はじめに
「学校における働き方改革は可能か⑥~平成20年度予算~」でお伝えしたとおり、平成20年度予算では、教職調整額は、実際の業務量に見合うよう、10%に増加させる要求に対して、4%の現状維持(結論は先送り)にとどまり、義務教育等教員特別手当は、給与の2.76%分の削減、教職員定数や非常勤講師も要求に対して大幅減という、非常に残念な結果となってしまいました。
今回は、結論を先送りした教職調整額や、働き方改革と直結する、教職員定数や外部人材の活用等が、平成21年度概算要求では、どのように要求されたのか、書いていきます。
平成20年4月18日「教育振興基本計画ー『教育立国』の実現に向けてー」
改定教育基本法第17条によって規定された「教育振興基本計画」が、平成20年4月18日に策定されました。
教育振興基本計画は、
改正教育基本法によって新たに明記された教育の目標や理念の実現に向け、改めて「教育立国」を宣言し、教育を重視し、その振興に向け、社会全体で取り組むことが必要
とされるために、計画されました。
教育振興基本計画の中で、
等が示されました。
平成21年度概算要求
教職員定数
「教育振興基本計画」を受け、平成21年度概算要求が提示されたました。
教職員定数については、平成20年度には、概算要求で、今後3年間で21,000人の定数増を要求していたのが、財務省に阻まれて計画自体が消滅してしまった経緯があります。
そして、平成20年度に成立した教職員定数は、わずか1,000人の改善増でした。
平成21年度は、主幹教諭や事務職員等の配置で、1,500人の増加を要求しました。
「新学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備」としての非常勤講師
平成21年度から、新学習指導要領の移行期間が始まり、授業時数が増えることになりました。
そのため、平成21年度概算要求では、1万1,500人(週40時間換算)の非常勤講師を配置するために、152億円の国庫補助金予算を要求しました。
なお、この非常勤講師の中には、小中学校の主要3教科での少人数指導のための講師も含まれます。
退職教員等外部人材の活用
退職教員等外部人材の活用は、昨年度予算では、7,000人であったのに対し、平成21年度は、10,500人(12時間換算)を要求しました。
教員給与
教員給与の見直しとしては、「メリハリのある給与体制」として、「給料の調整額」を6%→4.5%に縮減するかわりに、管理職手当を増額する方策を立てました。
給料の調整額とは、公立の特別支援学校に勤める教育職員、公立の小中学校の特別支援学級の教育職員が、その職務の特殊性に基づいて給与月額に適正な調整額を支給するもの
教職調整額の見直しについては、概算要求の段階では、結論が出ませんでした。
また、義務教育等教員特別手当を、本給の3.0%から、2.2%に縮減する要求をしました。
これは、平成20年度予算により、平成21年1月から、本給の3.8%が3.0%に削減された上での、さらなる減額です。
これらの要求がされたのは、平成18年の「骨太の方針2006」で、教職員の給与を、2.76%削減することが決定されていたためです。
教員給与全体で昨年比18億円のマイナス要求という驚くべき結果となりました。
まとめ
新学習指導要領の移行期間開始に伴う授業時数増を、非常勤講師で補おうとするところに、文部科学省のあきらめのようなものが感じられます。
なぜなら、平成18年の「経済再生と行政改革の推進に関する基本方針(骨太の方針2006)」で示された政府の方針である、「教職員数の削減」に背くわけにはいかないからです。
教員の給与の削減に至っては、義務教育等教員特別手当のみならず、教職調整額にまで手を付けようとする文部科学省は、理想の教育論を高く掲げておきながら、教員を冷遇していて、言動不一致ではないのか、という感じを受けてしまいます。
次回「学校における働き方改革は可能か⑧~平成21年度予算~」では、平成21年度予算について、教員定数の改善、給料の調整額の縮減、教職調整額の見直し、義務教育等教員特別手当の縮減がどのように決定されたのかを中心にお伝えします。
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