地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか①~定年前再任用短時間勤務制~

頑張る高齢者 再任用制度
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  1. はじめに
  2. 国家公務員法改正案(国家公務員法等の一部を改正する法律案)とは?
    1. 「国家公務員法改正(国家公務員法等の一部を改正する法律)」理由
    2. 国家公務員法改正案(国家公務員法等の一部を改正する法律案)の内容
      1. 定年の段階的引上げ
      2. 定年年齢の段階的な引上げ方法(生まれた年度別定年年齢)
        1. 現行/令和3年度~4年度に60歳になる人(昭和36年度、昭和37年度生まれ)
        2. 令和5年度に60歳になる人(昭和38年度生まれ)
        3. 令和6年度に60歳になる人(昭和39年度生まれ)
        4. 令和7年度に60歳になる人(昭和40年度生まれ)
        5. 令和8年度に60歳になる人(昭和41年度生まれ)
        6. 令和9年度に60歳になる人(昭和42年度生まれ以降)
      3. 役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入
      4. 60歳に達した職員の給与
      5. 60歳に達した職員の給与に関する検討条項
      6. 高齢期における多様な職業生活設計の支援
        1. 60歳以後定年前に退職した者の退職手当
        2. 定年前再任用短時間勤務制の導入
      7. その他
      8. 情報提供・意思確認制度
    3. 役職定年制の特例(国家公務員法第81条の2~第81条の5)
      1. 管理監督職勤務上限年齢による降任等の特例(特例任用)
      2. 特例任用の再延長
  3. 地方公務員法改正案(地方公務員法の一部を改正する法律)とは?
    1. 「地方公務員法改正」(地方公務員法の一部を改正する法律)理由
    2. 地方公務員法改正案(地方公務員法の一部を改正する法律)の内容
      1. 役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入
      2. 定年前再任用短時間勤務制の導入
      3. 情報提供・意思確認制度の新設
    3. その他
      1. 給与に関する措置
  4. 地方公務員の定年引上げの実施に向けた疑問に対する総務省の回答(「定年引上げの実施に向けた質疑応答(第4版/令和4年2月15日)」より)
    1. 定年の引上げとこれに伴う諸制度の施行に向け各地方公共団体が実施すべき事項
      1. 1.条例・規則に規程すべき内容を確定するため、制度に関する以下のような検討
      2. 2.以上の検討内容を条文化し、条例、人事委員会規則、規則等の改正
      3. 3.そのほか、制度運用に受けた準備
      4. 4.議案を上程する時期
    2. 定年の引上げ時期
      1. 地方公務員の定年の段階的な引上げ時期
        1. ※「地方公務員の定年の段階的な引上げ表」の説明
          1. 暫定再任用職員
          2. 公務員年金支給開始年齢
    3. 定年前再任用短時間勤務制
      1. 定年前再任用短時間勤務制を導入する理由
      2. 60歳に達する前に退職した元常勤職員の定年前再任用短時間勤務
      3. 60歳以降に退職し、一定の期間をおいた者の、定年前再任用短時間勤務
      4. 定年前再任用短時間勤務職員の任期の終期
      5. 定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間
    4. 定年前再任用短時間勤務職員の選考
      1. 定年前再任用短時間勤務職員の選考
      2. 定年前再任用短時間勤務職員の採用日
    5. 定年前再任用短時間勤務制と他の制度との関係
      1. 定年前再任用短時間勤務制と高齢者部分休業制度との違い
  5. まとめ

はじめに

「定年前再任用短時間勤務制」とは、令和5年4月1日から始まる制度です。

60歳以降、定年退職年齢に達するまでの期間において、現行の「再任用短時間勤務制」のかわりになるものです。

一方、定年退職年齢に達した後65歳までは、現行の「再任用短時間勤務制」は、「暫定再任用短時間勤務制」と名称が変わります。

「定年前再任用短時間勤務制」と「再任用短時間勤務制」と「暫定再任用短時間勤務制」の違いについては、「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか④~公務員は定年退職後は必ず再任用されるの?~」で詳しく説明していますので、ご覧下さい。

令和3年6月4日、「国家公務員法等の一部を改正する法律(国家公務員法改正案)」と、「地方公務員法の一部を改正する法律(地方公務員法改正案)」が成立しました。

令和5年4月1日から施行されます。

これにより、国家公務員と地方公務員(公立学校の教職員を含む)の定年を段階的に引き上げることになります。(改正案が成立した経緯については、「公立学校教員・公務員の定年延長により2年に1度、教員採用試験と公務員試験の受験倍率が上がる!?(令和3年6月25日修正版)」でも触れています。是非お読み下さい。)

この決定により、令和5年度に60歳を迎える人から、定年が段階的に延長され、60歳以後の勤務条件が60歳前とは変わることになります。

今回の記事では、まず、国家公務員法改正案についておさらいしたあと、地方公務員法改正案について説明します。

これらにより、

  • 定年を段階的に引き上げる方法
  • 定年延長に伴って制定された新たな制度
  • 役職定年制の特例
  • 給与
  • 退職金

などについて知ることができます。

その後、「地方公務員の定年引上げの実施に向けた疑問に対する総務省の回答」(「定年引上げの実施に向けた質疑応答(第4版/令4年2月15日)」)の内容を紹介します。

この「地方公務員の定年引上げの実施に向けた疑問に対する総務省の回答」では、

  • 各地方公共団体が実施すべき事項
  • 今回初めて導入される「定年前再任用短時間勤務制」

について詳しく分かる部分を取り上げていきたいと思います。

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国家公務員法改正案(国家公務員法等の一部を改正する法律案)とは?

「国家公務員法改正(国家公務員法等の一部を改正する法律)」理由

  • 平成20年に制定された国家公務員制度改革基本法(平成20年法律第68号)においても、「職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするため」として、雇用と年金の接続の有用性に留意して定年を段階的に65歳に引き上げることについて検討する旨規定されていた。(第10条第3号ロ)”(国立国会図書館/調査と情報/No.1059「国家公務員の定年引上げをめぐる議論p.5」より引用)
  • 定年の65歳引上げについての国会及び内閣に対する人事院の「意見の申出」(平成30年8月)があった。
  • 平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、豊富な知識、技術、経験等を持つ高齢期の職員に最大限活躍してもらうため

国家公務員法改正案(国家公務員法等の一部を改正する法律案)の内容

定年の段階的引上げ

現行60歳の定年を段階的に引上げて65歳とする。

ただし、職務と責任の特殊性・欠員補充の困難性を有する医師等については、66歳から70歳までの間で人事院規則により定年を定める。

定年の引上げに併せて、現行の60歳定年退職者の再任用制度は廃止(定年の段階的な引上げ期間中は、定年から65歳までの間の経過措置として現行と同様の制度を存置)

定年年齢の段階的な引上げ方法(生まれた年度別定年年齢)

現行/令和3年度~4年度に60歳になる人(昭和36年度、昭和37年度生まれ)

60歳

令和5年度に60歳になる人(昭和38年度生まれ)

61歳

令和6年度に60歳になる人(昭和39年度生まれ)

62歳

令和7年度に60歳になる人(昭和40年度生まれ)

63歳

令和8年度に60歳になる人(昭和41年度生まれ)

64歳

令和9年度に60歳になる人(昭和42年度生まれ以降)

65歳

役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入

  • 組織活力を維持するため、管理監督職(指定職(※)及び俸給の特別調整額※)適用官職等)の職員は、60歳(事務次官等は62歳)の誕生日から同日以降の最初の4月1日までの間に、管理監督職以外の官職に異動させる。
  • 役職定年による異動により公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限り、引き続き管理監督職として勤務させることができる特例を設ける。

(※)指定職とは……一般職の公務員の職種による区分の一。国家公務員では、事務次官、外局の長、試験所・研究所・病院・療養所の長、その他の官職を占める職員。地方公務員では東京都の局長などがこれに該当する。

(※※)俸給の特別調整額とは……管理又は監督の地位にある職員(以下「管理職」という)について、その特殊性に基づいて支給される手当。

60歳に達した職員の給与

人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、職員の俸給月額は、職員が60歳に達した日後の最初の4月1日(特定日)以降、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。

役職定年により降任、降給を伴う異動をした職員の俸給月額は、異動前の俸給月額の7割水準とする。

60歳に達した職員の給与に関する検討条項

  • 60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、国家公務員の給与制度について、人事院において公布後速やかに行われる昇任・昇格の基準、昇給の基準、俸給表などについての検討の状況を踏まえ、定年引上げ完成の前(令和13年3月31日まで)に所要の措置を順次講ずること 
  • 公布後速やかに評語の区分など人事評価について検討を行い、施行日までに所要の措置を講ずること

高齢期における多様な職業生活設計の支援

60歳以後定年前に退職した者の退職手当

60歳に達した日以降に、定年前の退職を選択した職員が不利にならないよう、当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定する。

定年前再任用短時間勤務制の導入

60歳に達した日以降定年前に退職した職員を、本人の希望により、短時間勤務の官職に採用(任期は65歳まで)することができる制度を設ける。

その他

  • 検察官、防衛省の事務官等についても、同様に定年の引上げ等を行う。
  • 施行日:令和5年4月1日
国家公務員法等の一部を改正する法律案の概要(令和3年通常国会)定年前再任用短時間勤務制の導入
「国家公務員法等の一部を改正する法律案の概要(令和3年通常国会)」内閣官房ホームページより

情報提供・意思確認制度

前掲の資料の「国家公務員法等の一部を改正する法律案の概要」には、記載がありませんが、「地方公務員法改正案」同様に、国家公務員改正案にも、「情報提供・意思確認制度」の記載があります。【国家公務員法附則第9条】

  • 任命権者は、職員が60歳(※)に達する年度の前年度に、60歳以降の任用・給与・退職手当の制度に関する情報提供を行った上で、職員の60歳以後の勤務の意思確認を行います。(※)現行の特例定年(※※)の職員に相当する職員として人事院規則で定める職員については、当該特例定年の年齢 (※※)特例定年とは……職務と責任の特殊性・欠員補充の困難性により、定年を60歳とすることが適当でないため、公務員の一部の職種で原則の定年年齢(60歳)とは異なる定年年齢を定めること(国家公務員の例)⇒【病院・療養所・診療所等の医師、歯科医師→65歳】【守衛、用務員等→63歳】【特殊な官職等(事務次官、在外公館に勤務する職員、迎賓館長等)→61歳~65歳】
情報提供・意思確認制度
国家公務員法等の一部を改正する法律 改正の概要~定年の引上げ等について~令和5年4月1日施行/内閣官房内閣人事局」より一部抜粋

役職定年制の特例(国家公務員法第81条の2~第81条の5)

管理監督職勤務上限年齢による降任等の特例(特例任用)

任命権者は、管理監督職を占める職員について、管理監督職勤務上限年齢による降任等(他の官職への異動)により、以下の1~3のいずれかに該当するため、公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限り、当該職員を引き続き管理監督職として勤務させることができます。

  1. 職員の職務の遂行上の特別の事情がある場合
  2. 職員の職務の特殊性によりそのポストの欠員の補充が困難となる場合
  3. 当該管理監督職が特定の管理監督職グループ(※)に属しており、当該グループ内の欠員の補充が困難となる場合 (※)職務の内容が相互に類似する複数の管理監督職(指定職を除く。)で、これらの欠員を容易に補充することができない年齢別構成その他の特別の事情がある管理監督職として人事院規則で定めるもの

特例任用の再延長

任命権者は、上記要件が継続している場合には、人事院の承認を得て、1年以内の期間内で再延長ができます。(1と2の要件の場合は最長3年、3の要件の場合は定年退職日まで(最長5年))

役職定年制の特例
「国家公務員法の一部を改正する法律 改正の概要~定年の引上げ等について~令和5年4月1日施行/内閣官房内閣人事局」より一部抜粋
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地方公務員法改正案(地方公務員法の一部を改正する法律)とは?

「地方公務員法改正」(地方公務員法の一部を改正する法律)理由

  • 地方公務員の定年は、地方公務員法第28条の2第2項において、「国の職員につき定められている定年(60歳(医師65歳))を基準として条例で定めるものとする。」と規定されている。
  • 「国家公務員法等の一部を改正する法律」の成立により、国家公務員の定年が引き上げられると地方公務員の定年についても連動して引き上げられる(各地方公共団体が条例改正で対応)。
  • その他関係制度について、国家公務員において改正されると、別途地方公務員法も改正が必要となる。

地方公務員法改正案(地方公務員法の一部を改正する法律)の内容

役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入

組織の新陳代謝を確保し、組織活力を維持するため、役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)を導入する。

  • 役職定年の対象範囲及び役職定年年齢は、国家公務員との権衝を考慮した上で、条例で定める。
  • 役職定年の対象範囲は、管理職手当の支給対象となっている職を、役職定年年齢は、60歳を基本とする。
  • 職員の年齢別構成等の特別の事情がある場合には例外措置を講ずることができる

定年前再任用短時間勤務制の導入

60歳に達した日以降定年前に退職した職員について、本人の希望により、短時間勤務の職に採用(任期は65歳まで)することができる制度を導入する。

情報提供・意思確認制度の新設

任命権者は、当分の間、職員が60歳に達する日の前年度に、60歳以後の任用、給与、退職手当に関する情報を提供するものとし、職員の60歳以後の勤務の意思を確認するよう努めるものとする。

その他

給与に関する措置

国家公務員の給与及び退職手当について以下の措置が講じられることを踏まえ、地方公務員についても、均衡の原則(地方公務員法第24条)に基づき、条例において必要な措置を講ずるよう要請する。

  • 当分の間、60歳を超える職員の給料月額は、60歳前の7割水準に設定する。
  • 60歳に達した日以後に、定年前の退職を選択した職員が不利にならないよう、当分の間「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定する。
地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)の概要 定年前再任用短時間勤務制
「地方公務員法の一部を改正する法律(令和3年法律第63号)の概要」総務省ホームページより
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地方公務員の定年引上げの実施に向けた疑問に対する総務省の回答(「定年引上げの実施に向けた質疑応答(第4版/令和4年2月15日)」より)

定年の引上げとこれに伴う諸制度の施行に向け各地方公共団体が実施すべき事項

自治体職員
自治体職員

定年の引き上げとこれに伴う諸制度の施行に向け、各地方公共団体はどのようなことを実施する必要があるのですか

1.条例・規則に規程すべき内容を確定するため、制度に関する以下のような検討

  • 65歳の定年年齢を適用することが著しく不適当な職員の類型があるかどうか
  • 管理職手当支給対象職以外の職で管理監督職と同等に取り扱うべきもの(「準ずる職」(地方公務員法第28条の2第1項本文))の検討
  • 60歳の管理監督職勤務上限年齢を適用することが著しく不適当な職があるかどうかの検討
  • 特例任用に関する条例の規定の検討
  • 昇任管理や幹部人事管理のあり方、60歳超職員の配置等を踏まえ、特定管理監督職群とすべき職があるかどうかの検討
  • 定年前再任用短時間勤務制、高齢者部分休業制度に関する検討
  • 給与・退職手当に関する条例の規定の検討

2.以上の検討内容を条文化し、条例、人事委員会規則、規則等の改正

3.そのほか、制度運用に受けた準備

  • 定年引上げ期間中の退職手当など、給与に係る予算の推計
  • 新規採用等も含めた中長期的な採用・退職管理のあり方の検討
  • 令和5年度60歳到達職員への情報提供・意思確認(令和4年度中)
  • 令和6年度新規採用の方針決定
  • 人事・給与等システムの改修
定年引上げに伴う60歳超の職員の役職及び給与の取扱い(国家公務員における規定)
「地方公務員の定年引上げの論点に関する説明会(令和元年10月23日実施/総務省公務員部)」資料「定年引上げに伴う60歳超の職員の役職及び給与の取扱い(国家公務員における規定)」より引用

4.議案を上程する時期

  • 条例改正については、令和5年度60歳到達職員への情報提供・意思確認を令和4年度中の適切な時期に行う必要があり、その前に条例の規定を整備する必要があることから、できるだけ早期に(令和4年の3月議会又は6月議会を目処に)議案を上程することが望ましいものと考えられる。

定年の引上げ時期

自治体職員
自治体職員

定年をいつから段階的に引上げ、いつから65歳とすればよいのですか?

地方公務員の定年の段階的な引上げ時期

  • 地方公務員の定年は、国家公務員の定年を基準として条例で定めるものとされており、国家公務員の定年が段階的に引上げられる期間においても同様に規定されている。
  • したがって地方公務員の定年について、特別の合理的な理由がない限り、国家公務員の定年の段階的な引上げと同様の内容で、条例を定める必要がある。

※)地方公務員の定年の段階的な引上げ表

地方公務員の定年の段階的な引上げ表 定年前再任用短時間勤務制
「地方公務員法の一部を改正する法律について(地方公務員の定年引上げ関係)」/令和3年6月25日/総務省公務員部より一部抜粋
※「地方公務員の定年の段階的な引上げ表」の説明
  • 表中の年齢は、年度末年齢
  • 60歳の誕生日以降、定年までは、定年前再任用短時間勤務が可能。
  • 定年退職後は65歳まで暫定再任用職員として勤務することが可能。
暫定再任用職員
  • 旧地方公務員法再任用職員(法改正前の再任用職員)は、法改正後は「暫定再任用職員として採用されたものと見なす。
  • 任期は1年を超えない範囲内
  • 最長65歳に到達する年度末まで更新可
  • 勤務時間・給与の仕組み等は現行の再任用制度と同様の扱いが基本
  • 定年の引上げにより、現行の再任用制度が廃止されるが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、現行と同様の暫定的な再任用制度を設けるもの
  • 暫定再任用制度の対象となる職員については、現行制度における再任用制度と同様に、常時勤務を要する職(フルタイムの職)と短時間勤務の職(パートタイムの職)のいずれにも採用可能である。
公務員年金支給開始年齢
  • 各年度で60歳になる者が年金を支給され始める年齢の欄の右のかっこ内の数字は特定警察職員等
  • 公務員の年金支給開始年齢は、「特定警察職員等以外で昭和36年度生まれ以降の人」は男女問わず一律65歳。

定年前再任用短時間勤務制

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務制は必ず導入しなければならなのですか?

定年前再任用短時間勤務制を導入する理由

  • 定年の引上げ後においては、60歳以降の職員について、健康上、人生設計上の理由等により、多様な働き方を可能とすることへのニーズが高まると考えられる。(令和元年度の再任用職員への応募状況の実績では短時間勤務職員応募者が半数弱を占めており、定年引上げ後は短時間勤務を希望する職員がさらに増加することも想定される。)
  • こうしたことを踏まえ、国家公務員及び地方公務員の双方について定年前再任用短時間勤務制を導入することとした。

60歳に達する前に退職した元常勤職員の定年前再任用短時間勤務

自治体職員
自治体職員

60歳に達する前に退職した元常勤職員は、定年前再任用短時間勤務制の対象となりますか?

  • 定年前再任用短時間勤務職員として採用可能である者は条例で定める年齢に達した日以降に退職した者に限られ、また、その条例年齢は、特別の合理的理由がない限り、国家公務員法に規定する年齢(60歳)とする必要があることから、60歳に達する前に退職した元常勤職員を定年前再任用短時間勤務職員として採用することはできない。

60歳以降に退職し、一定の期間をおいた者の、定年前再任用短時間勤務

自治体職員
自治体職員

60歳以降に退職し、一定の期間をおいた後、定年前再任用短時間勤務職員として勤務することはできますか?

60歳以降に退職した職員を、一定の期間をおいた後に採用するケースとしては、

  • 退職前に定年前再任用の手続きを行う場合において、退職日の翌日以降、一定の期間を置いて採用を行う場合、
  • 退職前に定年前再任用短時間勤務職員として採用されることを希望せず一旦退職したが、その後の状況の変化等に伴い、定年前再任用短時間勤務職員としての採用を希望した場合に、退職後一定の期間が経過している当該元職員を定年前再任用短時間勤務職員として採用する場合

が考えられるが、いずれについても任命権者の判断により行うことが可能である。

定年前再任用短時間勤務職員の任期の終期

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務職員の任期の終期を定年退職日相当日以外の日とすることはできますか?

  • 定年前再任用短時間勤務職員の任期の終期は定年退職日相当日(=常勤職員の定年退職日と同じ日。65歳以後最初の3月31日までの間の条例で定める日。)と法律で定められており、これ以外の日とすることはできない。(任期の定めのない常勤職員が定年退職日まで勤務することと定められていることと同様である。)

定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間等に制限はありますか?

  • 地方公務員の勤務時間等の勤務条件は、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮を払ったうえで条例で定めることとされており、これは定年前再任用短時間勤務職員についても同様である。
  • 国家公務員の定年前再任用短時間勤務職員の勤務時間等の取扱いは、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律において、以下のこと(※1、※2)が定められており、地方公務員法の趣旨から、国家公務員に準じて同様の内容を条例で定めるなど適切に対応する必要がある。
  • なお、この取扱いは、法改正前の再任用短時間勤務職員及び法改正後の経過措置である暫定再任用職員と同様である。

※1 休憩時間を除き、1週間当たりの勤務時間は15時間30分から31時間までの範囲内で、各省庁の長が定めること

※2 週休日及び勤務時間の割振りについては、日曜日及び土曜日に加えて、月曜日から金曜日までの5日間に週休日を設けることができ、1日につき7時間45分を超えない範囲で勤務時間の割振りを行うこと。

定年前再任用短時間勤務職員の選考

定年前再任用短時間勤務職員の選考

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務職員としての勤務を希望する職員について、希望者全員を採用しなければならないのですか?

  • 定年前再任用短時間勤務職員の任用は、条例で定めるところにより、従前の勤務実績その他の人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の職員の規制)で定める情報に基づく選考により、任命権者が行うものであり、選考の結果採用されない職員が生ずることも想定される。
  • 他方、短時間勤務の職に再任用されることを希望して退職しようとする職員のうち、短時間勤務の職に就けない場合にはフルタイムで引き続き勤務することを希望する職員に対しては、60歳以降の任用を決定する任用手続きを工夫することにより、定年前再任用短時間勤務又はフルタイムでの勤務継続のいずれかが確保されるよう、適切な措置が講じられる必要がある。
  • なお、国家公務員に関する取扱いについては、今後改めて情報提供する予定としている。

定年前再任用短時間勤務職員の採用日

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務職員の採用日を、一律4月1日とすることは可能ですか?

  • 定年前再任用短時間勤務職員の採用日の基本を4月1日とするなどとする取扱いは差し支えないものと考えられるが、定年前再任用短時間勤務制は、「条例で定める年齢(=60歳を基準として定める年齢)に達した日以降に退職した者」を広く対象としている制度であり、また、職員によっては、本人の健康状態や家族の介護への従事など個別に配慮すべき事情がある場合も想定されることから、各団体においては、採用日の時期を含め、可能な範囲で対象職員の希望に配慮するよう努めていただきたい。

定年前再任用短時間勤務制と他の制度との関係

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務職員としての任期を終えた者を暫定再任用のフルタイム勤務職員として採用することは可能ですか?

  • 暫定再任用措置の対象期間(※)においては可能である。(※前述の「国家公務員の定年の段階的な引上げ表」参照

定年前再任用短時間勤務制と高齢者部分休業制度との違い

自治体職員
自治体職員

定年前再任用短時間勤務制と高齢者部分休業制度の違いは何ですか?

  • 高齢者部分休業制度は平成16年に地方公務員法において導入した制度であり、概ね55歳(条例で定める年齢)以上の常勤職員について、職員の任意の申請に基づき、校務の運営に支障がない場合、条例に基づき、任命権者が部分休業を認めることができるとしている。
  • 一方で、今回の定年引上げに伴い導入する定年前再任用短時間勤務制は、60歳以降、定年に達する前に常勤職員を退職した者について、従前の勤務実績などに基づく選考により定年に達するまでの任期で短時間勤務の職に再任用できることとする制度である。
  • 両制度には、以下の違いがある。
  • 高齢者部分休業制度は、常勤職員の身分のまま、原則として、その勤務時間の半分を上限として休業することができる制度であり、勤務しない時間について給与が減額される制度である一方、
  • 定年前再任用短時間勤務制は、いったん常勤職員を退職した上で、非常勤職員に再任用されるため、短時間勤務の再任用職員の給与が支給される。
定年前再任用短時間勤務制高齢者部分休業制度
職員の身分非常勤職員(短時間勤務の職)任期の定めのない常勤職員
職の異動
(身分の変動)
退職後、短時間勤務の職に
再任用
なし
勤務時間週15時間30分から31時間の
範囲内
勤務時間の半分を上限として
休業できる
定員定数上の
取扱
定員外
(フルタイム勤務職員と区別して
別途管理)
定員内
制度利用可能
年齢
60歳以降高年齢として条例で定める年齢
(※)
以降
給与国家公務員の再任用職員の給与
踏まえた取扱い
(級ごとに単一の給料月額を設定し
勤務時間に応じて算定
給料月額7割措置適用後の給与
につき、勤務しない時間分を
減額
諸手当国家公務員の再任用職員の給与
踏まえた取扱い
(一部手当(扶養手当、住居手当等)
は支給されない
常勤職員と同様
退職手当常勤職員としての退職の際に
それまでの勤続分の額を給付

短時間勤務職員としての勤
続分は算定の対象とならない
退職時に給付(部分休業期間は
在職期間から二分の一を除算
して算定
。)
その他フルタイム勤務への復職は不可
(暫定再任用の対象職員であれば、
暫定再任用フルタイム
職員として採用可能
フルタイム勤務への復帰が可能
「定年前再任用短時間勤務制」と「高齢者部分休業制度」の比較の表

※平成16年の制度導入時は「定年前5年」(概ね55歳)と設定していたが、平成26年度から年齢の枠付けを撤廃

定年引上げの実施に向けた質疑応答(第4版)定年前再任用短時間勤務制
定年の引上げの実施に向けた質疑応答(第4版)(総務省)」より一部抜粋
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まとめ

今回の記事では、令和3年6月4日に「国家公務員法等の一部を改正する法律(国家公務員法改正案)」と「地方公務員法の一部を改正する法律(地方公務員法改正案)」が成立し、令和5年4月1日から施行されることで、公務員の60歳以降の勤務条件がどう変わるかについて書きました。

そして、

  • 定年を段階的に引き上げる方法
  • 定年延長に伴って制定された新たな制度
  • 役職定年制の特例
  • 給与
  • 退職金

などについてお伝えしました。

さらに、

  • 各地方公共団体が実施すべき事項
  • 今回初めて導入される「定年前再任用短時間勤務制」

について詳しく書きました。

令和5年の施行に向けて、各地方公共団体では、今年度(令和4年度)中に条例や規則を整備します。

公立学校の教職員を含めた地方公務員の皆さんにも、共済組合などから、内容が知らされることになります。

ただし、各地方公共団体によって違いがあり、どのような形でどの程度周知されるかは分かりません

労働組合などに入っている人は、おそらくそちらから詳しい内容の説明があるでしょう。

しかしながら、令和5年度中に60歳を迎える職員に対しては、「情報提供・意思確認制度」に則って、60歳以降の任用・給与・退職手当に関する情報提供を行った上で、60歳以降の勤務の意思確認が行われなければならないことになっています。

地方公共団体の条例や規則の整備については、国の法律及び他の地方公共団体の条例や規則の内容に準じて行われますから、この記事に書かれている内容と大きく違うということはないでしょう。

私の記事では、今後も、「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか」について、詳しく書いていきます。

次回は、「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか②~校長・副校長・教頭は、60歳以降、役職定年により、降格?」です。

是非お読みいただいて、公立学校の教職員を含めた公務員の方は、60歳以降の働き方の選択にお役立て下さい。

一般企業にお勤めの方も、各企業などで60歳以降の雇用条件を整える上で、国家公務員法改正案や地方公務員法改正案を参考にする必要が出てくることが考えられますので、続けて読んで下さいね。

コメント

  1. ちゃり より:

    再任用短時間勤務は、副業できるのですか。

    • Ukachi05524587 Ukachi05524587 より:

      ちゃり様、コメントありがとうございます。
      「再任用を希望される皆様へ」(内閣官房内閣人事局)【令和2年度版】8ページ「その他の諸制度」の「兼業」の欄に、「フルタイム勤務、短時間勤務を問わず、定年退職前の職員と同様に兼業規制が適用されます。ただし、短時間勤務職員については、割り振られる勤務時間が短いことなどから、職務の遂行に支障が生ずること等の事情がなければ、フルタイム勤務職員と比べて兼業が許可されやすくなっています。(詳細については、各府省の含む担当にご相談ください。)。」と国家公務員の再任用短時間勤務職員について述べられています。地方公務員についても同様の扱いと考えられます。

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