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はじめに
私は、33年間、ある政令指定都市の公立小中学校の教師として働いてきました。
私の自治体では、長年、事務職員の仕事は、職員の給与や諸手当に関する業務と、学校の施設の修理や備品、消耗品等に関する予算の管理・執行の業務のみでした。
私の自治体の教師たちは、就学援助、学籍、教科書、調査及び統計、文書管理、給食費会計、学年会計、PTA会計等の業務を、当たり前のように担ってきました。
退職後、時間に余裕ができ、教師の働き方に関して調べるようになって、自治体によって、教師が担ってきた、授業以外の業務が大きく違うことを初めて知り、驚きました。
私は、長年、本来教師が担うべきでない業務を担わされることで、莫大な時間と労力と使い、気苦労を重ねてきました。
それによって、授業研究や成績処理などの本来の業務が疎かになってしまうことも多々有り、悔しい思いをしてきたのです。
「学校の働き方改革」が叫ばれるようになって久しいですが、今回は、現在行われている「学校の働き方改革」に関する施策についてまとめてみました。
そして、「実際に『学校の働き方改革』が実現するのか」について、今後、いくつかの記事に分けて考えていきたいと思います。
標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について
先日(令和2年7月17日)に、
「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」
「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」
という2つの通知が、文部科学省から都道府県・指定政令都市教育委員会宛に出されました。
これらは、平成31年1月25日に出された「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」を踏まえ、教諭等の標準的な職務及び事務職員の標準的な職務の明確化を、徹底させるために通知されました。
平成31年1月の答申では、これまで学校が担ってきた代表的な業務を、「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」に分けるように示されていました。
これらを、各地方自治体の教育委員会において、明確な学校管理規則として示すため、参考例として、教諭と事務職員の仕事を分類したものが今回通知された文書です。
教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について
「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等」(標準職務例)が示された趣旨は、
教諭等の標準的な職務の明確化を図り、教諭等がその専門性を発揮し本来の職務に集中できるようにすること
とあります。
そして、教諭等をはじめ学校に置かれる職の具体的な職務内容を定める際には、
学校管理規則等に位置づけられる標準的な職務を踏まえつつ、学校規模、教諭等の配置数や経験年数、各学校・地域の実情等についても十分に考慮されるようお願いします。
と書かれています。
さらに、
標準職務例に具体的な職種として掲げていない職務であっても、学校規模、教職員の配置数や経験年数、各学校・地域等の実情に応じて教諭等が担うことが必要と校長が認める業務については、校務分掌に位置付けることが可能である
とも書いてあります。
つまり、最終的には、校長が教諭の職務を決める権限があるということです。
ですので、正直、今までとあまり変わらないようにも思います。
事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について
「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について(標準職務例)」が示された趣旨は、
事務職員が学校組織における唯一の総務・財務等に通ずる専門職として、校務運営への参画を一層拡大し、より主体的・積極的に参画すること
とあります。
この通知に示された事務職員の職務には、大きく分けて、
事務職員の標準的な職務
他の教職員との適切な業務の連携・分担の下、その専門性を生かして、事務職員が積極的に参画する職務
の2種類が示されています。
「6.学校徴収金の徴収・管理について」では、
学校徴収金の徴収・管理については、地方公共団体が担うことが望ましく、
学校以外が担うべき業務である
仮に、学校が担わざるを得ない場合には、事務職員等の業務とする必要がある
と、示されています。
ただし、「4.適切な校務分掌について」で、
校長は、学校規模、教職員の配置数や経験年数、各学校・地域等の実情に応じて、具体的に校務の分掌を定める必要がある
とあり、参考例はあるものの、校長の考え方で、誰が担うべき職務なのかを決めることができるようです。
また、「3.事務職員が他の教職員との適切な業務の連携・分担の基、積極的に参画する職務等について(別表第二)」で、
「積極的に参加する職務の内容及びその例」は、学校規模、事務職員の職務段階や経験年数、各学校・地域等の実情に応じて、職務監督権者の判断で、事務職員の標準的な職務の内容として位置づけること
とあり、柔軟性のある表現になっています。
学校は、すぐに変われるのか
「これで、やっと『小中学校教諭の仕事』、『事務職員の仕事』、『それ以外の人の仕事』の3分類が明確化される。教諭の負担が軽減され、働き方改革が進む。」
と喜ぶ教諭の方も多いでしょう。
業務が明確化された以上、長年の慣習や地域の事情と言わず、きちんと教諭の手から離れるように施策をしてほしいものです。
しかし、この通知から読み取れるのは、結局、
あくまで、参考例であって、誰がその職務を担うかは、各教育委員会の作成する学校管理規則を参考にしながらも、最終的には、校長が決めること
ということです。
まとめ
令和2年7月17日に、「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」、「事務職員の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」の2つの文書が通知されました。
これにより、教諭等の標準的な職務及び事務職員の標準的な職務の明確化が、徹底されたかのように感じる方が多いでしょう。
しかし、実際の現場での様子はどうでしょう。
今のところ、あまり変化がない、という学校も多いのではないでしょうか。
次回「学校における働き方改革は可能か②~改正労働基準法~」からは、学校における働き方改革に対する政府の施策の歴史について調べ、今後、「学校における働き方改革は可能か」について、更に考察を進めていきたいと思います。
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