はじめに
前回の記事「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か~文部科学省はずっと提案し続けている!③~小2の35人学級のための教員の加配措置の実現から平成25年度予算成立まで~」では、平成25年度の文部科学省の予算が成立するまでの経緯について説明した。
今回は、その後、平成27年度の予算成立までに、文部科学省が少人数学級実現に向けてどんな取り組みをしてきたか、触れたみたい。
結論を先に言うと、平成26年度予算、平成27年度予算共に、教職員の新たな加配定数を設ける一方、
- 少子化を踏まえた既存定数の合理化による教職員数の削減
- 学校を統合させることによる教職員数削減
- 少子化による学級数減による教職員数の自然減
により、全体としての教職員定数は、大幅に減ってしまった。
もちろんどちらの年度も、少人数学級を他学年に広げるための予算は措置されなかった。
この記事を読んでほしい人
- 現職の教員
- 教育関係者
- 保護者の方
- 教育問題に興味がある人
この記事を読むと分かること
- 少人数学級がどのようにして進められてきたのかの経緯(平成26年度予算成立から平成27年度予算成立まで)
平成26年度文部科学省予算
平成26年度文部科学省予算では、教職員定数に対する新たな加配措置が703人である。
しかし、学校を統合させることによる教職員数削減が313人、少子化を踏まえた既存定数の合理化による教職員数の削減が400人で、合わせると、学級数の減少による自然減以外では、713人の削減であった。
よって、教職員定数は、全体で10人の削減となった。
教育再生の実現に向けた教職員等指導体制の在り方等に関する検討会議提言
平成27年度予算に向けて、平成26年5月に財務省により、「財政制度等審議会」が開かれ、「財政健全化に向けた基本的考え方」が公表された。
これを受けて、文部科学省では、「教育再生の実行に向けた教職員等指導体制の在り方等に関する検討会議」が開かれ、提言がなされた。
この中で、
平成26年5月30日財政制度等審議会「財政健全化に向けた基本的考え方」で、「教職員定数を拡大することが、他の施策への投資よりも有効であるとは考えられない。」と指摘された
と書かれている。
加えて、
平成26年5月27日の経済財政諮問会議においても、「生徒数が更に減少する中、教師の数、クラスの定員といった「数」よりも、一人一人の能力を高められる教師の「質」を重視した取り組みを強化すべき。」と有識者議員により指摘されている
と記されている。
初等中等教育分科会(第91回)・教育課程部会(第89回)合同会議
平成27年度の概算要求に向けて、平成26年9月24日に行った、文部科学省の「初等中等教育分科会(第91回)・教育課程部会(第89回)合同会議」で、
「10か年定数改善計画を策定して、OECD並みに教職員一人当たりの児童生徒数を目指す」
という案が審議された。
平成27年度予算の編成等に関する建議
その後、文部科学省からの概算要求に対し、財務省で、「財務制度等審議会」が行われ、「平成27年度予算の編成等に関する建議」が提出された。
その内容は、
- 毎年1,600人の加配定数の合理化を行うこと
- 小1の35人学級は明確な効果は認められず,40人学級に戻すこと
- 教員給与水準の縮減を行うこと
という驚くべきものであった。
平成27年度文部科学省予算
国会での討議の結果、少子化等を踏まえた加配定数の削減(▲4,000人)を行い、一方でアクティブ・ラーニングの推進等を図るための新たな加配定数(900人)の措置を行うこととなった。
まとめ
このように、平成26年度予算、平成27年度予算共に、教職員の新たな加配定数を設ける一方、
- 少子化を踏まえた既存定数の合理化による教職員数の削減
- 学校を統合させることによる教職員数削減
- 少子化による学級数減による教職員数の自然減
により、全体としての教職員定数は、大幅に減っている。
もちろんどちらの年度も、少人数学級を他学年に広げるための予算は措置されなかった。
次回は「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か~文部科学省はずっと提案し続けている!⑤~平成28年度予算から平成29年度予算まで~」で、平成28年度予算・平成29年度予算について説明する。
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