- はじめに
- 平成28年度文部科学省の概算要求に対して、財務省が教職員定数の配置について「確かなエビデンスに基づく要求を行うこと」と指摘したことについて
- 「PDCAサイクル」が予算編成に取り入れ、現在まで続いてきた経緯
- 平成28年度予算編成で「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」を財務省が求めた理由は、「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立」のため
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?
- 平成28年度「経済・財政再生計画 改革工程表(工程表編)(平成27年12月24日/経済財政諮問会議)」の「ⅱエビデンスの提示(教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究)」の内容
- 平成28年度「経済・財政再生計画 改革工程表(文章編)(平成27年12月24日/経済財政諮問会議)」の「少子化の進展を踏まえた教職員定数の見通しなど予算の効率化及びエビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底」の内容
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由①‥少子化の進展の影響
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由②‥「いじめ防止対策推進法」施行(平成25年9月28日)の影響
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由③‥平成26年1月20日「障害者権利条約の締結」の影響
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由④‥「学校における業務改善のためのガイドライン」(平成27年7月27日発表)の影響
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由⑤‥「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年12月14日)の影響
- どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由⑥‥学習指導要領の改訂による授業時数と指導内容の増加、変化の影響
- 平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めた理由のまとめ
- 平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由
- 平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由①‥平成27年度概算要求で文部科学省が「10ヶ年の教職員定数改善計画」を提示して予算を要求したが、採用されなかったから
- 平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由②‥平成28年度概算要求で文部科学省が9ヶ年の「今後の教職員定数の見通し」を提示して予算を要求したが、採用されなかったから
- 平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由③‥「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日/閣議決定)」で「公共サービスの徹底した見える化」と「エビデンスに基づくPDCAの徹底」が重点化されたから
- 平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由まとめ
- 「平成29年度文部科学省の概算要求に対する財務省の建議」でも「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立」を求めている
- 財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日開催)資料(義務教育費国庫負担金関係)についての文部科学省の見解
- 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年12月14日)
- 平成29年度予算のポイント(政府案)
- 文教・科学技術予算のポイント(政府案)
- 予算編成におけるPDCAサイクルの仕組み(ポイント)
- 文部科学省の行った「政策評価」がよい結果でも、財務省が予算編成に「政策評価」を「活用」すると、なぜか経費が削減されてしまう‥削減のエビデンスはあったのか?
- 平成29年度予算執行調査資料反映状況票「義務教育費国庫負担金」(平成29年1月/財務省主計局)でも、「エビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立」が求められる
- まとめ
はじめに
長年教育現場で働いてきた教職員の皆さんは、以前に比べて教育委員会から学校への調査依頼が増えたことにお気づきだと思います。
学校における働き方改革のため、文部科学省から、平成27年7月27日に「学校現場における業務改善のためのガイドライン」が発表され、「教育委員会による学校への調査文書等に関する負担を軽減すること」という内容が記載されました。(「学校における働き方改革は可能か㉔」参照)
そして、平成28年6月17日には、「学校現場における業務の適正化に向けて」という通知も出されました。(「学校における働き方改革は可能か㉗」参照)
さらに、平成29年12月22日には、「新しい時代に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」で、国や教育委員会等に対して、調査・統計、依頼事項の精選を求めました。
しかし、それでもまだ学校の教職員の皆さんから、「調査に係る業務が多く、負担になっている。」という声を聞きます。
それでは、「PDCAサイクル」や、「エビデンス」という言葉を聞いたことはありますか。
聞いたことがある方が多いと思います。
「PDCAサイクル」は、ビジネスや学習指導でも使われることが多い言葉ですね。
Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、継続的に業務を改善していく手法のことです。
「PDCAサイクル」は、日本政府において、予算の効率化のために、予算編成で重視される手法です。
「エビデンス」は、昨今のコロナ禍の中、医療関係者や政府関係者がよく使用している言葉ですね。
証拠、裏付け、根拠のことです。
今回は、まず、「PDCAサイクル」と「エビデンス」が、政府や文部科学省の政策にどのように影響したかについて調べていきます。
そして、実際に平成29年度予算編成において、「PDCAサイクル」や「エビデンス」が関係した部分についてまとめていきます。
すると、「PDCAサイクル」と「エビデンス」が、学校の教職員の皆さんの「調査に係る業務が多く、負担になっている。」という声と関係が深いことがお分かりになることでしょう。
平成28年度文部科学省の概算要求に対して、財務省が教職員定数の配置について「確かなエビデンスに基づく要求を行うこと」と指摘したことについて
平成28年度文部科学省概算要求の教職員定数について、財務省により、
「厳しい財政事情を抱える我が国において、真に効果的・効率的な「未来への投資」を行うためには、教職員定数についても、少子化を踏まえつつ、確かなエビデンスに基づく議論を積み重ねていく必要がある。」
と指摘されました。
また、
教職員定数については、毎年、「現在の教育環境を維持した場合の10年間の基礎・加配定数」を、『少子化を反映した教職員定数のベースライン』として示すこととしてはどうか。
毎年の予算編成において、ベースライン定数以上に教職員定数の配置が必要な場合には、いじめ・不登校問題への対応、学力向上やアクティブラーニングなどの効果について、確かなエビデンスに基づく要求を行うこととしてはどうか。
と指摘されました。
そして、平成28年度予算政府案には、「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」事業が組込まれました。
「PDCAサイクル」が予算編成に取り入れ、現在まで続いてきた経緯
平成13年4月26日に発足した、第1次小泉純一郎内閣が、竹中平蔵経済財政政策担当大臣の下、「改革なくして成長なし」を合い言葉に、経済再生計画をスタートさせました。
そして、「聖域なき構造改革」として、「財政改革プログラム」を進展させたり、「政策プロセスの改革」として、実施事業を客観的に評価し、決算や評価結果を予算・計画などに反映させるシステムを作ったりしました。
平成15年度予算からは、「予算執行調査の反映状況」の公表を始め、平成16年度予算からは、「政策評価の活用状況」、平成17年度からは、「決算及び決算検査報告等の反映状況」の公表も行うようになりました。
そして、平成18年度予算政府案では、「予算の質の向上、効率化努力」という資料が発表され、その中で、
予算がどのように使われ、どのような成果をあげたかを評価・検証し、その後の予算編成に活用する(PDCA(「Plan-Do-Check-Action」の予算マネジメントサイクルの強化)ため、予算執行調査や決算検査報告書等への予算への反映・活用、成果重視事業など、様々な取組みを実施。
と、「PDCAサイクル」に初めて触れています。
続く平成19年度予算政府案では、「予算の更なる効率化に向けた取組み」という資料の中で、「予算の更なる効率化に向けたPDCAサイクル」という言葉が初めて使われました。
その後、民主党政権下の平成22年度予算編成から平成25年度予算編成までは、「徹底した予算の効率化」という言葉を使っていましたが、自民党政権が復活した平成26年度予算政府案で、「予算編成におけるPDCAサイクルの取組み」という表現で「PDCAサイクル」という言葉を再び使用し、現在(令和2年度)まで続いています。
つまり、
実施事業を客観的に評価し、決算や評価結果を予算・計画などに反映させるシステムにより、予算を効率化するために、PDCAサイクルの確立が必要であった。
現在も、予算編成において「PDCAサイクルによる予算の効率化」が必須となっている。
ということです。
平成28年度予算編成で「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」を財務省が求めた理由は、「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立」のため
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?
平成28年度から、教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究が開始されました。
概算要求にはなかった事業ですが、財務省との予算折衝を得て、政府案に持ち込まれたのです。
この「教育政策に関する実証研究」は、少子化の進展、エビデンス等を踏まえて、加配教員や専門スタッフ配置の効果分析等を実施するものでした。
そして、この研究は、後述する平成29年度予算の「少子化の進展や学校の諸課題に関する実証研究等を踏まえた教職員定数の中期見通しの策定に向けた教育政策に関する実証研究」に継承されました。
では、なぜ平成28年度予算編成で、この「教職員定数の中期見通しの提示」を、財務省が求めたのでしょうか。
平成28年度「経済・財政再生計画 改革工程表(工程表編)(平成27年12月24日/経済財政諮問会議)」の「ⅱエビデンスの提示(教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究)」の内容
2016年度(平成28年度)‥教育政策に関する実証計画を開始
各種の加配措置、少人数教育、習熟度別指導等多様な教育政策に関する費用対効果分析を含め、研究者・有識者からなる実効性のある研究推進体制の下で、一定数の意欲ある自治体等の協力を得て実施。
中期の継続的な縦断研究及び短期の研究を実施
(1)多面的な教育成果・アウトカム※の測定 ※アウトカム=その施策結果から期待される短中期的な業績や理想、効果
(2)子供の経時的変化の測定
(3)学校以外の影響要因の排除等も考慮
2017年度・2018年度(平成29年度・30年度)‥実証研究を計画的に実施
得られた研究成果は成果や費用、政策が実施される背景にある環境要因を「見える化」するとともに、それらを総合的に考慮して教職員定数の中期見通し作成を含む政策形成に漸次活用
平成28年度「経済・財政再生計画 改革工程表(文章編)(平成27年12月24日/経済財政諮問会議)」の「少子化の進展を踏まえた教職員定数の見通しなど予算の効率化及びエビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底」の内容
【ポイント】
教育効果のエビデンスを重視。教育政策に関する実証研究を推進。その進捗を踏まえ、少子化の進展、学校の課題等を踏まえた教職員定数の中期見通しを提示。
少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向、学校の課題に関する客観的データ等の学校・教育環境に関するデータ収集及び教育政策に関する事象研究の進展、地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通しを策定、公表、提示する。
データや教育政策の成果及び費用、背景にある環境要因を総合的に考慮して予算要求を行い、教育におけるPDCAサイクルを確立する。
((KPI※)教員の総勤務時間及びそのうちの事務業務の時間について、2017年調査においていずれも2013年度比減とする。※「KPI」=重要業績評価指標、目標を達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための定量的な指標。
OECD・PISA調査等の各種国際調査を通じて世界トップレベルを維持・向上するなど、初等中等教育の質の向上を測るKPIを設定する。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由①‥少子化の進展の影響
少子化が進展する中、適正規模の学校を維持するために、学校の統廃合を進める必要がありました。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由②‥「いじめ防止対策推進法」施行(平成25年9月28日)の影響
私の記事「あなたが考えるいじめや暴力行為対策として有効だった施策は?いじめ認知率を上げること?!」で書いたように、「いじめ防止対策推進法」では、いじめの定義や、いじめの防止等のための対策の基本理念、いじめの禁止、関係者の責務等を定めました。
そして、学校が講ずべき施策として、「学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理、福祉等の専門家その他の関係者により構成される組織を置くこと。」が定められました。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由③‥平成26年1月20日「障害者権利条約の締結」の影響
平成26年1月20日に、日本で「障害者権利条約」が締結されました。
「障害者権利条約」とは、
ものです。
「教育」については、
という内容になっています。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由④‥「学校における業務改善のためのガイドライン」(平成27年7月27日発表)の影響
平成26年に行われた平成27年度概算要求で、文部科学省は、それまで主張していた少人数学級の推進ではなく、多彩な専門スタッフの配置等に必要な教職員定数の改善計画を提案しました。(「学校における働き方改革は可能か㉒」参照)
続いて、平成26年11月1日には、「過労死等防止対策推進法」が施行、同年12月22日には、厚生労働省から、「働き方改革の推進について」という通知が出されました。(「学校における働き方改革は可能か㉔」参照)
そんな中でしたが、成立した平成27年度予算では、文部科学省の要求した教職員定数の改善計画は採用されませんでした。
その後、平成27年7月27日には、ようやく「学校現場における業務改善のためのガイドライン」が、文部科学省から発表されました。(「学校における働き方改革は可能か㉔」参照)
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由⑤‥「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年12月14日)の影響
後述する「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年12月14日制定)」は、不登校児童生徒への必要な支援を行うことや、不登校児童生徒のために学校の環境整備を行うことや、フリースクール等での学びのための経済的支援を検討することなどを定めたものです。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由⑥‥学習指導要領の改訂による授業時数と指導内容の増加、変化の影響
一方、この時期は、小学校3年生から6年生の週1時間の授業時数増加や、小中高等学校での指導内容の増加や指導方法や指導形態の変化を伴う学習指導要領の改訂を間近に控えている状況でもありました。
どうして平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めたのか?理由⑦‥平成28年度「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日)」で閣議決定されていたから!
「中長期的な経済財政の展望を踏まえた取組が必要」と明示されていた
2020年度(平成32年度)の財政健全化に向けて、第3章で定める計画に沿って、経済財政運営を行っていく。
相互に密接に連関する経済と財政について中長期的に一体的かつ整合的に展望しつつ、毎年度の予算は、経済再生と財政健全化の双方を実現する道筋を踏まえて、編成される必要がある。
国が各都道府県に教職員定数の見通しを示すことが決まっていた
また、少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向を踏まえ、国が各都道府県に教職員定数の見通しを示し、これに基づき計画的に教職員を採用・育成・配置する。
平成28年度予算編成で「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めた理由のまとめ
少子化が進行する中、適正規模の学校を維持するために、学校の統廃合を進める必要があり、全国的に調査をして、事前に教職員数の変動を把握することが、計画的な教職員配置をするために期待されました。
平成25年9月28日「いじめ防止対策推進法」施行され、いじめに対応できるカウンセラー等の専門家を設置する義務が生じました。
そして、いじめの早期発見のためのアンケートや教育相談の実施等により、学校がいじめ対策を施すことが義務づけられ、学校や教職員の負担が増えました。
また、平成26年1月20日「障害者権利条約の締結」により、障害のある児童生徒が自ら望む環境で学習できるようになり、障害者に教育を施す場合に、教職員や学校は「合理的配慮」をすることが不可欠となりました。
その結果、学校では「発達障害支援員」「通級指導員」等の配置が進みました。
反面、障害のある児童生徒を多数、普通学級で教える必要に迫られ、学校や教師の負担が増えました。
一方、平成28年度に改訂される学習指導要領の内容が明らかになるにつれ、授業時数の増加や指導内容の増加、指導方法・形態の変化等が行われることが分かってきました。
そして、それによって、学校や教員の業務や負担がますます増えていくことが予想されました。
そんな中、平成27年7月27日に発表された「学校における業務改善のためのガイドライン」により、学校や教師の業務を減らし、教師の健康を守ることが、国や教育委員会に義務づけられました。
そこから、「チーム学校」の考え方が生まれ、教師だけでなく、外部人材や専門家、地域の人々なども交え、「組織」として教育をしていこう、という方向に転換していきました。
さらに、平成28年度予算事業の成立には関係ありませんが、その後の平成28年12月14日には、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が制定されました。
この法律により、平成29年度以降、不登校児童生徒への必要な支援を行うことや、不登校児童生徒のために学校の環境整備を行うことが、学校や教師に義務づけられ、さらに学校や教職員の業務が増えることになりました。
これらの要因により、少子化により、必要な教職員数の自然減が見込まれる中ではありましたが、「チーム学校」の考えによって、新たに必要となった職種があったことや、これ以上教職員の負担を増やせないことなどから、教職員定数改善や外部人材増員も視野に入れざるを得ない状況になったのです。
そして、「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日/閣議決定)」で、「相互に密接に連関する経済と財政について中長期的に一体的かつ整合的に展望しつつ、毎年度の予算は、経済再生と財政健全化の双方を実現する道筋を踏まえて、編成される必要がある。」、「国が各都道府県に教職員定数の見通しを示し、これに基づき計画的に教職員を採用・育成・配置する。」と明記されていたことが、「教職員定数の中期見通しの提示」を財務省が求めた何よりの理由です。
平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由
平成28年度予算では、財務省より文部科学省に対して「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」が求められました。それはどうしてでしょうか。
平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由①‥平成27年度概算要求で文部科学省が「10ヶ年の教職員定数改善計画」を提示して予算を要求したが、採用されなかったから
文部科学省は平成27年度概算要求で、「チーム学校の推進」や「アクティブ・ラーニングの推進」等を踏まえて、義務標準法の改正を含む、10ヶ年で31,800人を改善する「新たな教職員定数改善計画(案)」を策定しました。
「改善計画の進め方」として、「定数改善数」と「少子化による自然減数」を示し、「追加的な財政負担を要することなく必要な定数改善を実施」と記述しました。
しかし、その10ヶ年の計画は、採用されませんでした。(「学校における働き方改革は可能か㉑」参照)
平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由②‥平成28年度概算要求で文部科学省が9ヶ年の「今後の教職員定数の見通し」を提示して予算を要求したが、採用されなかったから
文部科学省は、平成28年度概算要求でも、「小学校英語教科化にともなう専科指導の充実」や「アクティブ・ラーニングの充実」などを目指して、義務標準法の改正による基礎定数の改善を盛り込んだ「今後の教職員定数の見通し」を提示しました。
9年間で28,100人の定数改善を追加的な財政負担を要することなく実施するという見通しでした。(「学校における働き方改革は可能か㉕」参照)
しかし、その見通しが予算(案)に示されることはありませんでした。
平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由③‥「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日/閣議決定)」で「公共サービスの徹底した見える化」と「エビデンスに基づくPDCAの徹底」が重点化されたから
「公共サービスの徹底した見える化(現状、コストと政策効果)」と「エビデンスに基づくPDCAの徹底」が重点化された
平成28年度予算で「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」を財務省が求めた理由として、「経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日 閣議決定)」(骨太2015)で、「公共サービスのイノベーション」として、「公共サービスの見える化」及び「エビデンスに基づくPDCAの徹底」が重点化されたことがあげられます。
「公共サービスの徹底した見える化」では、現状や、コスト、政策効果を明らかにして、それらの情報に基づき、各府省が歳出改革の効果に関する評価をはじめ、各事業の厳格な評価を行うこととともに、その結果を公表することが求められました。
そして、評価の翌年度の要求に際しては、評価結果をどのように反映したか整理し、公表することも求められました。
行政に対する定量的な評価、評価に基づく業務の効率化に係る取組が十分でなく、それらに関する情報開示も遅れていることを踏まえ、「公共サービスの徹底した見える化(現状、コストと政策効果)」、見える化された情報を用いた「エビデンスに基づくPDCAの徹底」、「マイナンバー制度の活用やITを活用した業務の簡素化・標準化」を3本柱として、重点的に取り組む。こうした取組により、行財政改革の遅れている国の機関、自治体等の取組を促すとともに、企業等による新サービスの創出を促進する。
上記の徹底した見える化によって明らかにされる情報等に基づき、各府省庁は行政事業レビュー等において、歳出改革の効果に関する評価をはじめ、各事業の厳格な評価を行うとともに、その結果を公表する。さらに、評価の翌年度予算の要求に際しては、評価結果をどのように反映したか整理し公表する。
平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由まとめ
平成27年度の文部科学省概算要求の「10ヵ年の教職員定数改善計画」、平成28年度概算要求の「9ヶ年の今後の教職員定数の見通し」は、両方とも、政府案では採用されませんでした。
一方、「経済財政運営と改革の基本方針2015」で、政府は「公共サービスのイノベーション」を掲げて、公共サービスにおいて、各事業の現状、コストと政策効果の厳格な評価を行い、評価結果を翌年の予算の要求に反映させる「エビデンスに基づくPDCAの徹底」を求めました。
それにより、文部科学省が教職員定数の中期見通しを提示して、教職員定数改善や外部人材増員を求めるためには、予算編成において、費用対効果や予算の効率化を示す必要が出てきました。
つまり、教育政策の効果を「見える化」することが求められました。
そこで、教育政策の実証研究を行い、専門家の分析によるエビデンスを提示することにより、政策効果を「見える化」することになりました。
それらが、平成28年度予算編成で「教育政策に関する実証研究」と「エビデンス」を財務省が求めた理由です。
「平成29年度文部科学省の概算要求に対する財務省の建議」でも「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立」を求めている
平成28年度の「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」を受け、平成29年度の文部科学省概算要求で、文部科学省は、「次世代の学校指導体制の在り方について(最終まとめ/平成28年7月29日)」を発表しました。(「学校における働き方改革は可能か㉗」参照)
そして、その中で、「『次世代の学校』指導体制実現構想(中期見通し/平成29年~38年度までの10ヶ年計画)」を策定しました。
これは、通級指導や外国人児童生徒等への特別な指導に必要な教員について、対象児童生徒数に応じた基礎定数化の措置をすることを含む、29,760人の定数改善計画でした。
さらに、
「経済・財政再生計画」を踏まえ、少子化の進展、学校の規模適正化の動向、学校の課題に関する客観的データ、実証研究の進展、地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通しを策定
と、確かなエビデンスや教育政策の実証研究を踏まえたものであることを強調しています。
あわせて、
厳しい財政状況を勘案し、真に必要性の高い事項に限定することにより、国民に追加的な財政負担を求めないように最大限努める
との注意書きまで添えられています。
しかし、この、平成29年度の文部科学省概算要求に対しても、平成28年11月4日に財務省が「建議」を発表しました。
文部科学省の概算要求に対して、財務省が「建議」を発表するのは、毎年の恒例行事です。
その資料として、「①財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日)配付資料2」、「②財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日)参考資料1」の2つを紹介します。
要するに、いかにして文部科学省の提案した要求予算額を削るかについて、財務省が考え、その根拠を説明した資料です。
資料①「財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日)配付資料2」
加配定数と外部人材活用のあり方
特別支援教育における対応
今後、発達障害など通級指導の対象となる児童生徒が増加していくとされているが、
- 海外では特別支援教育において学級規模と学力の間に有意な関連は見られないという研究例が多数存在
- 通級指導に関する教員一人当たり児童生徒数は、都道府県別で最大15倍もの差
- 外部人材の支援員を活用することで、通級指導教室を設置していない自治体も存在
これらを踏まえ、外部人材の活用も含め、費用対効果を最大化するような配置・組み合わせを検証・分析する必要があるとしています。
外国人児童生徒への対応
外国人児童生徒への対応は、児童生徒数と単純に比例連動させるのではなく、外国人児童生徒増加による教員の負担増加は具体的に何なのか、どういう手段を組み合わせるのが効果的・効率的なのかを精査する必要があるとしています。
そして、具体的には下記の点について検証が必要であると訴えています。
- 日本語指導が必要な外国人児童生徒は特定の地域に偏在しており、地域ごとの事情も踏まえつつ、地方自治体や当該地域の経済団体・企業と十分な連携を図っていくことが必要ではないか。
- その上で、様々な母国語を持つ児童の日本語指導について、母国語が多様化している現状も踏まえつつ、外部専門家の活用も含め、費用対効果を最大化する最適な対応のあり方を検証することが必要ではないか。
文部省の概算要求に対する財務省の建議まとめ
下に掲げた財務省の建議の「まとめ」を大まか説明すると、①確かなエビデンスに基づき、PDCAサイクルを確立することが必要、②教員の「量」は、現状維持でいい、③教職員数の増加を求めるのであれば、多面的な実証分析に基づく根拠が必要、との結論に達した、ということになります。
資料②「財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日)参考資料1」
この資料は資料①の「参考資料」として提示されました。
まず、加配定数として扱われる人材の職種や人数、その必要性等について説明しています。
そして、加配定数のうち、基礎定数に組み入れる必要のある職種があることも書いてあります。
次に、外部人材の活用が有効な場合があることにも触れています。
しかし、いずれにせよ、費用対効果を検証すること、予算の削減、効率化のために、教員と外部人材の役割分担や最適な組み合わせを検討することを求めています。
加配定数の内訳
「財政制度等審議会財政制度分科会参考資料」で、財務省は、「加配定数の内訳をみると、アクティブラーニングなどの指導方法工夫改善が圧倒的な割合を占めており、次にいじめ問題などへの対応、特別支援児童・生徒の対応などが大幅な伸びを示している。」と書いています。
「チーム学校」を含めた外部人事活用による効率化
加配定数の性質分析
「加配定数の性質分析」では、適正性を踏まえた上で、加配定数の内容をよりきめ細かく見ていく必要があることが書かれています。
例えば、
- 学校数やクラス数、児童生徒数等に連動し、全国一律で実施する政策に必要な定数
- 地域や学校ごとの個別事情に応じて政策的に措置すべき定数
といった性質に分類し得ると考えられ、このうち1.に分類し得る定数については、その性質上基礎定数化し、連動する学校数やクラス数、児童生徒数等に応じて定数を変動させる仕組みを検討することも可能と考えられる、と述べられています。
「児童生徒数に連動し、全国一律で実施する政策に必要な定数」であり、「基礎定数化を検討することも可能」として掲げられたのは、「特別支援教育」、「少人数指導(少人数学級関係)」、「外国人児童生徒数」という分類になっています。
「通級による指導」の形態
「通級による指導」は、小・中学校の通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対して、ほとんどの授業(主として各教科などの指導)を通常の学級で行いながら、週に1~8単位時間程度、障害に基づく困難の改善・克服に必要な特別の指導を、特別の場で行う教育形態。
具体的な指導形態としては、下記の3類型が存在。
財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日開催)資料(義務教育費国庫負担金関係)についての文部科学省の見解
これも、毎年の恒例行事ですが、上述した財務省の建議に対して、今度は文部科学省が見解を発表しました。
財務省が言っていることに異議を申し立て、「予算を要求どおり措置して下さい。」と、財務省に訴える資料を提示するものです。
加配定数と外部人材活用のあり方1(特別支援教育)
特別支援教育のために加配される人材の、職種ごとの専門性を説明して、他の人材には決して代替することができないことを強調しています。
加配定数と外部人材活用のあり方②(外国人等への日本語指導)
「帰国・外国人生徒等教育の推進事業」は、帰国・外国人児童生徒等の公立学校における受入促進等のため、日本語指導ができる支援員や、児童生徒の母語が分かる支援員等を配置する事業です。
文部科学省は、外国人等への日本語指導について、児童生徒の日本語能力段階に応じた適切な組み合わせが必要であることを述べています。
特に、日本語「で」教科を学ぶ段階では、日本語と教科の統合的な指導が必要であり、その役割を担うことができるのは専門的な研修を受けた教員であることが強調されました。
特別支援教育における対応①
「海外では特別支援教育において学級規模と学力の間に有意な関連は見られないという研究例が多数存在」という財務省の建議について
ここでは、通級指導の効果に対する財務省の捉え方は的外れであることを、「障害のある児童生徒に対する教育の定義」を引用したり、「通級指導は全体指導によるものではないこと」を説明したりすることにより指摘しています。
外国人児童生徒への対応(地方自治体の協力②)
「外国人児童生徒等教育」が、正規の教育課程に位置付けられ、専門性の高い仕事であることを説明して、基礎定数化による措置を強調しています。
財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年11月4日開催)資料(義務教育費国庫負担金関係)についての文部科学省の見解まとめ
「まとめ」として、「外国人児童生徒教育」と「通級指導」は、法令上、正規の教育課程=授業として位置付けられるものであるから、免許状を持った教員が担うべき。だから、基礎定数化を要求した、ということを強調しています。
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年12月14日)
平成28年12月14日「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が制定されました。
不登校児童生徒への必要な支援を行うことや、不登校児童生徒のために学校の環境整備を行うことや、フリースクール等での学びのための経済的支援を検討することなどが決められました。
併せて、夜間中学の設置を各都道府県に促すとともに、夜間中学への教員の加配を含めた教職員の配置の拡充等を行うことも記されています。
基本理念
- 全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。
- 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。
- 不登校児童生徒が安心して教育を十分受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
- 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢または国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。
- 国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること。
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に対する付帯決議(平成28年11月18日 衆議院文部科学委員会、12月6日 参議院文教科学委員会)
- 本法に定める不登校児童生徒に対する支援に当たっては、全ての児童生徒に教育を受ける権利を保障する憲法のほか、教育基本法及び生存の確保を定める児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとって、不登校の児童生徒やその保護者を追い詰めることのないよう配慮するとともに、児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるように配慮すること。
- 本法第二条第三号に定義された不登校児童生徒への支援、その他不登校に関する施策の実施に当たっては、不登校は学校生活その他の様々な要因によって生じるものであり、どの児童生徒にも起こり得るものであるとの視点に立って、不登校が該当児童生徒に起因するものと一般に受け取られないよう、また、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること。
- 文部科学大臣は、本法第七条の基本指針の策定に当たっては、特に児童生徒や保護者、学校関係者などの当事者の意見を多面的に聴取しその意見を反映させるとともに、本法第三条第一号に掲げる基本理念にのっとり、多様な児童生徒を包摂し共生することのできる学校環境の実現を図ること。また、その学校環境の実現のために、教職員が児童生徒と向き合う時間を十分に確保できるよう、必要な措置を講ずること。
- 本法第八条の運用に当たっては、本法第十三条の趣旨も踏まえ、例えば、いじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど、児童生徒の状況に応じた支援を行うこと。
- 本法第三章に定める不登校児童生徒の環境や学習活動、支援などについての状況の把握、情報の共有に当たっては、家庭環境や学校生活におけるいじめ等の深刻な問題の把握に努めつつ、個人のプライバシーの保護に配慮して、原則として当該児童生徒や保護者の意思を尊重すること。
- 本法第十条に定める不登校特例校の整備に当たっては、営利を目的とする団体による設置・管理には慎重を期すこととし、過度に営利を目的として教育水準の低下を招くおそれがある場合には、これを認めないこと。また、不登校特例校や本法第十一条に定める学習支援施設の運用においては、本人の意思を尊重することが重要であり、不登校となった児童生徒が一般の学校・学級で学ぶ権利を損ねることのないようにすること。
- 本法第十四条に定める夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置により、就学の機会を希望する学齢超過者に対し、就学の機会が可及的速やかに提供されるよう、地方自治体は、本法第十五条に定める協議会の全ての都道府県への設置に努めるとともに、政府は、地方公共団体に対して積極的な支援を行うこと。
- 夜間その他の特別な時間において授業を行う学校の実態を踏まえ、教員の加配も含めた教職員の配置の拡充や教職員の研修の充実を図ること。
- 不登校の児童生徒が、いわゆるフリースクール等の学校以外の場において行う多様な学習活動に対しては、その負担の軽減のための経済的支援の在り方について検討し、その結果に基付き必要な財政上の措置を講ずること。
平成29年度予算のポイント(政府案)
平成29年度予算のポイント
「経済・財政再生計画」2年目の予算として、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算でした。
経済再生
財政健全化
平成29年度予算フレーム
平成29年度予算の歳入のうち、税収は、平成28年度予算に比べて1,080億円の増、その他収入は6,871億円の増、公債金は、622億円の減です。
歳出では、国債費が836億円の減、一般歳出が5,305億円の増、地方交付税交付金等が2,860億円の増です。
歳出合計、歳入合計ともに97兆4,547億円で、平成28年度予算に比べて7,329億円の増となりました。
経済指標・財政指標(一般会計)
平成28年度は、名目GDP成長率の見通しは3.1%だったものの、平成29年度に発表された実績見込みは1.5%にしかならず、平成27年度の実績の2.8%から、大きく落ち込みました。
平成29年度の名目GDP成長率の見通しは、2.5%で、平成28年度の1.5%を上回る景気回復が期待されました。
主要経費別内訳
「平成29年度主要経費別内訳」で、「恩給関係費」が▲13.9%の大幅減でした。
景気対策を反映した信用保証制度関連予算(日本政策金融公庫出資金)が▲32億円にのぼった影響で、「中小企業対策費」が▲0.8%となりました。
また、米・畑作物の収入減少影響緩和策に係る一般会計所要額の減が▲97億円となったため、「食料安定供給関係費」が、▲1.0%となりました。
例年どおり、「社会保障関係費」と「防衛関係費」は増額でした。
また、原子力損害賠償支援勘定への繰入れ(皆増)が400億円となった影響で、「エネルギー対策費」が、+3.5%になりました。
地方税・地方交付税等の地方の一般財源総額について28年度と実質的に同水準を確保するために、「地方交付税交付金等」は、+1.9%でした。
全体では、平成28年度比+0.8%となりました。
平成29年度予算の特徴①(メリハリの効いた予算)
一億総活躍社会の実現
社会保障
教育
経済再生
働き方改革
行政事業レビュー
平成29年度予算の特徴②(各歳出分野の特徴)
社会保障
歳出分野における効率化①(「改革工程表」(2016改訂版)の概要)
「改革工程表」において、「経済財政計画」期間(2016~2020年度)の改革の方向性や検討・実施時期等を明確化。
社会保障
社会資本整備等
地方行財政改革
文教・科学技術
文教・科学技術予算のポイント(政府案)
29年度予算編成の基本的な考え方
文教・科学技術予算については、
- 少子化の進展を踏まえた予算の効率化
- 民間資金の導入促進
- 予算の質の向上・重点化
- エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底
という方針に基づき編成。
- 文教予算は、教職員定数について、少子化や学校統廃合の進展を適切に反映した基礎定数の減少を見込みつつ、発達障害等を持つ児童生徒に対する通級指導や外国人児童生徒に対する日本語指導のための教職員の安定的な配置等を図るため、加配定数の一部について基礎定数への移行を行う。
- また、外部人材を有効に活用するため、「チーム学校」や「学校を核とした地域力強化プラン」の推進のための予算を拡充する。
- 国立大学法人運営費交付金等については、教育研究基盤の安定のために前年度同程度の水準を確保する中で、メリハリのある配分を実施。
- 合わせて授業料免除枠も拡充。
- 学びのセーフティネットを構築し、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向け、低所得世帯の進学を後押しするため、給付型奨学金を創設し、29年度から先行実施する。
- 無利子奨学金について、低所得世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃すると共に、残存適格者を解消する。
- また、幼児教育の段階的無償化を進めるほか、高校生等奨学給付金の拡充、「放課後子供教室」の拡充等により、教育機会を確保しつつ、負担軽減を図る。
- また、非構造部材の耐震化や老朽化対策、トイレ・空調の改修など、子どもたちが安心して学べる学校施設の環境整備も実施。
科学技術振興費については、民間投資を引き出し、官民一体となってイノベーションの創出を図り、成長力の強化に資するような研究開発へ重点化しつつ、25年度以降最大となる伸び率(+0.9%)
文教予算のポイント
一億総活躍関係
教育環境の整備・質の向上
特記事項
子供の学習指導(「秋のレビュー」への対応)‥121億円⇒120億円(▲0.4%)
以下の4事業については、行革推進会議「秋のレビュー」において、①事業の評価を適切に行うため、それぞれの事業の成果目標を明確に設定すべき、②それぞれの事業間の連携及び重複排除を行い、事業間の資金配分について効率化を図るべき、との指摘があったところ。
- 学校を核とした地域力強化プラン
- 補習等のための指導員等派遣事業
- 帰国・外国人児童生徒等教育の推進
- 理科教育等設備整備費補助等
こうした指摘をうけ、29年度においては、各事業間のサポートスタッフの配置について連携及び重複排除を行い、一部事業においてスタッフ数の削減を実施することで、4事業全体として合理化及び効率化を図る。
大学力向上のための大学改革の推進等
スポーツ関係予算のポイント(※学校教育関連のみ抜粋)
スポーツ施策の総合的な推進
予算編成におけるPDCAサイクルの仕組み(ポイント)
国会の議決・決算検査報告書等の反映
予算執行調査の反映【平成29年度予算への反映額:▲493億円、2億円(歳入)】
政策評価の活用【平成29年度予算への活用額:125億円】
文部科学省の行った「政策評価」がよい結果でも、財務省が予算編成に「政策評価」を「活用」すると、なぜか経費が削減されてしまう‥削減のエビデンスはあったのか?
政策評価の結果の活用状況事例P.3 政策名「豊かな心の育成」(うち、スクールカウンセラー等派遣事業)、事項「豊かな心の育成に必要な経費」
活用額(文部科学省の政策評価の結果を、財務省の予算編成に活用した額)
▲1億2,400万円
要求府省における政策評価の結果
政策評価結果のポイント
「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、不登校児童生徒に特に効果があった学校の措置として、「スクールカウンセラー等が専門的に指導にあたった」と回答した学校が、学校内での指導の改善工夫中、最も多く、また、不登校児童生徒が相談、指導、治療を受けた機関等」としては、スクールカウンセラーが小中学校ともに最も多い状況であり、引き続き、スクールカウンセラー配置拡充が、求められている。
予算要求への反映状況
スクールカウンセラー等の配置拡充は、一億総活躍プランにも掲げられている重要施策でもあり、引き続き取組を推進する必要があることから、所要の経費を要求した。
財務省における政策評価の結果の活用
評価結果に対する考え方
政策評価結果を踏まえ、スクールカウンセラーの配置充実は必要と考えられるが、スクールカウンセラーの効率的な活用のための配置の在り方については、検討が必要。
予算編成における活用状況
スクールカウンセラーの配置は、各小学校に1名ずつ配置するのではなく、各中学校に配置し、個々の課題に応じて弾力的に小学校に派遣する小中連携型の配置への移行を一層推進し、経費の効率化を図った。
私の考え
前述のように、文部科学省の政策評価で、「『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』においてスクールカウンセラーの活用の効果が大いにあった。」という結果が出ました。
そして、文部科学省は「引き続き取組を推進する必要がある。」という結論を出しています。
「スクールカウンセラーが効率的に活用されていない現状があった。」とはどこにも書かれていません。
しかし、財務省は、「スクールカウンセラーの配置充実は必要と考えられるが、スクールカウンセラーの効率的な活用のための配置の在り方については、検討が必要。」という考えを表しました。
そして、「各中学校に配置し、個々の課題に応じて弾力的に小学校に派遣する小中連携型の配置への移行を一層推進し、経費の効率化を図った。」と、述べています。
これでは、スクールカウンセラーの人数を減らして経費節減した説明になっていないと思います。
その根拠となったエビデンスも示されていません。
平成29年度予算執行調査資料反映状況票「義務教育費国庫負担金」(平成29年1月/財務省主計局)でも、「エビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立」が求められる
反映状況票
調査結果の概要及び今後の改善点・検討の方向性
加配措置の効果の検証は、可能な限り統計的・学術的に適切な手法で行うことが求められ、また、そうして調査された結果を、翌年度の定数要求に適切に反映させる必要。こうした科学的根拠に基づくPDCAサイクルを確立するため、早急に体制整備をしていく必要がある。
初任者研修加配については、
- 多くの県で行われている初任者への特別な配慮との兼ね合い、
- 実際の担任を受け持つ初任者の割合との関係
などを踏まえ、現在の機械的な加配措置の配置基準(初任者4人に加配教員1人)の見直しを行うべき。
また、異なる免許の加配教員を指導員として配置することを止め、同じ免許科目の退職教員等を活用するなど、より効率的・効果的な方法を採用するべき。
反映の内容等
加配措置の効果の検証については、平成28年度より開始した「教育政策に関する実証研究」において、加配教員や専門スタッフ配置の効果分析等、各種教育政策に係る実証研究を実施。
また、平成29年度においても上記実証研究を引き続き計画的に実施することで、「経済・財政再生アクション・プログラム2016」(平成28年12月21日改訂)にも示されている「エビデンスに基づいたPDCAサイクル」の確立に向けた取組みを進める。
初任者研修加配については、初任者と同じ免許科目の退職教員等を活用するなど運用を弾力化することで、指導教員及び初任者間の免許科目の不一致の解消を図るなどの見直しを行った。
総括調査票でも「エビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立」が求められる⇒そのための調査が増える
調査事案の概要
「義務教育費国庫負担金」は、公立小中学校における教職員(約70万人)の給与費等の1/3を国が負担するもの。残りの2/3は、都道府県が負担することになっており、国(文部科学省)は、都道府県からの要求を踏まえつつ、国としての政策判断等を考慮し、概算要求に反映。
経済財政諮問会議等において、教職員定数についても、確かなエビデンスに基づいたPDCAサイクルを確立させる必要性が指摘されており、投資に対する効果をしっかり検証しながら政策判断をしていく必要がある。
教職員定数は「基礎定数」と「加配定数」に分けられる。
- 「基礎定数」については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(「以下義務標準法」という。)により学級数等に応じた定数が定められているため、少子化の影響による学級数等の減少に応じて基礎定数は減少する傾向にある。(校長・教頭・学級担任など)
- 一方、加配定数については、毎年度の予算措置で決まるものであり、学校現場の諸課題の多様化等を背景に増員措置を続けてきた結果、定数全体の1割を占める状態となっている。(義務標準法で定める以上の少人数指導のための定数、いじめ対応のための定数など。)
「加配定数」については、学校現場が直面する諸課題ごとに対応する各メニューが存在。加配措置が諸課題の解決につながっているのか、検証する必要。
※たとえば、平成14年度の会計検査院の検査では、「初任者研修加配」に関連して、
- 初任者の免許教科と異なる免許教科の教員を教科指導者に任命するなどしていた。
- 初任者に免許外の教科を担任させていて、研修に専念できる体制を採っていなかった。
- 初任者又は指導教員等の授業の代行や負担の軽減を行うため非常勤講師の配置を受けた学校において、初任者等の授業の代行や負担の軽減が行われていなかった。
という指摘もあり。
調査の視点
毎年の概算要求において加配定数の増員が求められているが、税金の追加投入に当たり国民が納得できる投資効果を示せているのか、精査が必要。
- 各都道府県が、国に教職員定数を要求するに当たり、どのような効果分析や情報をもとに要求しているのかを具体的に調査。
- 初任者研修対象者への教育方法として、教員加配を措置することが最も効率的な方法なのか、各県における考え方や執行状況を調査。
⇒個別の論点は、今後の予算編成過程で精査していくこととなるが、まずは、これらの点を、各都道府県に対するアンケート調査を実施し、実態把握をする。
調査結果及びその分析
加配定数一般について
加配措置の投資効果について学力テストなどの指標で分析していない県は47都道府県中16県あった。また、「分析している」とした県においても、単に前回との比較やアンケートなどを参考にしている程度の県が大半。
以下のような具体的指標を例示している県もあったが、こうした指標を元に翌年度の要求に定量的に反映させている県は皆無であった。(少人数学級については、児童生徒数に応じて要求している県は11県あった。)
- 指導方法工夫改善(少人数指導加配)‥全国学力調査や県独自の学力調査を検証など
- 児童生徒支援加配‥不登校児童の復帰率、いじめ認知件数と解消率など
※一方、これらでは加配措置の効果として、統計的に有意な結果を算出するのは困難との意見もあり。
県単独加配の措置状況は、以下の通りメニューにより偏りがみられる。
- 少人数学級加配、児童生徒支援加配は22県措置している。
- 一方、栄養教諭は1県、主幹教諭や事務職員は2県のみ。
⇒国への要求と実際の国からの配賦状況の差を、県独自の措置で埋め合わせる形になっていない(少人数学級のための定数は国への要求以上に県単独加配措置を実施している一方、養護教諭、栄養教諭などは、その差の半分も県単独加配で措置していない)。
初任者研修加配について
初任者研修加配は、初任者研修というOJT※が効果的に進められるように初任者4人に一人の加配をつけるものだが、「初任者には担任を持たせず、副担任とする」「担当時間を少なくし、自己研鑽の時間を確保する」などの初任者への特別な配慮をしている県は36県もあった。一方、実際、担任を持たない初任者は約5人に1人の割合で存在している。※OJT=職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法
中学校において、56.8%が初任者と異なる免許教科の指導教員を加配措置されている。一方、国による加配措置の代替策(補強策)として、退職教員等を活用した指導体制をとられている県が5県みられた。
加配措置だけでなく、全校体制による研修など研修方法を工夫することで、より効果的・効率的なものとする必要があるとの意見もあった。
今後の改善点・検討の方向性
加配措置の効果の検証は、可能な限り統計的・学術的に適切な手法で行うことが求められ、また、そうして調査された結果を、翌年度の定数要求に適切に反映させる必要。こうした科学的根拠に基づくPDCAサイクルを確立するため、早急に体制整備をしていく必要がある。
初任者研修加配については、
- 多くの県で行われている初任者への特別な配慮との兼ね合い
- 実際の担任を受け持つ初任者の割合との関係
などを踏まえ、現在の機械的な加配措置の配置基準(初任者4人に加配教員1人)の見直しを行うべき。
また、異なる免許の加配教員を指導者として配置することを止め、同じ免許科目の退職教員等の活用や効率的な研修の充実など、より効率的・効果的な方法を採用するべき。
まとめ
今回の記事では、まず、予算編成に、PDCAサイクルが取り入れられた経緯を書きました。
そして、「エビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立」のために、平成28年度予算で「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」事業が行われたことを書きました。
併せて、「教職員定数の中期見通し」が必要になった、その当時の時代背景について書きました。
次に、平成29年度予算編成において、「教育政策に関してもエビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立が必要」と、財務省に指摘されたことを書きました。
以下に、どのような場面で、財務省から、「教育政策に関してもエビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立が必要」と指摘されたのか、まとめてみます。
「文部科学省の概算要求に対する財務省の建議」では、「外国人生徒の日本語指導や通級指導には、外部人材の活用も含め、費用対効果を最大化する最適な対応のあり方を検証することが必要ではないか。」と、指摘されました。
しかし、文部科学省から、「外国人生徒の日本語指導や通級指導は正規の教育課程であるので、法律上、正規の教員でしか指導はできない。」と反論されました。
財務省は、あわせて、
基礎定数化や加配定数の充実により、現在の教育環境の水準以上の教職員の増加を求めるのであれば、様々な加配定数におけるクラス・児童生徒数あたり教員数の比較と適正性の検証など、「多面的な実証分析に基づく根拠が不可欠」
と、確かなエビデンスを求める厳しい意見を出しました。
さらに、「文部科学省の政策評価の結果」からは、
スクールカウンセラーの効率的な活用のための配置の在り方については、検討が必要
と結論を出しました。
そして、
各中学校に配置し、個々の課題に応じて弾力的に小学校に派遣する小中連携型の配置への移行を一層推進し、経費の効率化を図った。
として、1億2,400万円を減額しました。
こちらは、どうして予算の削減になったのか、私が調べた資料「政策評価の結果の活用状況事例」からはそのエビデンスは読み取れませんでした。
つまり、平成29年度の予算編成の時点では、まだ、スクールカウンセラーの配置の最適な方法のエビデンスが得られていないのです。
また、「予算執行調査資料反映状況票」では、
加配措置の効果の検証は、可能な限り統計的・学術的に適切な手法で行うことが求められ、また、そうして調査された結果を、翌年度の定数要求に適切に反映させる必要。
と述べ、確かなエビデンスに基づくPDCAサイクルを確立することの重要性を訴えています。
そして、初任者加配について、
現在の機械的な加配措置の配置基準(初任者4人に加配教員一人)の見直しを行うべき。
と、より効率的・効果的な方法を採用するべきことを主張しています。
ただし、こちらも、まだ初任者研修加配教員の最適な配置の仕方のエビデンスはありません。
さらに、「総括調査票」では、初任者加配についての平成14年度の会計監査院の検査結果においての問題点を挙げ、
各都道府県が、国に教職員定数を要求するに当たり、どのような効果分析や情報をもとに要求しているのかを具体的に調査。
初任者研修対象者への教育方法として、教員加配を措置することが最も効率的な方法なのか、各県における考え方や執行状況を調査。
と、初任者加配教員の配置の仕方のエビデンスを得るため、都道府県に調査を依頼することに触れています。
そして、
以下のような具体的指標を例示している県もあったが、こうした指標をもとに翌年度の要求に定量的に反映させている県は皆無であった。
・指導方法工夫改善(少人数指導加配)‥全国学力調査や県独自の学力調査を検証など
・児童生徒支援加配‥不登校児童の復帰率、いじめ認知件数と解消率など
※一方、これらでは加配措置の効果として、統計的に有意な結果を算出するのは困難との意見もあり。
と、少人数指導加配や児童生徒支援加配などについても、都道府県単位で調査をし、「エビデンスに基づくPDCAサイクル」を取り入れるべき、という考えを示しています。
一方、私の考えはこうです。
- 各学校の児童生徒の実態や教職員の能力などの状況が異なるので、加配定数の効果を測ることは難しい。
- 外部指導者と加配教員のどちらの方がいいのか、どういう組み合わせにしたらいいのかなどの詳しい比較はもっと難しい。
- 例えばスクールカウンセラーが配置されたからいじめが減る、いじめの解消率が増える、不登校が減るとは限らない。数字では測れない部分で効果が出ることも多いように思う。
- 初任者研修が十分行えるかは、学校の事情によって違う。問題行動が多い学校では、初任者研修加配教員が問題行動の対応に当たらざるを得なくなり、初任者研修が十分に行えなくなる場合もある。
- 少人数指導教員が配置されて、低学力の一人二人の学力アップにつながったとしても、学級全体として効果が表れるとは限らない。(だからといって不必要ではない。)
- 学習意欲が上がったかどうかを「勉強は好きですか。」などのアンケートだけで測った結果が正確だとは思えない。
- 1年間や2年間の短期間では加配教員や外部指導者の効果が表れないこともある。
- 1年ごとに、児童の実態や学級編成や教職員編成などの条件が異なって、去年うまくいった方法でまた効果があるとは限らない。学校ではPDCAサイクルがうまく回らないことが多いと思う。
このような理由から、学校の教育に「エビデンス」や「PDCAサイクル」はそぐわないと思います。
そして、そのような無理な調査をすることが、学校の負担を増やしています。
調査で有効な結果を出せないと予算をもらえない、教職員も増やしてもらえない、というような構造では、よい教育はできません。
それどころか、意味のあるデータを得るために、教育の目的自体が変わってしまう可能性だってあります。
国にはその仕組みを改めてほしいと思います。
次回の記事「学校における働き方改革は可能か㉙~6年ぶりの基礎定数改善と武道指導の充実~平成29年度予算2~」では、平成29年度の文部科学省予算の内容を通して、「学校における働き方改革」が進んだのか、さらに調べていきます。
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