- 公立学校教員・公務員の定年延長により2年に1度、教員採用試験と公務員試験の受験倍率が上がる!?(令和3年6月25日修正版)~はじめに
- 今国会で「国家公務員法改正案」成立なるか?
- 「国家公務員法改正案」が令和2年に廃案になった理由は「検察庁法改正案」の「特例規定」
- 令和3年6月4日成立!「国家公務員法等の一部を改正する法律案(国家公務員法改正案)の概要」(令和3年4月13日/内閣人事局)
- 定年延長が採用試験倍率に与える影響
- 2年に1度※定年退職者がいない年ができるため、公務員や公立学校教員の採用試験の倍率が上がる!※令和3年6月25日修正
- 年度別の定年退職者と採用試験受験者※令和3年6月25日修正
- 令和3年度(2021年度)末(令和3年度大学4年生が受験)
- 令和4年度(2022年度)末(令和3年度大学3年生が受験)
- 令和5年度(2023年度)末(令和3年度大学2年生が受験)
- 令和6年度(2024年度)末(令和3年度大学1年生が受験)
- 令和7年度(2025年度)末(令和3年度高校3年生が受験)
- 令和8年度(2026年度)末(令和3年度高校2年生が受験)
- 令和9年度(2027年度)末(令和3年度高校1年生が受験)
- 令和10年度(2028年度)末(令和3年度中学3年生が受験)
- 令和11年度(2029年度)末(令和3年度中学2年生が受験)
- 令和12年度(2030年度)末(令和3年度中学1年生が受験)
- 令和13年度(2031年度)末(令和3年度小学6年生が受験)
- 令和14年度(2032年度)末(令和3年度小学5年生が受験)
- 令和15年度(2033年度)末(令和3年度小学4年生が受験)
- 年度別の定年退職者と採用試験受験者※令和3年6月25日修正
- 2年に1度※定年退職者がいない年ができるため、公務員や公立学校教員の採用試験の倍率が上がる!※令和3年6月25日修正
- 公立学校教員・公務員の定年延長により2年に1度、教員採用試験と公務員試験の受験倍率が上がる!?(令和3年6月25日修正版)~まとめ
公立学校教員・公務員の定年延長により2年に1度、教員採用試験と公務員試験の受験倍率が上がる!?(令和3年6月25日修正版)~はじめに
※令和3年6月5日に公開した記事の内容に誤りがありましたので、修正しました。申し訳ありませんでした。
私が教員として公立学校に勤務していた当時から、「公立学校の教員や公務員の定年が延長される。」と聞いていました。
そして、昭和39年生まれの私も、「定年が延長される年代だな。どうなるんだろう。後5年で定年だと思っていたのに、もっと長く働くことになるの?」と気になっていました。
公立学校の教員や公務員の定年がいつから、何年延長されるのかは、定年を間近に控えた元同僚たちにとっても大きな問題でした。
なぜかというと、「定年まで働くのか、定年前早期退職するのか。」を考えたり、「転勤するか、現在の職場で働き続けるのか。」を決めたりする上で大変重要だからです。
そのため、私の職場でも、職員の間で、たびたび話題になっていました。
しかし、令和2年度通常国会で「国家公務員法改正案」が廃案になり、公立学校教員や地方公務員の定年延長についても、審議が中止になりました。
「公立学校の教員や公務員の定年延長の話は、その後どうなったんだろう。」と気になっていた方も多いと思います。
この「国家公務員法改正案」が、ようやく令和3年度の国会で再提出されることになりました。
今国会で予定通りに成立する※と、令和5年度から適用されます。
※2021年6月4日「国家公務員法改正案」に対し、参議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決・成立しました。同時に、国家公務員と同様に、地方公務員の定年を65歳に引上げるための改正地方公務員法も全会一致で可決・成立しました。
そして、その内容は、公務員や公立学校教員の将来設計のみならず、教員志望の学生の進路決定にも大いに関係があるものです。
そこで、この「国家公務員法改正案」の内容について、今回の記事で紹介します。
今国会で「国家公務員法改正案」成立なるか?
令和3年4月5日の各メディアの報道発表で、
菅義偉首相が、今国会に国家公務員の定年を65歳に引き上げる「国家公務員法改正案」を再提出する方針であることを表明した。
とありました。
各社の報道の内容と、4月6日に、ご自身のFacebookのホームページで、それらの報道の内容に対して誤りを指摘された斉藤よしたか国会議員の話を総合すると、令和2年度の国会に提出された案とは少し変更があり※、
ということです。
4月13日にも閣議決定され、今国会での成立と、「国家公務員全体の定年延長を令和5年度から始めることを目指す」※ということです。※4月5日の報道発表の内容とは、異なります。
国家公務員のみならず、公立学校教員や地方公務員の皆さんにとっても、大いに関係のある法案ですね。
そして、教員を目指している学生の皆さんにとっても、実はものすごく重要な法案なんです。
「国家公務員法改正案」が令和2年に廃案になった理由は「検察庁法改正案」の「特例規定」
令和2年に廃案になった国家公務員法改正案は、10本の個別法案を一括した「束ね法案」で、「検察庁法改正案」が含まれていました。
「検察庁法改正案」は、検事総長や検事長の定年を、内閣や法相の判断によって3年延ばすことができる「特例規定」の内容が含まれていました。
安倍政権が令和2年1月に、黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年を半年延長する異例の閣議決定をしました。
「検察庁法改正案」が成立すると、黒川氏が検事総長に就任する可能性がありました。
野党は「政権による恣意的な検察人事を正当化する特例規定」と法案を批判しました。
この批判が、世論や法曹界にも広まり、結局「国家公務員法改正案」は、廃案になりました。
令和3年6月4日成立!「国家公務員法等の一部を改正する法律案(国家公務員法改正案)の概要」(令和3年4月13日/内閣人事局)
令和3年4月13日に出された「国家公務員法等の一部を改正する法律案(国家公務員法改正案)」は、平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、知識、技術、経験等が豊富な高齢期の職員を最大限に活用するため、定年の65歳引上げについての国会及び内閣に対する人事院の「意見の申出」(平成30年8月)に鑑み、国家公務員の定年を引き上げる、という内容です。※ちなみに、令和2年の法律案と比較すると、実施時期が1年後ろ倒しになっただけで、内容は同じです。
定年の段階的引上げ
現行60歳の定年を段階的に引上げて65歳とする。
ただし、職務と責任の特殊性・欠員補充の困難性を有する医師等については、66歳から70歳までの間で人事院規則により定年を定める。
※定年の引上げに併せて、現行の60歳定年退職者の再任用制度は廃止(定年の段階的な引上げ期間中は、定年から65歳までの間の経過措置として現行と同様の制度を存置)
定年年齢の段階的な引上げ方法(生まれた年度別定年年齢)※令和3年6月25日修正
現行/令和3年度~4年度に60歳になる人(昭和36年度、昭和37年度生まれ)
60歳
令和5年度に60歳になる人(昭和38年度生まれ)
61歳
令和6年度に60歳になる人(昭和39年度生まれ)
62歳
令和7年度に60歳になる人(昭和40年度生まれ)
63歳
令和8年度に60歳になる人(昭和41年度生まれ)
64歳
令和9年度に60歳になる人(昭和42年度生まれ以降)
65歳
役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入
60歳に達した職員の給与
人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、職員の俸給月額は、職員が60歳に達した日後の最初の4月1日(特定日)以降、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。
役職定年により降任、降給を伴う異動をした職員の俸給月額は、異動前の俸給月額の7割水準とする。
60歳に達した職員の給与に関する検討条項
高齢期における多様な職業生活設計の支援
60歳以後定年前に退職した者の退職手当
60歳に達した日以降に、定年前の退職を選択した職員が不利にならないよう、当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定する。
定年前再任用短時間勤務制の導入
60歳に達した日以降定年前に退職した職員を、本人の希望により、短時間勤務の官職に採用(任期は65歳まで)することができる制度を設ける。
その他
定年延長が採用試験倍率に与える影響
2年に1度※定年退職者がいない年ができるため、公務員や公立学校教員の採用試験の倍率が上がる!※令和3年6月25日修正
年金受給開始年齢が65歳に移行している現在、公務員や公立学校教員は、60歳の定年後も働き続ける人が増えています。
再任用制度を利用して、現役のときとほとんど同じ勤務内容、1年ごとの契約、現役時の60%程度の給与額という条件で勤務を続けたり、短時間勤務の臨時的任用職員となり、関連機関などで勤務を続けたりすることが多いです。
しかし、今後定年が延長されると、60歳以前と同様の勤務を続ける人の場合、給与額が現在行われている再任用制度より上がり、現役時代の7割程度もらえるようになります。
そして、現在行われている再任用制度よりも安定した立場で勤務を続けることができるようになります。
このため、当然のことながら、60歳以降に、現役のときとほとんど同じ勤務内容で働き続ける人がもっと増えるでしょう。
そして、重要なことは、令和13年度(2031年度)末に65歳定年制が完成するまでの間、2年に1回ずつ※、定年退職者がない年ができてしまうことです。※令和3年6月25日修正
それは、言い換えると、2年に1回ずつ※、新規採用者数が少ないか、ほとんどない年ができる、ということになります。
そう考えると、現在、教員不足や採用試験の倍率の低下が叫ばれていますが、ひょっとすると、その心配はないのかもしれません。
そして、逆に、教員採用試験の倍率が上がり、教員志望の学生が、就職浪人したり、進路希望を変更したりするなどの事態が起こるかもしれません。
残念ながら、教員の高齢化もますます進むことでしょう。
年度別の定年退職者と採用試験受験者※令和3年6月25日修正
令和3年度(2021年度)末(令和3年度大学4年生が受験)
昭和36年度(1961年度)生まれ:60歳
令和4年度(2022年度)末(令和3年度大学3年生が受験)
昭和37年度(1962年度)生まれ:60歳
令和5年度(2023年度)末(令和3年度大学2年生が受験)
定年退職者なし
令和6年度(2024年度)末(令和3年度大学1年生が受験)
昭和38年度(1963年度)生まれ:61歳
令和7年度(2025年度)末(令和3年度高校3年生が受験)
定年退職者なし
令和8年度(2026年度)末(令和3年度高校2年生が受験)
昭和39年度(1964年度)生まれ:62歳
令和9年度(2027年度)末(令和3年度高校1年生が受験)
定年退職者なし
令和10年度(2028年度)末(令和3年度中学3年生が受験)
昭和40年度(1965年度)生まれ:63歳
令和11年度(2029年度)末(令和3年度中学2年生が受験)
定年退職者なし
令和12年度(2030年度)末(令和3年度中学1年生が受験)
昭和41年度(1966年度)生まれ:64歳
令和13年度(2031年度)末(令和3年度小学6年生が受験)
定年退職者なし
令和14年度(2032年度)末(令和3年度小学5年生が受験)
◎これ以降毎年定年退職者あり
昭和42年度(1967年度)生まれ:65歳
令和15年度(2033年度)末(令和3年度小学4年生が受験)
昭和43年度(1968年度)生まれ:65歳
公立学校教員・公務員の定年延長により2年に1度、教員採用試験と公務員試験の受験倍率が上がる!?(令和3年6月25日修正版)~まとめ
この記事で書いたように、「国家公務員法改正案」及び「改正地方公務員法」が、令和3年6月4日の国会で可決され、令和2年の提案よりも一年遅れの令和5年4月1日に施行されることに決定しました。
令和5年度中に60歳になる人から順次定年が延長されます。
そして、公務員や教員には、令和5年度の定年退職者がなくなります。
このことは、学生さんや教員や公務員を希望している人にとって大きな問題です。
そして、公務員に65歳定年制が採用されると、一般企業でも今以上に65歳定年制が採用される企業が増えるでしょう。
新規採用者予定なし、という企業がしばらく増えるかもしれません。
おそらく就職活動の形も、今後、いろいろ変化していくことでしょう。
学生の皆さんや転職を希望している方は、今後の動向に注意が必要です。
なお、この記事以外にも、教員や公務員の定年退職に関する記事を書いています。退職金や定年前早期退職、退職後の健康保険制度、退職教職員組合、退職金の安全な運用の仕方、退職後の税金などについて、詳しく書いてあります。他のサイトにない、お得な情報も満載です。是非ご覧下さい。
コメント
遅すぎます。定年延長がもっと早く可決してほしかったです。再任用で一年ごとの採用、給料ボーナス半減手当もカット、仕事は同じ。これから延長するする人がうらやましいです。
はとちゃんさん、コメントどうもありがとうございます。
再任用の方も退職前とほぼ同じ内容の仕事を任され、1年ごとの契約、転勤もあり、給料も現役時の6割程度と聞きます。
再任用の方は皆さん、理不尽な思いをされているのではないでしょうか。
そして、私の自治体では、再任用でなく、敢えて再任用よりも給与の高いフルタイムの会計年度任用職員に就く方が多いです。
しかし、定年が延長され、転勤や手続きがなくなり、手当ての種類の変更もなく、給与の3割減だけで働き続けることができるので、60歳を超える教員は、現在より多くなることでしょう。
はとちゃんさんは、60歳を超えてなお、働いてみえるということで、尊敬します。
給料面等でつらいと思いますが、今後も活躍されることを願っています。