官民研究開発投資の拡大を目指す。
- 政府研究開発投資について、新計画との整合性を確保しつつ、対GDP比1%にすることを目指し所要の規模の予算が確保されるよう努めるとともに、官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とすることを目標とする。
- 少子化の進展を踏まえた予算の効率化、イノベーション創出による歳出効率化等、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本として、以下の改革を進める。
少子化の進展を踏まえた予算の効率化、教育の質の向上等
- 少子化の進展や厳しい財政状況等の中での教育の質の向上を図るため、教育政策の実証研究を踏まえた予算の裏付けのある公立小中学校の教職員定数の中期見通しを策定するとともに、学校における働き方改革に向け、英語・プログラミング等の分野での特別免許状教員等の外部人材の拡充、部活動における外部人材や民間機関の活用など学校と地域の連携・協働を進める。
- また、学校施設について先進・優良事例の横展開を含め長寿命化に向けた施設計画策定や学校統合、廃校施設の活用促進に一体的に取り組むとともに、学校事務の共同実施、教育の情報化等について、KPI※を掲げ工程化して推進する。※KPIとは…重要業績評価指数
エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底
- 「第3期教育振興基本計画」に基づき、幼児教育から高等教育、社会人教育までライフステージを通じた教育政策全体について、国・都道府県・市町村それぞれの権限を踏まえつつエビデンスに基づく実効性のあるPDCAサイクルを確立する。
- 文部科学省及び地方自治体においては、コストや成果を含む関連データの徹底的な見える化、全国学力・学習状況調査など自治体所有データの幅広い研究者による利用の円滑化を進める。
- 文部科学省においては、関係府省と連携しつつ、教育政策全般にわたる実証研究の設計や分析結果の検証を行う体制の構築、ロジックモデルの構築による政策目標と政策との関係の合理的設計等を進める。
- 科学技術分野においても、予算のエビデンス構築、コスト・効果を含めた見える化、EBPM化を含め、予算の質の向上を図る。
- 以上の主要歳出分野のほか、すべての歳出分野において、類似事業の整理・統合や重複排除の徹底、事業の効率化など、聖域なく改革を進める。
第4章 当面の経済財政運営と2019年度予算編成に向けた考え方
我が国経済は、企業部門の改善が家計部門に広がり、好循環が進展する中で緩やかに回復しており、今後も、海外経済の回復が続く下で、各種政策の効果もあいまって、雇用・所得環境がさらに改善し、民需を中心とした景気回復が期待される。
ただ、先行きのリスクとして、通商問題の動向を含む海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響等には留意する必要がある。
政府は、少子高齢化という最大の壁に立ち向かい、持続的な経済成長を実現していくため、人づくり革命及び生産性革命を実現・拡大し、潜在成長率の引上げを進めるとともに、成長と分配の経済の好循環の拡大を目指す。
2019年10月1日における消費税率の10%への引上げを確実に実現できる経済環境を整備するとともに、消費税率引上げによる需要変動の平準化に万全を期す。
日本銀行には、2%の物価安定の下、金融緩和を推進し、目標をできるだけ早期に実現することを期待する。
当面の予算編成の基本的考え方
- 前回2014年4月の消費税の引き上げの経験も踏まえ、2019年10月1日における消費税率引上げに伴う需要変動に対して機動的な対応を図る観点から、歳出改革の取組を継続することの方針とは別途、臨時・特別の措置を2019・2020年度当初予算において講ずることとする。
- その具体的な内容については、2019年10月1日に予定されている消費税率引上げの需要変動に対する影響の程度や経済状況等を踏まえ、各年度の予算編成過程において検討する。
- 2019年度予算は、新計画における社会保障改革を軸とする基盤強化期間の初年度として、社会保障関係費や非社会保障関係費等について歳出改革の取組を継続するとの方針に沿った予算編成を行う。
- 無駄な予算を排除するとともに、真に必要な施策に予算が重点配分されるよう、厳格な優先順位付けを行い、メリハリのついた予算とする。
平成30年度教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査の結果【概要】(平成30年8月22日)
「平成30年度教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査の結果【概要】」が、8月22日に公表されました。
調査概要
調査日
平成30年4月1日現在
調査対象
- 都道府県 47
- 政令指定都市教育委員会(以下「政令市」という。) 20
- 市区町村教育委員会(政令市を除く。) 1,719
回答数
すべての教育委員会 1,786
所管の学校に対して業務改善方針や計画を策定している教育委員会数
所管の学校に対して業務改善方針や計画を策定している教育委員会は、それぞれ昨年度と比べて増加しているが、市区町村での取組を一層推進する必要がある。
- 都道府県 43(91.5%)
- 政令市 17(85.0%)
- 市区町村 358(20.8%)
部活動に係る負担軽減の取組について(複数回答可)
部活動指導員をはじめとした外部人材の参画
多くの学校が、部活動指導員をはじめとした外部人材の参画の取組を行っている。
- 都道府県 45(96.7%)
- 政令市 18(90.0%)
- 市区町村 1,026(59.7%)
部活動の適切な活動時間や休養日について、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(平成30年3月・スポーツ庁)」に則った基準を設定
部活動の適切な活動時間や休養日について、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(平成30年3月・スポーツ庁)」に則った基準を設定している教育委員会の割合は、まだ十分多いとはいえない。
- 都道府県 27(57.4%)
- 政令市 14(70.0%)
- 市区町村 865(50.3%)
所管の高等学校の入試における部活動に対する評価の在り方の見直しや加点基準の明確化等
所管の高等学校において、保護者による部活動への過度な期待等の認識を変えるため、入試における部活動に対する評価の在り方の見直しや加点基準の明確化等を行った教育委員会は、ほとんどない。
採用や人事配置の段階において教師における部活動の指導力を過度に評価しないよう見直し
教師の意識改革のため、採用や人事配置の段階において、教師における部活動の指導力を過度に評価しないように見直しを行った教育委員会はほとんどない。
授業準備に係る負担軽減の取組について(複数回答可)
サポートスタッフの参画
サポートスタッフの参画については、政令市の取組が特に多い状況となっている。
- 都道府県 18(38.3%)
- 政令市 18(90.0%)
- 市区町村 564(32.8%)
勤務時間管理や適正な勤務時間の設定に向けて、所管する学校に対して取り組んでいる内容について(複数回答可)
通常の勤務時間以外の時間帯に「超勤4項目」以外の業務を命ずる場合、正規の勤務時間の割り振りを適正に行うなどの措置を講じている
- 都道府県 35(74.5%)
- 政令市 14(70.0%)
- 市区町村 776(45.1%)
学校閉庁日を設定している
- 都道府県 19(40.4%)
- 政令市 19(95.0%)
- 市区町村 1.039(60.4%)
勤務時間外における保護者や外部からの問合せ等に備えた留守番電話の設置や、メールによる連絡対応の体制の整備
勤務時間外における保護者や外部からの問合せ等に備えた留守番電話の設置や、メールによる連絡対応の体制の整備をしている教育委員会は少ない。
- 都道府県 9(19.1%)
- 政令市 7(35.0%)
- 市区町村 201(11.7%)
適正な勤務時間の設定に係る取組について、PTA等の協力も得るために必要な要請をしている
- 都道府県 16(34.0%)
- 政令市 118(55.0%)
- 市区町村 271(15.8%)
教師の勤務時間管理の方法について(複数回答可)
ICTの活用やタイムカードによる勤務時間の客観的な把握
ICTの活用やタイムカードなどにより、勤務時間を客観的に把握している教育委員会の割合は、それぞれ昨年度と比べ増加している。
- 都道府県 18(38.3%)
- 政令市 9(45.0%)
- 市区町村 696(40.5%)
まとめ
教育振興基本計画に記載されているから数多くの施策が実行される
今回の記事で、平成25年度に閣議決定され、その内容に沿って、29年度まで教育施策が実行された「第2期教育振興基本計画」の内容の概要を掲載しました。
前述したように、この「第2期教育振興基本計画」には、教育行政の4つの基本的方向性が示されていました。
「基本的方向性1」のうち、「成果目標1 生きる力の確実な育成」では、「国際的な学力調査で世界トップレベルに」、「いじめ、不登校、高校中退者の状況改善」、「今後10年間で子供の体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す」と、「3つの成果指標例」が掲げられていました。
これらを目指して平成25年度から29年度の幼稚園から高校での教育が行われてきたのです。
この「成果目標1」の「取組の例」には、「道徳教育の推進」や「ICTの活用などによる協働型・双方向型学習」なども含まれていました。
その他、教育行政の4つの「基本的方向性」の中には、「キャリア教育の充実」、「様々な体験活動・読書活動の推進」、「英語教育の教科化」、「防災教育の推進」、「コミュニティ・スクール、学校支援地域本部の普及」なども含まれていました。
つまり、文部科学省が、毎年多くの施策を提案し、実行している理由の一つには、「教育振興基本計画にあらかじめ記載されているから。」ということがあるのです。
教育振興基本計画により、施策はどんどん増える
そして、続く「第3期教育振興基本計画」では、「これまでの成果」として、第2期教育振興基本計画の「3つの成果指標例」にあった、「初等中等教育段階における世界トップレベルの学力の維持」が記載されています。
しかし、第2期教育振興基本計画で掲げた「3つの成果指標例」のうち、「いじめ・不登校・高校中退者の状況改善」と「今後10年間で子供の体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す」という成果指標には到達できませんでしたので、記載されていません。
また、第3期教育振興基本計画では、「教育をめぐる現状と課題」として、新たに、「人口減少・高齢化」、「技術革新」、「子供の貧困」や「地域間格差」という社会状況の変化と、「教師の負担」という教育をめぐる状況変化が加わりました。
すると、それらの新たな課題を解決するために、「生涯学び、活躍できる環境を整える」、「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築する」などの基本的な方針が提示されました。
さらに、「客観的根拠を重視した教育政策の推進」という内容が加わり、「EBPM(客観的な根拠に基づく政策立案)」という新しい言葉も登場しました。
このように、社会の変化に伴って、新たな課題が出てきて、それを解決するため、新たに政策目標や方針が設定されます。
すると、政策目標を達成したり、方針に沿って実行したりするための新たな事業が始まります。
そして、今まで「働き方改革は可能か」シリーズで見てきたとおり、一度始まった事業は、数年後も、少し内容を変えたり、他の事業に統合されたりして続けられることが多く、事業の数や実施される内容はなかなか減りません。
これでは、学校で指導する学習内容や、学校の負担も増える一方ではないでしょうか。
そして、教育政策の目標や施策群があらかじめ「教育振興基本計画」に組み込まれている以上、政策目標を達成するための事業も簡単になくしたり、変更したりすることができないのです。
第4次教育振興基本計画策定に向けて
2019年度(令和元年度)末から始まったコロナ禍によって、教室での密集状態を解消するため、2021年度(令和3年度)に、小学校で、第2学年から順次35人学級への移行が始まりました。
これは、第3期教育振興基本計画にはなかった、計画外のことでした。
ただし、「第2期教育振興基本計画」の「4つの基本的方向性を支える環境整備」の中に、「少人数学級の推進」という言葉が入っていました。
ですから、「少人数学級の推進」は、第2期の計画では達成できなかったし、第3期には盛り込まれていませんでしたが、もともと計画されていたことだった、とも言えます。
一方、第3期計画の「社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえ、取り組むべき課題」として、「教員の負担」という言葉があります。
第3期計画の期間中に、この「教員の負担」問題に向き合ってはきましたが、現在はまだ、その解決のための道の入り口に立った段階だと思います。
奇しくも、教師の仕事の魅力を伝え、教師を志望する若者を増やしたい、という文部科学省の意向により、Twitterへの投稿などを利用した「教師のバトン」プロジェクトが、令和3年3月26日に、始まりました。
しかし、文部科学省の意向に反し、Twitterへの投稿は、現場の教員や元教師、教師の家族らからの、教師の悲惨な働き方の現状を訴える声であふれています。
これらの多くの教員の声をこのまま立ち消えにするようなことはあってはならないと思います。
教師の負担や長時間労働を解消するための「学校の働き方改革」については、この記事でずっと書いてきたように、長い時間をかけて少しずつ進んできた経緯があります。
どうしてそんなに長い時間がかかるのかといえば、数多くの課題が絡み合っており、簡単に解決できることではないこと、多大な予算がかかること、などの理由からです。
次回の「第4次教育振興基本計画」の策定は、2023年度(令和5年度)です。
「教師のバトン」プロジェクトにより、教師が不満を吐き出す場ができただけで「教員の負担」問題が立ち消えにならないよう、第4期教育振興基本計画にも「教員の負担」問題が盛り込まれていくことを強く望みます。
併せて、少人数学級についても、まだ小学校のみの決定で、学級の人数も35人ですので、中学校や高等学校でも少人数学級が行われるよう、また、より少ない学級人数で行われるように、第4期教育振興基本計画に内容が組み込まれるよう、望みます。
そのために、まずできることとして、教員の皆さんや関係者の皆さん、私を含め、学校における働き方について問題を感じている全ての人たちで、今後も声を上げ続けていくことが大切だと思います。
その思いで、今後も私はこのような記事を書き続けていこうと思います。
次回は、「学校における働き方改革は可能か㉟~学校における働き方改革が進まない原因と#教師のバトンと文科省VS自治体・教委・校長~」です。
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