- はじめに
- 「平成28年度予算の概算要求にあたっての基本的な方針について(平成27年7月24日閣議了解)」の骨子
- 日本再興戦略2015と財政健全化計画のポイント
- 平成28年度文部科学省「新しい日本のための優先課題推進枠」
- 平成28年度文部科学関係概算要求のポイント
- 平成28年度 文部科学関係要求の概要
- 平成28年度文部科学省概算要求
- 平成28年度概算要求 義務教育費国庫負担金「アクティブ・ラーニング等の充実に向けた教職員定数の戦略的充実」
- 平成28年度から平成36年度までの教職員定数改善予定数
- 多彩な人材の参画による学校の教育力向上
- いじめ・不登校対策等の推進
- 特別支援教育の充実
- キャリア教育・職業教育の充実
- 全国的な学力調査の実施
- 初等中等教育段階におけるグローバルな視点に立って活躍する人材の育成
- 新しい時代にふさわしい教育制度の柔軟化の推進
- 地域とともにある学校づくりの推進
- 学校を核とした地域力強化プラン
- 情報通信技術を活用した教育振興事業‥1億7,300万円(平成27年度1億700万円)
- ICTを活用した教育推進自治体応援事業‥2億9,400万円(平成27年度2億4,500万円)
- 人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業‥1億4,200万円(平成27年度同)
- 学校健康教育の推進
- スポーツによる健康増進、地域社会の活性化
- 子供の体力の向上、学校体育・運動部活動の充実
- まとめ
はじめに
「学校における働き方改革は可能か㉑~平成27年度概算要求~アクティブ・ラーニングと働き方改革のためのチーム学校と10年間で31,800人の定数改善計画~」では、平成27年度文部科学省予算で、義務教育費国庫負担金の主な使途が「少人数学級の実現」から「チーム学校・授業革新」へと移行したことについて書きました。
その理由は、平成26年度に、財務省が「全国学力・学習状況調査」の結果を根拠にして、「少人数学級の効果を疑問視した」ためでした。
また、他のOECD参加国に比べて、日本の教員の勤務時間が断トツに長いこと、一般事務業務や部活動などの授業以外の業務に多くの時間を費やしていることなども、「チーム学校」施策への移行に大きな影響を及ぼしました。
そして、文部科学省は、平成27年度には、小学校における専科指導やアクティブ・ラーニングのための教員定数改善により、授業革新を行い、教育の質の向上を図ろうとしました。
また、「チーム学校」の考えの下、教頭、主幹教諭、養護教諭等の加配教職員定数の改善も行われました。
さらに、個別の教育課題への対応として、「学力保障に必要な教員」や「いじめ等の問題行動への対応のための教員」の加配定数の改善等も行われました。
その結果、平成27年度は、新たに900人が定数措置されましたが、少子化等に伴う教職員定数の減は▲4,000人でした。
合わせると、教職員定数は、▲3,100人でした。
そして、この教職員定数の改善は、法改正による基礎定数の増によって行われたものではなく、加配定数の増によって行われました。
この「基礎定数の改正ではなく、加配定数の増による定数改善」のデメリットについては、「学校における働き方改革は可能か⑳~加配定数での少人数学級への移行のデメリットと平成26年度予算~」に詳しく書いてありますので、読んでいない方は、どうぞご覧下さい。
そして、「義務標準法の改正により、10ヵ年かけて教職員定数を31,800人増やす計画」は採択されませんでした。
法改正による教職員定数の改善は、平成27年度時点では、平成24年度に行われた後は行われていませんでした。
そんな中、はたして、平成28年度は、基礎定数の増による教職員定数の改善は行われたのでしょうか?
また、どんどん数が増えて、少しずつ進んできた、学校における働き方改革に関連するその他の施策は、実際に学校の働き方改革に役だったのでしょうか。
今回も、当時の政府の政策、文部科学省の施策について、予算の資料を基に探っていきたいと思います。
「平成28年度予算の概算要求にあたっての基本的な方針について(平成27年7月24日閣議了解)」の骨子
- 「基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」の初年度の予算
- 歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組を強化
- 予算の中身を大胆に重点化
- 予算の重点化を進めるため、「公共サービスの産業化」、「インセンティブ改革(※1)」、「公共サービスのイノベーション」を中期的に進めることを含む「基本方針2015」及び「『日本再興戦略』改訂2015」を踏まえた諸課題について、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、各省は上記要望基礎額の100分の30の範囲内で要望。(※1)「インセンティブ改革」=結果の平等を常に保障する仕組みから、頑張る者の取組を促す仕組みへのシフト(下に資料あり)
日本再興戦略2015と財政健全化計画のポイント
日本再興戦略2015の概要 これまでの改革の主な成果と今後の取組
改訂2015の基本的な考え方
アベノミクス第2ステージ
鍵となる施策
1.未来投資による生産性革命
- 「稼ぐ力」を高める企業行動(≒前向投資)を引き出す‥「攻め」のコーポレートガバナンス(※1)の更なる強化、イノベーション・ベンチャーの創出、アジアをはじめとする成長市場への挑戦(※1)コーポレートガバナンス=企業の組織ぐるみの不祥事をふせぐために、社外取締役や社外監査役など、社外の感映写によって経営を監視する仕組み
- 新時代への挑戦を加速する(「第四次産業革命」)
- 個人の潜在力の徹底的な磨上げ
2.ローカルアベノミクスの推進
3.「改革2020」(成長戦略を加速する官民プロジェクト)の実行
財政健全化計画(骨太の方針2015)のポイント
「財政健全化計画」に向けた考え方ー「財政健全化計画」で示されるべき方向性
基本的考え方
※プライマリーバランス(PB)とは、社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標です。現在、日本のPBは赤字であり、政策的経費を借金で賄っている状況です。
この日本の財政状況を家計にたとえると、毎月、新たな借金をして、給料収入(税収等)を上回る生活費(政策的経費)を支出している状況です。 財務省ホームページより一部抜粋
2016年度以降の予算編成に向けた歳出規律
歳出改革の方針ー今後の人口動態を見据えてー
歳出改革が数字ありきの削減にならないよう、各歳出分野の具体的方策を積み上げ、「財政健全化計画」の実効性を確保する。
下記の歳出改革の方針の下、歳出分野ごとの具体的方策を工程表に沿って着実に進める。
経済財政の見通しと進捗状況の管理
平成28年度文部科学省「新しい日本のための優先課題推進枠」
平成28年度文部科学省「新しい日本のための優先課題推進枠」には、8,403億円を要求しました。
教育再生の実行
「教育再生の実行」の5,487億円の中には、「社会や子供の変化に対応する新たな学校教育の実現」(義務教育費国庫負担金)〔アクティブ・ラーニング等の充実に向けた教職員定数の改善増〕のための65億円の要求が含まれていました。
他には、「大学等奨学金事業の充実」に1,006億円、「学校施設等の老朽化対策等の推進」に2,468億円等が要求額の多くを占めました。
科学技術イノベーションの推進
「科学技術イノベーションの推進」として、2,603億円を要求しました。
そのうち、「人類のフロンティアの開拓及び国家安全保障・基幹技術の強化」1,024億円の要求の中には、「宇宙科学等のフロンティアの開拓」、「海洋資源調査研究の戦略的推進」、「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」等が含まれました。
スポーツ・文化芸術の振興
「スポーツ・文化芸術の振興」には、287億円を要求しました。
その中で、「競技力向上事業」〔2020東京大会に向けた選手強化活動の支援拡充〕に29億円、「ハイパフォーマンスサポート事業」に40億円を要求しました。
他には、「国立文化施設の機能強化・施設整備」のための96億円等でした。
平成28年度文部科学関係概算要求のポイント
平成28年度文部科学関係予算として、5兆8,552億円を要求・要望しました。
対前年度増減率は、+9.8%でした。
平成28年度概算要求文教関係予算のポイント
平成28年度文教関係予算は、4兆3,704億円を要求・要望しました。対前年度増減率は、+7.6%でした。
平成28年度概算要求スポーツ関係予算のポイント
平成28年度スポーツ関係予算の要求・要望額は、367億円で対前年度増減率+26.6%でした。
- 2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた準備‥169億円(40億円増)
- スポーツ庁設置によるスポーツ施策の総合的な推進‥198億円(37億円増)
平成28年度概算要求科学技術予算のポイント
平成28年度科学技術予算に1兆1,445億円を要求・要望しました。
対前年度増減率は+18.2%でした。
平成28年度 文部科学関係要求の概要
平成28年度の文部科学関係要求の歳出予算は、一般会計が、5兆8,552億円で、対前年度比較増減率+9.8%でした。
平成28年度の文部科学関係要求の歳出予算の復興特別会計は、650億円で、対前年度比較増減率▲70.4%でした。
平成28年度の文部科学関係要求の歳出予算のエネルギー対策特別会計は、1,422億円で、対前年度増減率は、+29.3%でした。
平成28年度文部科学省概算要求
平成28年度概算要求 義務教育費国庫負担金「アクティブ・ラーニング等の充実に向けた教職員定数の戦略的充実」
教職員定数の改善(3,040人・+65億円)
創造性を育む学校教育の推進‥1,440人
学校現場が抱える課題への対応‥940人
チーム学校の推進による学校の組織的な教育力の充実‥660人
教職員定数の自然減(▲3,100人・▲67億円)
教職員の若返り等による給与減(▲119億円)
平成28年度から平成36年度までの教職員定数改善予定数
平成28年度は、「〇ヵ年で〇名の教職員定数改善計画」という名前の教職員定数改善案の策定はありませんでした。
しかし、
- 平成36年度までの各施策ごとの改善予定数
- アクティブ・ラーニングの充実のための大まかな定数改善計画
- 小学校英語教科化対応、諸課題対応、チーム学校の推進のための教職員定数改善方策(義務標準法の改正、加配定数の拡充)
- 今後の教職員定数の見通し
- 追加的な財政負担を要することなく必要な定数改善を実施できること
が、概算要求の説明資料に記載されました。
9年かけて28,100人の教職員定数を改善する見通しを立てました。
多彩な人材の参画による学校の教育力向上
補習等のための指導員等派遣事業
退職教職員や教員志望の大学生など多彩な人材をサポートスタッフとして学校に配置する事業のための予算を、12,000人分(49億4,100万円)要求しました。(平成27年度の成立予算は、10,000人分(41億1,800万円)でした。)
チーム学校の実現に向けた業務改善等の推進事業
学校現場における業務改善の取組を積極的に支援し、教員と専門スタッフによるチーム体制の構築、学校マネジメント機能の強化、教員が力を発揮できる環境を整備し、子供と向き合う時間の確保や授業の充実を図るための事業でした。(40都道府県・市町村、4大学等研究機関)‥1億2,500万円(平成27年度9,000万円)
支援事業として以下の事業を実施し、業務改善の取組を支援する。
普及啓発として以下の事業を実施し、業務改善の実践事例を全国に発信する。
いじめ・不登校対策等の推進
要求要旨
教育再生実行会議(第一次、第五次提言)(※1)や「いじめ防止対策推進法」(※2)、「いじめの防止等のための基本的な方針」(※3)を踏まえ、いじめの未然防止、早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応、また、子供の貧困対策に関する大綱(※4)を踏まえた専門人材の配置充実、さらに「不登校児童生徒への支援に関する中間報告」(※5)を踏まえた不登校対応のため、「いじめ対策等総合推進事業」(※6)を拡充し、地方公共団体等におけるいじめ問題等への対応を支援する。
(※1‥下記資料参照)(※2と※3‥本サイト内別記事参照)(※4下記資料参照)(※5下記資料参照)(※6‥本サイト内別記事参照)
外部専門家を活用した教育相談体制の整備・関係機関との連携強化等‥59億7,400万円(平成27年度成立予算48億5,200万円)
学校支援
スクールカウンセラーの配置拡充
スクールソーシャルワーカーの配置拡充
24時間子供SOSダイヤル
いじめ等を含む子供のSOSを無料で受け止めるため、フリーダイヤル化して電話相談を行うための予算でした。
自治体支援
幅広い外部専門家を活用していじめ問題の解決に向けて調整、支援する取組の促進等
特別支援教育の充実
インクルーシブ教育システムの推進‥15億2,900万円(新規)
インクルーシブ教育システムの推進事業費補助
インクルーシブ教育システムの推進に向けた取組として、都道府県等が①特別支援教育専門家等(早期支援コーディネーター、合理的配慮協力員、外部専門家、看護師)の配置及び②連絡協議会呼び研修による特別支援教育の体制整備をする場合に要する経費の一部を補助する事業でした。
インクルーシブ教育システム推進センターの設置
キャリア教育・職業教育の充実
将来の在り方・生き方を主体的に考えられる若者を育むキャリア教育推進事業‥4,100万円(平成27年度4,000万円)
地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業‥1,200万円(平成27年度1,200万円)※「学校を核とした地域力強化プラン」の一部
地元就職につなげるキャリアプランニングを推進する「キャリアプランニングスーパーバイザー」を配置し、地域を担う人材育成・就労支援を促進することにより、地域の活性化につなげることを計画しました。(21人)(平成27年度21人)
全国的な学力調査の実施
平成28年度概算要求では、小学校第6学年、中学校第3学年の全児童生徒対象に、国語、算数・数学の悉皆調査を実施するための予算を要求しました。
また、同学年・教科について抽出による経年変化分析調査を追加して実施する予算も要求しました。
そして、平成29年度に国語、算数・数学を対象教科とした悉皆調査を実施するための準備をするための予算も要求しました。
平成27年度は、58億8,700万円だったのに対し、平成28年度は57億4,200万円を要求しました。
初等中等教育段階におけるグローバルな視点に立って活躍する人材の育成
小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業
小・中・高等学校を通じた英語教育の強化のため、先進的な取組の支援や小学校英語教科化等に対応した教員の指導力・専門性向上事業、生徒の英語力調査を行うとともに、外国語活動の教材整備などの取組を実施するための予算を要求しました。
平成27年度は7億1,000万円の予算だったのに対し、平成28年度は12億9,300万円を要求しました。
新しい時代にふさわしい教育制度の柔軟化の推進
要求要旨
子供や社会の状況は大きく変化し、現行の学校教育制度が導入された当時と比べて児童生徒の発達の早期化が見られるほか、自己肯定感の低さ、小1プロブレムや中1ギャップなどの課題が指摘されている。
このような課題に対応するため、小中一貫教育の推進、フリースクール等で学ぶ不登校の児童生徒への支援策について調査研究を行う。
また、義務教育未修了者等の就学機会の確保に重要な役割を果たしているいわゆる夜間中学について、学習指導、生徒指導の改善方策や新規設置に向けた課題等に関する調査研究を行う。
内容
小中一貫教育推進事業‥2億8,000万円(平成27年度3,900万円)
都道府県教育委員会の積極的な指導助言のもと、市町村教育委員会等の学校設置者が域内全域での小中一貫教育の導入に向けた先導的な取組を創出する事業です。
大学等に委託し、効果的なモデルカリキュラム・指導方法等を開発・普及する予算も含まれました。
フリースクール等で学ぶ子供への支援の在り方等に関する実証研究事業‥4億9,200万円(新規)
フリースクール等で学ぶ義務教育段階の子供への支援策について、総合的な検討を進めるため、学習機会を確保するための新たな仕組みの試行及び検証、経済的支援に係る実証的な研究を実施するための予算を要求しました。
義務教育未修了者等の就学機会確保推進事業‥9,300万円(平成27年度1,000万円)
夜間中学の教育実践の高度化を促すとともに、未設置道県における設置促進と就学支援策の充実を図るという事業です。
地域とともにある学校づくりの推進
コミュニティ・スクール導入等促進事業(※「学校を核とした地域力向上事業」の一部)‥1億6,600万円(平成27年度1億5,700万円)
コミュニティ・スクールについて、未導入地域への支援の拡充や学校支援等の取組との一体的な推進により、一層の拡大・充実を図るための事業でした。
学校運営協議会の機能と、学校支援や学校関係者評価等の機能を一体的に推進することで、学校運営の改善を果たすPDCAサイクルを確立
することを目指して策定されました。
学校運営協議会の役割
- 学校運営の基本方針の承認(必須)
- 学校運営に関する意見(任意)
- 教職員の任用に関する意見(任意) のほか、
- 学校支援活動等の総合的な企画・調整、学校関係者評価の基本方針の検討など、学校運営に関する全体的な協議を行う場に。
地域提案型の学校を核とした地域魅力化事業
「地域提案型の学校を核とした地域魅力化事業」に1,100万円を要求しました。
平成27年度は、1,300万円の予算でした。
これまでの事業では実現できなかったような地域提案による創意工夫のある多彩な取組を支援し、学校を核とした地域の魅力を創造する取組の実現を図るための事業でした。
首長部局等との協働による新たな学校モデルの構築事業
地域コミュニティの衰退や子供の問題行動等、学校・地域の差し迫った社会的・地域的な課題に対し、首長部局や関係機関等との共同体制を確立し、課題解決に向けて取り組む新たな学校モデルを構築・発信するための予算として、2,600万円を要求しました。平成27年度の予算は、2,900万円でした。
学校を核とした地域力強化プラン
学校を核とした地域力強化プランの実施‥91億3,700万円(平成27年度66億8,400万円)
「学校を核とした地域力強化プラン」は、学校を核とした地域力強化のための仕組みづくりや地域の活性化に関する様々な取組を有機的に組み合わせて推進するとともに、ファシリテーター(※1)の養成・研修に関する実証研究やアウトリーチ(※2)型家庭教育支援の取組を推進することで、将来を担う子供達を育成し、地域創生の実現を図るための事業です。
(※1「ファシリテーター」=仕事を進めたり話し合いをしたりするときに、みんなの意見を調整しながら、解決に導くように進行させる人)
(※2「アウトリーチ」=支援が必要な人のところに積極的に働きかけて支援すること)
地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育支援体制構築事業
全ての子供達の土曜日の教育活動を充実するため、地域の多彩な経験や技能を持つ人・企業等の協力を得て、土曜日に体系的・継続的な教育プログラムを企画・実施する学校・市町村の取組を支援することにより、教育支援に取り組む体制を構築し、地域の活性化を図る事業でした。
教育課程に位置づけることも可能とされました。
平成27年度は、小学校・中学校・高等学校などの12,000か所で実施されましたが、平成28年度は、15,000か所分の予算を要求しました。
地域人材の活用や学校・福祉との連携によるアウトリーチ型教育支援事業
アウトリーチ型支援を行う地域人材の発掘、養成、活動の場の提供を一気貫通で行い、スクールソーシャルワーカーや地域の人材、保健、福祉部局等と協働した、家庭教育支援チーム等による訪問型支援等の幅広い支援を行うアウトリーチ型の家庭教育支援体制を構築し、家庭や子供を地域で支える取組を推進する事業でした。
新規で1億100万円を要求しました。
学校・家庭・地域の連携協力推進事業
学校と地域を繋ぐコーディネーターが中心となり、地域住民や豊富な社会経験を持つ外部人材等の協力を得て、学校支援地域本部、地域未来塾、放課後子ども教室、家庭教育支援、地域ぐるみの学校安全体制の整備、スクールヘルスリーダー派遣などの学校・地域の連携協力による様々な取組を推進し、社会全体の教育力向上及び地域活性化を図る事業でした。平成27年度予算が50億7,900万円だったのに対し、平成28年度は70億2,700万円を要求しました。
学校支援地域本部
学校地域支援本部は、平成27年度は5,000か所分の予算でしたが、平成28年度は4,000か所分の予算を要求しました。
学習支援が必要な中学生・高校生を対象とした学習支援~地域住民の協力を得た地域未来塾の充実~
平成27年度は、中学生のみを対象としていましたが、平成28年度は中学生と高校生を対象に学習支援を行う計画を立てました。
さらに、「ICTの活用による学習支援等」という文言が加わりました。
経済的な理由や家庭の事情により、家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身に付いていない中学生・高校生に、大学生や教員OB など地域住民の協力やICTの活用等による学習支援を実施する原則無料の「地域未来塾」を充実させるための予算でした。
平成27年度の予算は、2億700万円でしたが、平成28年度は、その3倍の6億2,800万円を要求し、3,500中学校区と高校で設置する方策を立てました。(学校・家庭・地域の連携協力推進事業の内数)
平成31年度には、全中学校区の50%に当たる5,000中学校区と全国の高校に設置することを目指しました。
放課後子供教室~放課後子ども総合プランの推進~
女性の活躍推進のためには、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次世代を担う人材を育成するため、全ての就学児童が放課後を安心・安全に過ごし、多様な体験・活動ができるよう、厚生労働省と連携して総合的な放課後対策に取り組むことが必要であることから、この事業が策定されました。
平成27年度は14,000か所分の予算でしたが、平成28年度は、15,500か所分の予算を要求しました。
平成31年度までに、20,000か所に放課後子供教室を設置し、そのうち約半数は放課後児童クラブと一体になったものとする計画でした。
家庭教育支援(1,000箇所→1,000箇所)
スクールガードリーダーによる学校安全体制の整備等(1,800箇所→1,800箇所)
情報通信技術を活用した教育振興事業‥1億7,300万円(平成27年度1億700万円)
要求の要旨
ICTの特長を生かして効果的に活用した教育を推進
情報活用能力を育成
↓↓↓↓確かな学力を育成
基礎的・基本的な知識・技能
思考力・判断力・表現力
主体的に取り組む態度
要求の内容
情報教育の推進等に関する調査研究
平成27年度に実施した情報活用能力に関する調査(高等学校)の結果を分析し、生徒の情報活用能力の実現状況を把握する。また、情報教育推進校(IE-School)を指定し、教科横断的な情報活用能力の育成に係る年間指導計画(指導モデル)を作成するとともに、それに基づく指導方法・教材の利活用等(プログラミングや情報セキュリティに関する学習活動を含む)について実践的な研究を実施する。
ICTを活用した課題解決型教育の推進事業
ICTを活用して集積されたデータから、子供の学習の過程や学習を通じた変化を読み取るために必要なデータを抽出し可視化する方法(アプリケーション)を開発し、協力校において有効性を検証する。
ICTを活用した教育推進自治体応援事業‥2億9,400万円(平成27年度2億4,500万円)
現状
ICTを活用した教育の取組みに地域間で差異が生じており、自治体の状況に応じたサポート体制の構築が必要であることから、事業を策定しました。
ICTを活用した学びの推進プロジェクト
指導力パワーアップコース(8地域→8地域)
教員等のICT活用指導力の向上を目指す自治体(都道府県・指定都市教育委員会)を指定する。地域内に複数の実証校を設置し、教員養成課程を持つ大学と連携を図り、教員等のICT活用指導力向上のための研修等のプログラムを策定・実践する地域を支援する。
ICT活用実践コース(30地域→25地域)
ICT環境の整備を進め、ICTを活用した授業の実践体制を構築するためのカリキュラムを策定・実践する地域を支援する。
ICT支援員の育成・確保(新規)
教員のICT活用をサポートするICT支援員を育成し、確保するため、ICT支援員のスキル標準及び育成モデルプログラムを開発する。
ICT活用教育アドバイザー派遣事業(30地域→60地域)
文部科学省にICT活用教育アドバイザリーボードを設置して、ICT環境の整備を図ろうとする自治体のニーズに応じてアドバイザーを派遣し、ICTを活用した教育の推進計画やICT機器整備計画(機器購入の調達手法を含む)の策定や校務支援の在り方についての留意事項等の助言を行う。
校内研修リーダー養成プロジェクト
平成26年度に作成した「校内研修リーダー養成のための研修手引き」及び「研修教材」を活用し、各自治体における校内研修リーダーの養成を支援する。
調査研究
ICTを活用した教育を推進する上での望ましい環境構成や、ICT活用指導力自己評価の継続的な実施のための調査研究を行う。
人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業‥1億4,200万円(平成27年度同)
離島や過疎地域等のため、ICTを活用した遠隔授業・社会教育の研究を行う事業でしたが、令和2年3月末から5月末頃まで続いたコロナウイルス感染対策のための休校中に、この遠隔授業がどの学校や職場でも行えるような環境が整っていたら、と悔やまれます。
令和2年11月現在、コロナ禍が続き、いつまた休校や休業があるか分からない中、できるだけ早く全ての学校でICTを活用した遠隔授業ができるよう、文部科学省、各自治体、各学校が整備を急いでいる段階です。
学校教育におけるICTを活用した実証研究
離島や過疎地域等においては、今後、少子化に伴い、学校の統廃合も困難な小規模学校の更なる増加が想定されることから、社会性の育成を始め、児童生徒同士の学び合いや学校内外の様々な人々との協働学習、多様な体験を通じた課題探求型の学習などが困難となるなど、教育の質の確保が大きな課題となる。
そのため、今後予想されるこうした環境において、学校教育の質の維持向上を図るための方策を検討することが必要であり、遠隔地間の学校同士をICTで結び、年間を通じて合同学習や合同活動などを実施することにより、指導方法の開発や有効性の検証などを行い、人口減少社会における学校教育の手法に関する検討を行う。
人口減少地域におけるICTを活用した社会教育実証研究
少子高齢化に伴う全国的な過疎化が進行する中、社会教育を通した地域課題に取り組む上で中心的な役割を果たす若手の担い手や指導者等の人材不足が見込まれており、地域コミュニティの維持向上が大きな課題となる。
そのため、ICTを活用して遠隔地間の社会教育施設等を結びながら学習機会の提供や指導者の養成などを行い、
① ICTを活用した遠隔講座などを行うための手法の開発と手法の有効性の検証
② 人口過少地域における社会教育の効果を最大化させるためのICT活用の在り方の検討
について実証研究を行うことにより、社会教育による人口過少地域のコミュニティの維持向上方策や、人口過少地域における社会教育構築体制の在り方について検討する。
遠隔学習等活用事例に関する調査研究
遠隔学習を導入・実践するに当たり、参考となる初歩的なノウハウ(遠隔学習に関する事前準備や指導方法、及びICT機器の特徴をいかした活用方法など)について、実証研究の中間成果をとりまとめ報告会を開催し普及する。さらに、本実証研究の実効性を高めるため、実証内容について検証を実施し、事業内容の改善を図る。
学校健康教育の推進
防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業‥47箇所:2億2,500万円(平成27年度2億100万円)
東日本大震災等の自然災害や登下校中の交通事故、さらに学校内外において不審者による子供の安全を脅かす事件の発生を踏まえ、地域や学校の抱える学校安全上の課題に対して、「自らの命を守り抜こうとする主体的に行動する態度」や「安全で安心な社会づくりに貢献する意識」等を育成する教育手法を開発するとともに、学校の安全管理体制や地域住民・保護者・関係機関との連携体制の構築に積極的に取り組む地域や学校を支援する。
教育手法の開発
ボランティア活動の推進・支援
学校の安全管理体制の充実
スポーツによる健康増進、地域社会の活性化
平成27年10月のスポーツ庁の設立を目前に控え、5年後の2020オリンピック・パラリンピック東京大会開催の準備が本格化しました。
スポーツ関連の新たな事業が増え、既存の事業も予算が増額するなど、要求金額も膨らみました。
スポーツ参画促進プロジェクト‥9億2,700万円(平成27年度3億600万円)
スポーツを通じた健康増進やスポーツツーリズム(※1)等に取り組み、スポーツに関する無関心層を含む国民の誰もがライフステージに応じたスポーツ活動への参画(する、観る、支える)を促進することにより、地域におけるスポーツの振興を推進する。
スポーツ医・科学等を活用した健康増進プロジェクト‥(新規)8,800万円
スポーツによる健康増進を推進するため、関係省庁と連携を図りながら、スポーツ医・科学等の知見を活用し、心身の健康の保持増進を図るためのスポーツ・運動に関するガイドラインの策定及びスポーツ・レクリエーションを活用した介護予防を促進するとともに、スポーツウエルネス(※2)に対する意識の醸成を図る。
スポーツによる地域活性化推進事業(拡充)‥5億3,500万円(平成27年度3億600万円)
スポーツを通じた健康増進の意識の醸成や運動・スポーツへの興味・関心を喚起する取組とともに、スポーツツーリズム等を活用した地域の活性化などに取り組むことにより、スポーツによる地域の活性化を促進する。
スポーツを通じた健康長寿社会等の創生
中高齢者など自身の健康づくりの必要性を感じているものの、行動に移せない者などを対象として、スポーツ・運動への関心を喚起するため、健康イベント等のインセンティブ(※3)付きスポーツ・運動プログラムの実施などのスポーツによる健康増進の取組を支援する。
地域スポーツコミッションへの活動支援
地域スポーツコミッション(※4)が実施する新たなスポーツイベントの創出及び誘致等のスポーツを観光資源とした地域活性化の取組を支援する。
地域スポーツの新たなプラットフォーム形成支援事業‥1億200万円(新規)
多様化するライフスタイルやニーズに対応した新たな地域スポーツ環境(プラットフォーム)を創出することにより、スポーツに対する無関心層も含め、子供から高齢者までのライフステージに応じたスポーツ活動への参画を促進する。
地域スポーツファンド形成促進事業(新規)‥9,300万円
起業や地域住民からの寄附などにより、地域におけるスポーツ活動を持続的に支援する仕組み(地域スポーツファンド)の形成を促進することにより、スポーツを通じた寄附文化の醸成を図るとともに、民間資金により地域におけるスポーツを支える体制を構築する。
特別支援学校等を活用した障害児・者のスポーツ活動実践事業‥5,100万円(新規)
障害児・者にとって、身近でかつ安心して安全にスポーツができる場と想定される特別支援学校等を有効に活用するための実践研究を行うことにより、地域における障害児・者のスポーツの拠点づくりを推進する事業を新規で策定しました。
2020東京パラリンピック競技大会に向けて策定されたと推察できます。
スポーツ人材育成事業‥5,800万円(新規)
2020年大会を超えて、我が国の「支えるスポーツ」の中核となる人材を育成するため、小中校生に対するスポーツボランティアに関する意識醸成や、コーチを志す者が、習得すべき基礎となる知識・技能及び確実な実践力を習得するための環境整備などに取り組む事業でした。
スポーツ環境整備事業(拡充)‥10億円(平成27年度3,500万円)
子供のスポーツ機会の充実、ライフステージに応じたスポーツ活動の場を確保するため、スポーツ施設の整備を推進し、スポーツ環境の整備促進を図る。
学校・地域スポーツ人材派遣支援事業(新規)‥1億4,000万円
学校や地域におけるスポーツ活動を一層活性化させるため、地域の人材や民間企業、大学と連携した推進委員会により、地域における様々なスポーツ活動に関する課題に対応する知・得・体を集結したスポーツ人材バンクを構築し、学校・地域スポーツソーシャルワーカーを配置する。
子供の体力の向上、学校体育・運動部活動の充実
体育活動における課題対策推進事業(拡充)‥3億3,100万円(平成27年度6,000万円)
体育の授業や運動部活動における体育活動中の事故防止やスポーツ医・科学を活用した体育授業の効果的な実施などの様々な課題に対応し、安全でより効果的な体育活動を実施するための取組を推進する事業でした。
運動部活動指導の工夫・改善支援事業‥3億1,200万円(平成27年度3億200万円)
部活動指導に携わる教員の長時間勤務の問題から、現状の部活動指導体制を続けることが困難であることや、運動部活動での体罰等が社会問題化していることなどを受け、始まった事業でした。
スポーツ医・科学等を活用した運動部活動指導体制や、女子生徒の参加しやすい運動部活動づくり等の多様な指導内容・方法の工夫改善を推進する事業でした。
さらに、体系的な資質向上のための研究協議や研修等の場の整備を行うこと等により、体罰根絶や指導体制の充実を図り指導者の資質向上を推進することも計画に盛り込みました。
武道等の円滑な実施の支援
武道等指導充実・資質向上支援事業(拡充)‥2億1,800万円(平成28年度1億9,500万円)
武道等や課題がみられる領域の指導を担う教員の資質向上、中学校武道の指導の充実、武道指導での安全管理、事故防止、武道等を必修化したことによる成果と課題の検証を図るため、体育教員資質向上プログラム開発・実践等や地域や学校の実態に応じ、複数種目を実施するなど特徴的な取組、関係団体における武道指導に関する支援体制の強化等の取組を支援する事業のための予算です。
まとめ
平成28年度文部科学省予算の概算要求では、スポーツ庁設置による「スポーツ施策の総合的な推進」や2020東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた準備の本格化により、スポーツ関係予算が対前年度増減率+26.6%と大幅増となりました。
また、「科学技術イノベーション創出」を謳った科学技術関係の予算の概算要求も、18.2%増でした。
文教関係予算の概算要求はそれらに比べると少なく、対前年度増減率は+7.6%にとどまりました。
文教関係予算の中では、「国立大学改革の推進」や「大学等奨学金事業の充実」、「学校施設等の老朽化対策等の推進」等の予算が多くを占めました。
政府は平成29年4月の消費税の10%への引き上げをひかえ、財政に対する世間の目が一層厳しくなっている背景を踏まえ、骨太の方針2015で「2020年度のPB赤字解消」を打ち出し、政策的経費をできるだけ抑えようと試みました。
そのため、文部科学省としても、義務教育費国庫負担金を増やすような施策はとれなかったのでしょう。
その結果、教職員定数は、法律の改正によらない形で、加配定数として3,040人の改善を要求しましたが、少子化等による教職員定数の自然減が▲3,100人でしたので、教職員定数合計では、▲60人の要求となりました。
また、その他の「学校における働き方改革」に関連する様々な施策に対しては、「チーム学校の実現に向けた業務改善等の推進事業」が前年度に引き続き策定されたり、ほとんどの施策を増額する方向で要求したり、新たな施策を打ち出したりして少しずつ進めました。
それにしても、このシリーズの記事を書いていて思うのは、年々、文部科学省の事業がどんどん増えていっているなあ、ということです。
この記事の1ページの文字数もどんどん増えています。(-_-;)
そして、事業の増加と平行して、〇〇アドバイザーとか、△△支援員とか、××プロジェクトとかの学校を支援する立場の人や、支援するプロジェクトも増えています。
それらは、学校にとってもちろんありがたいことです。
しかし、その人たちと学校の間に立って、勤務に対する事務手続きや調整を行う立場の人の仕事の量が増えてしまいます。
それらを担当するのは、学校内では、校長や教頭、主幹、事務職員などです。
ですから、1つの学校に教頭や事務職員を複数配置することや、渉外担当の職員を兼務ではなく専任で置くことなどの措置を同時に進めていくことが必要だと思います。
そうしないと、学校の働き方のための事業が、逆に学校の働き方改革を阻害することになる可能性が高いと思います。
次回は、”学校における働き方改革は可能か㉔~学校における働き方改革が始まったきっかけと教員の給与、平成27年までの社会全体の働き方改革の経緯、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」~”をお送りします。
この記事では、「学校における働き方改革」は、実は、給特法に基づいて支払われる教職調整額の制度の見直しを進めるために始まったことが分かります。
是非ご覧下さい。
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