はじめに
前回の「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か~文部科学省はずっと提案し続けている!⑥~平成30年度予算~」の記事では、平成30年度の予算について説明した。
この中で、平成30年度予算では、少人数学級の実現に向けた施策は皆無であったこと、「学校における働き方改革に係る緊急提言」や「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の発出、中学校の部活動指導員のための予算措置など、学校における働き方改革のための施策は進んだことに触れた。
今回は、平成31年度(令和元年度)予算で、文部科学省が少人数学級実現に向けてどんな提案をしたか調べ、自分なりの見解を書いたので見て欲しい。
結論を先に言うと、平成30年度同様に、平成31年度(令和元年度)予算でも、少人数学級の実現のための予算措置はなかった。
しかし、平成30年度の予算措置同様に、学校における働き方改革を推進するための施策が少しずつではあるが進んだ。
例えば、土日に部活動指導業務を行った教職員への報酬を支給する条件として、「土日の部活動時間を3時間程度とすること」などを自治体へ示したのであった。
この記事を読んでほしい人
- 現職の教員
- 教育関係者
- 保護者の方
- 教育問題に興味がある人
この記事を読むと分かること
- 少人数学級がどのようにして進められてきたのかの経緯(平成31年度【令和元年度】予算)
文部科学省平成31年度(令和元年度)概算要求
義務教育費国庫負担金
平成31年度の文部科学省概算要求は、前年度同様に、「新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築」という言葉がテーマに含まれた。
義務教育費国庫負担金予算として、
教職員定数の改善 +56億円(2,615人)
基礎定数化に伴う当然増(通級による指導等) +5億円(+246人)
が要望された。
「教職員定数の改善」の中に、「学校における働き方改革」関連として、
学校の指導体制の充実ー教員の持ちコマ数軽減による教育の質の向上ー
とあり、それには、
小学校専科指導の充実(小学校英語教育の早期化・教科化に伴う一定の英語力を有し、質の高い英語教育を行う専科指導教員の充実)+1,000人
が含まれる。
また、
基礎定数化に伴う当然増(通級指導による指導等)
が要求された。
これは、平成29年度に行われた、
平成29年度~38年度の10年間で、加配定数(平成28年度約64,000人)の約3割を基礎定数化
するという、
義務標準法の改正
により、約束されたものである。
部活動手当の支給要件の見直しに関しては、
土日の4時間程度を土日3時間程度に見直し
とある。
その他
中学校における部活動指導員の配置
部活動指導員として、
適切な活動時間や休養日の設定など部活動の適正化を進めている教育委員会を対象に
指導する部活動に係る専門的な知識・技能を有する人材を
12,000人(1,302百万円)
配置するための予算を要求した。
つまり、部活動の活動時間などのガイドラインを守っていなければ、その教育委員会には、部活動指導員が配置されない、ということである。
学校現場における業務の適正化
学校現場における業務の適正化に係る費用として、前年度は11億円要求していたが、平成31年度(令和元年度)概算要求では、1億2千百万円と大幅に引き下げた。
新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築(~2026年度までの8ヵ年計画)
「新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築」(平成31年度【令和元年度】概算要求)では、更に、予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し(~2026年度までの8ヵ年計画)を策定した。
ここには、平成38年度までの8ヵ年の改善予定数として、教職員定数を、合計で18,910人増やすことが計画されている。
前年度に提案したが、採択されなかった案の再提案である。
令和元年度予算
財務省との折衝や国会での審議を得て、予算が成立した。
文部科学省令和元年度概算要求と令和元年度予算の比較
義務教育費国庫負担金
教職員定数
教職員定数の改善については、概算要求から半減して予算が決定される結果となった。
小学校専科指導の充実と、基礎定数化に係る予算は、概算要求通り決定された。
しかし、少人数学級へ使用可能な加配教員数は、改善されなかった。
費目 | 概算要求数 | 予算数 | 差 |
---|---|---|---|
小学校専科指導の充実 | +1,000人 | +1,000人 | +-0人 |
中学校生徒指導体制の強化 | +500人 | +50人 | -450人 |
学校総務・財務業務の軽減のための共同学校事務体制の強化 | +400人 | +30人 | -370人 |
主幹教諭の配置充実による学校マネジメント機能強化 | +100人 | +30人 | -70人 |
(いじめ・不登校等の未然防止・早期対応等の強化/再掲) | (+500人) | (+50人) | (-450人) |
貧困等に起因する学力課題の解消 | +500人 | +50人 | -450人 |
「チーム学校」の実現に向けた学校の指導体制の基盤整備(養護教諭・栄養教諭等) | +40人 | +20人 | -20人 |
統合校・小規模校への支援 | +75人 | +30人 | -45人 |
平成29年の義務標準法改正に伴う基礎定数化関連(通級による指導等) | +246人 | +246人 | +-0人 |
合計(再掲除く) | +2,861人 | +1,456人 | (-1,405人) |
部活動手当の支給要件の見直し
部活動手当は、働き方改革で活動時間が減り、手当は、時給換算では変わらなかった。
支給要件が、土日4時間程度で3,600円から土日3時間程度で2,700円に変わった。
概算要求 | 予算 |
支給要件の見直し/土日4時間程度(3,600円)を土日3時間程度に見直し(時給900円) | 土日3時間程度2,700円(時給900円) |
中学校における部活動指導員の配置
中学校における部活動指導員の配置は、要求の約4分の3に抑えられた。
概算要求額 | 概算要求数 | 予算額 | 予算数 |
13億2百万円 | 12,000人 | 10億円 | 9,000人 |
予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し(~2026年度までの8ヵ年計画)
平成38年度までの8ヵ年の改善予定数として、教職員定数を、合計で18,910人増やすことを要求したが、前年に引き続き採択されなかった。
学校現場における業務の適正化
1億2千百万円の要求に対し、1億3百万円で決定され、昨年度比で、百万円の減となった。
まとめ
平成31年度(令和元年度)文部科学省予算では、「学校における働き方改革」促進の意味で、多少の進展は見られたものの、「予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し(~2026年度までの8ヵ年計画)」が前年度に引き続き不採用となる等、少人数学級推進に向けた成果はなかった。
次回「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か~文部科学省はずっと提案し続けている!⑧~令和2年度予算~」では、令和2年度文部科学省予算についてお伝えする。
そして、「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か?」の問いに対する、私なりの結論を出すので、ぜひ読んでほしい。
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