はじめに
今までの記事「小学校担任教師の多忙な毎日を、元教師の私が、経験を交えて公開します/1日の過ごし方」などでは、小学校教師の仕事の内容について書いてきた。
また、「いつ退職するのがお得か?公立学校教員の退職(定年前早期退職・定年退職等)の種類と手続きの仕方①」などでは、公立学校の教員の退職の手続きについて書いてきた。
そんな中、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、学校教育での少人数学級の有効性がにわかに脚光を浴びるようになった。
そして、教育関係者や政府が、少人数学級に対して、今までになく前向きな考えを示していることに注目が集まっている。
しかしながら、少人数学級の実現に向けては、もう何十年もの間、文部科学省は、毎年提案をし続けている。
それなのに、どうして遅々として少人数学級は進まなかったのか、歴史を紐解いて考えてみたいと思う。
さしあたって、この記事では、令和2年7月21日現在の教育関係者、文科省、政府の見解について、述べていく。
この記事を読んでほしい人
- 現職の教員
- 教育関係者
- 保護者の方
- 教育問題に興味がある人
この記事を読むと分かること
- コロナ禍の現在、少人数学級の推進に対して教育関係者・文科省・政府はどのような意向であるのか(令和2年7月21日現在)
コロナ禍の下、内閣や教育関係者は、少人数学級に対してどのような考えを示しているか
地方3団体
令和2年7月3日全国知事会、全国市長会、全国町村会の地方3団体が萩生田文部科学省大臣に、新型コロナウイルス感染の再拡大に備え、少人数学級に必要な教員確保を求める提言書を手渡した。
教育研究者たち
また、新型コロナウイルスの感染症を防ぎながら、子どもたちが伸び伸びと学べる環境を整えるには少人数学級が必要だとして、全国の教育研究者たちが、小中学校と高校での少人数学級の早期導入を求める署名活動を始めた。
経済財政実行委員会の閣議決定
経済財政実行委員会の、令和2年7月17日の「経済財政運営と改革の基本方針2020について」の閣議決定の中の、(1)課題設定・解決力や想像力のある人材の育成①初等中等教育改革等の記載の中に、
全ての子どもたちの学びを保障するために、少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備やICTの活用など、新しい時代の学びの環境の整備について関係者間で丁寧に検討する
とあり、「少人数学級」とは記載されていないが、「少人数による指導体制」の計画的な整備を検討することが書いてある。
以下に、初等中等教育に関連する部分を抜粋した。
教育再生実行会議
政府の「教育再生実行会議」では、上限が40人(小学1年は35人)となっている小中学校の学級をより小規模にすることも取り上げる考えを示した。
また、会議の中で萩生田文部科学大臣は、少人数学級の計画的な整備に向けて検討していく考えを示した。
新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会
さらに、文部科学省の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」では、コロナ禍の下、身体的距離を確保するために、少人数編成が必要であるという考えが示された。
また、一人一台端末の実現のために、端末が置ける机の広さ、その机を置くことができる教室環境についても話し合われた。
まとめ
財務省が関係する「経済財政実行会議」のみ、「少人数編成」や「少人数学級」という言葉を使用していない点に着目して欲しい。
「少人数によるきめ細かな指導」という言葉を使っている。
これは、学級編成によるものでなくても、習熟度別授業などでも実現できる。
この状況では、文科省や地方3団体や教育関係者が少人数学級の早期実現を提案したとしても、財源確保が難しいことを財務省が実現を渋り、少人数学級の早期実現がなくなる可能性も十分にあると考えられる。
次の記事「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か~文部科学省はずっと提案し続けている!②~小1の35人学級実現と、小2の35人学級のための教員の加配措置の実現まで~」からは、長い歴史の中で、文部科学省が提案しても、少人数学級がなかなか進まなかった経緯を、複数の記事に分けて書いていく。
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