- はじめに「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!」
- 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(概要)
- 「教育職員免許更新制廃止」によって更新講習を受講しなかったために失効した教員免許が復活する理由についての考察
- ①「教育職員免許法第五条第1項」の「普通免許状の授与」の規定がそのまま生きるから?
- ②「教育職員免許法第五条第2項」の「普通免許状の授与(免許状の有効期間に関わるもの)」の規定が削除されるから?
- ③教育職員免許法附則第三条に「教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置」の規定があるから?
- ④他の法律や条文にも「免許状更新を行わなかった者の免許状は失効する・取り上げる」、「免許状更新を行わなかった者は降任する・免職する・分限する・懲戒する」という規定がないから?
- ⑤「教育職員免許法第九条」の「免許状の有効期間・免許状更新講習に関する規定」が全て削除されるから?
- ⑥「教育職員免許法」から「教育職員免許状更新制に関する規定」が全て削除されるから?
- 「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!」まとめ
はじめに「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!」
「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案」が、第208回国会で審議され、令和4年5月11日に参議院本会議で可決・成立しました。
そして、教員免許更新制を廃止する期日が7月1日と定められました。
これにより、かつて教員免許を取得したものの、教員免許更新講習を受けなかったために免許が失効してしまった方も、7月1日以降は、何の手続きもなく教員免許が復活します!(※)
(※「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!②~手続きなしで教員免許が復活する人~」で、その条件について詳しくお伝えします。)
この情報については、斉藤嘉隆参議院議員が、自らのFacebookのホームページ内で述べています。
この記事では、今回成立した「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案」より、「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!」の理由が分かる部分について見付けて考えます。
教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(概要)
趣旨
校長及び教員の資質の向上のための施策をより合理的かつ効果的に実施するため、公立の小学校等の校長及び教員の任命権者等による研修等に関する記録の作成並びに資質の向上に関する指導及び助言等に関する規定を整備し、普通免許状及び特別免許状の更新制に関する規程を削除する等の措置を講ずる。
概要
1.研修記録の作成及び資質の向上に関する指導助言等(教育公務員特例法の一部改正)
- 任命権者は、校長及び教員ごとに研修等に関する記録を作成しなければならない。【教特法第22条の5第1項及び第2項】
<記録の範囲>
- 研修実施者(※1)が実施する研修
- 大学院修学休業により履修した大学院の課程等
- 任命権者が開設した認定講習及び認定通信教育による単位の修得
- その他任命権者が必要と認めるもの
- 指導助言者(※2)は、校長及び教員に対し、資質の向上に関する指導助言等を行うものとする。その場合に、校長及び教員の資質の向上に関する指標及び教員研修計画を踏まえるとともに、1の記録に係る情報を活用する。【教特法第22条の6第1項及び第2項】
- 指導助言者は、独立行政法人教職員支援機構(NITS)や大学等に情報の提供等の協力を求めることができるものとする。【教特法第22条の6第3項】
- 教員研修計画に、資質の向上に関する指導助言(※3)等の方法に関して必要な事項を加える。【教特法第22条の4第2項第4号】
※1 研修実施者は中核市の県費負担職員の場合は中核市教育委員会、その他の校長及び教員の場合は原則任命権者
※2 指導助言者は県費負担教職員の場合は市町村教育委員会、その他の校長及び教員の場合は任命権者
※3 教員への指導助言等は、教育委員会の指揮監督に服する校長等が実施することを想定
2.普通免許状及び特別免許状の更新制に関する規定の削除等(教育職員免許法の一部改正)
- 普通免許状及び特別免許状を有効期間の定めのないものとし、更新制に関する規定を削除する。【免許法第9条~第9条の4等】
- 施行の際現に効力を有し、改正前の規定により有効期間が定められた普通免許状及び特別免許状には、施行日以後は有効期間の定めがないものとする等の経過措置を設ける。【附則第3条】
3.その他(教育職員免許法の一部改正)
- 普通免許状を有する者が他の学校種の普通免許状の授与を受けようとする場合に必要な最低在職年数について、当該年数に含めることができる勤務経験の対象を拡大する。【免許法別表第8】
- 主として社会人を対象とする教職特別課程(普通免許状の授与を受けるために必要な科目の単位を修得させるために大学が設置する修業年限を1年とする課程)について、修業年限を1年以上に弾力化する。【免許法別表第1備考第6号】
施行期日
令和4年7月1日(1.の規定は令和5年4月1日)【附則第1条】
「教育職員免許更新制廃止」によって更新講習を受講しなかったために失効した教員免許が復活する理由についての考察
①「教育職員免許法第五条第1項」の「普通免許状の授与」の規定がそのまま生きるから?
教育職員免許法第五条第1項 普通免許状の授与(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。
- 十八歳未満の者
- 高等学校を卒業しない者(通常の課程以外の課程におけるこれに相当するものとしを修了しない者を含む。)ただし、文部科学大臣において高等学校を卒業した者と同等以上の資格を有すると認めた者を除く。
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 第十条第一項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い、当該失効の日から三年を経過しない者
- 第十一条第一項から第三項までの規定により免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
- 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
教育職員免許法 別表第一・別表第二・別表第二の二(第五条、第五条の二関係)(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
②「教育職員免許法第五条第2項」の「普通免許状の授与(免許状の有効期間に関わるもの)」の規定が削除されるから?
教育職員免許法第5条第2項(令和4年4月1日現在)普通免許状の授与(免許状の有効期間に関わるもの)⇒令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立により7月1日より削除
前項本文の規定にかかわらず、別表第一から別表第二の二までに規定する普通免許状に係る所要資格を得た日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日を経過した者に対する普通免許状の授与は、その者が免許状更新講習(第九条の三第一項に規定する免許状更新講習をいう。以下第九条の二までにおいて同じ。)の課程を修了した後文部科学省令で定める二年以上の期間内にある場合に限り、行うものとする。
③教育職員免許法附則第三条に「教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置」の規定があるから?
教育職員免許法附則第三条「教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置」の条文
この法律の施行の際現に効力を有する普通免許状及び特別免許状であって、第二条の規定による有効期間が定められたものについては、この法律の施行の日(附則第十二条において『施行日』という。)以後は、有効期間の定めがないものとする。
教育職員免許法附則第三条「教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置」の条文で気になる点!!
「この法律の施行の際現に効力を有する普通免許状及び特別免許状であって」という言葉から更新講習を受講せず、この法律の施行の際に既に失効している教員免許は復活しないという意味にも取れます!?
④他の法律や条文にも「免許状更新を行わなかった者の免許状は失効する・取り上げる」、「免許状更新を行わなかった者は降任する・免職する・分限する・懲戒する」という規定がないから?
教育職員免許法第十条(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
免許状の失効
第1項
免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。
- 第五条第一項第三号又は第六号(前述)に該当するに至ったとき。
- 公立学校の教員であって懲戒免職の処分を受けたとき。
- 公立学校の教員(地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する者を除く。)であって同法第二十八条第一項第一号又は第三号に該当するとして分限免職の処分を受けたとき。
第2項
前項の規定により免許状が失効した者は、速やかに、その免許状を免許管理者に返納しなければならない。
【参考】教育職員免許法第十一条(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
免許状の取上げ
第1項
国立学校、公立学校(公立大学法人が設置するものに限る。次項第一号において同じ。)又は私立学校の教員が、前条第一項第二号に規定する者の場合における懲戒免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるときは、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならない。
第2項
免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならない。
- 国立学校、公立学校又は私立学校の教員(地方公務員法第二十九条の二第一項各号に掲げる者に相当する者を含む。)であって、前条第一項第三号に規定する者の場合における同法第二十八条第一項第一号又は第三号に掲げる分限免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるとき。
- 地方公務員法第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する公立学校の教員であって、前条第一項第三号に規定する者の場合における同法第二十八条第一項第一号又は第三号に掲げる分限免職の事由に相当する事由により免職の処分を受けたと認められるとき。
第3項
免許状を有する者(教育職員以外の者に限る。)が、法令の規定に故意に違反し、又は教育職員たるにふさわしくない非行があって、その情状が重いと認められるときは、免許管理者は、その免許状を取り上げることができる。
第4項
第三項の規定により免許状取上げの処分を行ったときは、免許管理者は、その旨を直ちにその者に通知しなければならない。この場合において、当該免許状は、その通知を受けた日に効力を失うものとする。
第5項
前条第二項の規定は、前項の規定により免許状が失効した者について準用する。
地方公務員法第二十八条(降任、免職、休職等)(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
第1項
職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
- 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
- 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
- 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合
- 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
地方公務員法第二十九条の二(懲戒の適用除外)(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
第1項
次に掲げる職員及びこれに対する処分については、第二十七条第二項、第二十八条第一項から第三項まで、第四十九条第一項及び第二項並びに行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定を適用しない。
- 条件附採用期間中の職員
- 臨時的に任用された職員
第2項
前項各号に掲げる職員の分限については、条例で必要な事項を定めることができる。
地方公務員法第二十七条(分限及び懲戒の基準)(令和4年5月11日教育職員免許法改正案成立によって変わらず)
第1項
すべての職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
第2項
職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
第3項
職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。
⑤「教育職員免許法第九条」の「免許状の有効期間・免許状更新講習に関する規定」が全て削除されるから?
教育職員免許法第九条の1(令和4年7月1日から)
第1項
普通免許状は、全ての都道府県(中学校及び高等学校の教員の宗教の教科にあっては、国立学校又は公立学校の場合を除く。以下この条において同じ。)において効力を有する。
第2項
特別免許状は、その免許状を授与した授与権者の置かれる都道府県においてのみ効力を有する。
第4項
削除
第5項
削除
教育職員免許法第九条の二~五(令和7月1日から)
すべて削除
【参考】教育職員免許法第九条の1(令和7月1日以前)
第1項
普通免許状は、その授与の日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日まで、すべての都道府県(中学校及び高等学校の教員の宗教の教科についての免許状にあっては、国立学校または公立学校の場合を除く。次項及び第三項において同じ。)において効力を有する。
第2項
特別免許状は、その授与の日の翌日から起算して十年を経過する日の属する日の年度の末日まで、その免許状を授与した授与権者の置かれる都道府県においてのみ効力を有する。
第4項
第1項の規定にかかわらず、その免許状に係る別表第一から別表第八までに規定する所要資格を得た日、第十六条の二第一項に規定する教員資格認定試験に合格した日又は第十六条の三第二項若しくは第十七条第一項に規定する文部科学省令で定める資格を有することとなった日の属する年度の翌年度の初日以後、同日から起算して十年を経過する日までの間に授与された普通免許状(免許状更新講習の課程を修了した後文部科学省令で定める二年以上の期間内に授与されたものを除く。)の有効期間は、当該十年を経過する日までとする。
第5項
普通免許状又は特別免許状を二以上有する者の当該二以上の免許状の有効期間は、第1項、第2項及び前項並びに事情第4項及び第5項の規定にかかわらず、それぞれの免許状に係るこれらの規定による有効期間の満了の日のうちもっとも遅い日までとする。
⑥「教育職員免許法」から「教育職員免許状更新制に関する規定」が全て削除されるから?
「教育職員免許法」から、ここに挙げたもの以外の「教育職員免許状の有効期間に関する規定」もすべて削除されます。
「教員免許更新制廃止で失効した教員免許が復活します!」まとめ
『「教育職員免許更新制廃止」によって更新講習を受講しなかったために失効した教員免許が復活する理由についての考察』の結果、残念ながら、明確な理由が規定されている条文は私には見付けられませんでした。
しかし、今回の「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律」の成立で、教員免許状更新制がすべて廃止され、教員免許状更新講習がなくなり、教員免許状に有効期間がなくなることは大変喜ばしいことです。
そして、教員免許更新講習を受講しなかったために失効した教員免許までもが復活するということは、思いもよらなかったことです。
私なりに条文を読み解いてみて分かったことがあります。
そもそも大学等では、国が必要と考えた多くの講習を受講し、必要な単位を修得して教員免許状を授与されるのです。
さらに、指導内容や指導方法は日々刷新されていきますから、教員として働いていれば、言われなくても新しい知識や技術を学んでいきます。
そこに更に自腹で受講が必要な講習をどんどん付け足して、それが修得できなければ免許状を失効させられる、というようなシステムはおかしい、ということです。
特に優れている人は少数かもしれませんが、多くの教員がそれなりに仕事をこなし、教員として真面目に働いています。
懲戒免職の処分を受けたり禁錮以上の刑に処せられたり、教育職員たるにふさわしくない非行を行ったりということもなしに、免許状を失効させられたり、免許状の取上げをされたりする理由はないはずです。
今回の「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律」成立により、このような間違ったシステムが一掃され、免許状更新講習を受講しなかったために失効した教員免許までもが復活するということは良いことです。
そして、教育職員免許法から、教員免許更新制に関する条文が跡形もなくなくなりました。
この状況を見て私は、「まるで教員免許更新制に関する記憶をすべて消し去るために、魔法をかけられたみたい。」と感じました!
ハリーポッターでマグル(魔法使いでない一般人)の記憶を消し去って、魔法界の秘密を保持するために働く魔法省の人や、ハリーポッターたちが使う「忘却術」を思い出しました。
呪文は「オブリビエイト(忘れよ)!」。
でも、そんなことでは私の記憶は消し去れません!
私も教員免許更新講習を一度受けましたが、更新講習と更新試験にかかった費用を返してほしいです。
それどころか、あまり興味のない講義を長時間聞くことによって奪われた時間や受けた苦痛、教員免許更新制という、教員に対する信用を失わせる仕組みを作って強行したことに対する対価を、政府に支払ってほしいぐらいです。
なお、教員免許更新制については、「自治体により教育政策はどれぐらい違うのか?/政令指定都市編②~札幌市・福岡市・川崎市~と教員免許更新制廃止~」でも、触れていますので、是非ご覧下さい。
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