はじめに
9月1日の報道で、「休日の部活動は、教員以外の指導者によって行う。」という計画を、文部科学省がまとめたことについての報道がありました。
このことが、これまで部活動指導を負担に思い、部活動の外部化を熱望しながら、私生活を犠牲にして指導してこられた中高教員の間で、SNS上で大変話題になっています。
そこで、今回は、年度ごとに順番に書いてきた働き方改革シリーズの内容を急遽変更し、文部科学省の「第4回 学校における働き方改革推進本部」の議事内容から、部活動に関することについて詳しくお伝えします。
なお、「学校における働き方改革は可能か」シリーズでは、⑯で「部活動外部化及び地域による支援」、㉗で「民間活力による新たな運動部活動の仕組み構築」、㉛で「部活動指導員配置」、㉝で「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」など、文部科学省が行ってきた運動部活動の外部化のための政策の歩みが分かる内容を多数書いてきましたので、是非お読みください。
学校における働き方改革推進本部の設置と工程表について
「学校における働き方改革推進本部」は、平成31年1月25日に中央教育審議会から出された「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の答申がなされたことを受けて設置されました。
1月25日には、「学校における働き方改革推進本部」から、「学校における働き方改革に関する工程表」が発表され、この表に基づいて、学校における働き方改革が計画的に推進されることになりました。
学校の働き方改革を踏まえた部活動改革 概要
改革の方向性
令和2年9月1日に、「学校における働き方改革推進本部(第4回)」が開かれました。
その中で、「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革」について討論されました。
「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革 概要」の、「改革の方向性」の中で、
部活動は必ずしも教員が担う必要のない業務であることを踏まえ、部活動改革の第一歩として、休日に教科指導を行わないことと同様に、休日に教師が部活動の指導に携わる必要のない環境を構築
部活動の指導を希望する教師は、引き続き休日に指導を行うことができる仕組みを構築
とあり、希望する教師は、引き続き休日に部活動の指導を行うことができる仕組みになるようです。
具体的な方策
休日の部活動の段階的な地域移行
「具体的な方策」の中で、
休日の部活動の段階的な地域移行(令和5年度以降、段階的に実施)
とあり、休日の部活動が地域に移行するのは、3年後の令和5年度以降になるようです。
そして、地域人材の育成やマッチングの仕組みを構築すること、教員が、休日の部活動指導者として、副業としての収入を得ることができるようにするために、兼職兼業の仕組みを活用していくことが、計画されています。
休日の指導や大会への引率を担う地域人材の確保(育成・マッチングまで民間人材の活用の仕組みの構築、兼職兼業の仕組みの活用)
また、「休日の部活動の段階的な地域移行」の中には、他にも、
保護者による費用負担、地方自治体による減免措置等と国による支援
とあり、やはり、部活動が民間に移行するとなると、指導者には謝金の支払いが必要になります。
また、使用する道具代や場所の使用料にも費用が必要になります。
したがって保護者が費用を負担することになるということです。
ただし、地方自治体と国から、補助を出す方針のようです。
合理的で効率的な部活動の推進
さらに、「合理的で効率的な部活動の推進」の中に、
主に地方大会の在り方の整理(実態の把握、参加する大会の精選、大会参加資格の弾力化等)
と書かれており、参加する大会を減らす方向のようです。
注意書き
そして、注意書きとして、
以上の取組は、主として中学校を対象とし、高等学校においても同様の考え方を基に取組を実施
私立学校は、上に示した公立学校の取組を参考に、教師の負担軽減を考慮した適切な指導体制の構築に取り組むことが望ましい。
とあるので、高校でも、同様な体制に移行することが計画されているようです。
ただし、私立学校については、「適切な指導体制の構築に取り組むことが望ましい」とあるので、学校によっては、文部科学省の計画に沿わない形で、特色のある学校教育を行っていくこともあるようです。
学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について
学校の働き方改革も考慮した部活動改革の考え方
部活動の意義と課題
学校における働き方改革推進本部(第4回)では、「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」という文書も示されました。
その「学校の働き方改革も考慮した部活動改革の考え方」の節の中に「部活動の意義と課題」という項があり、
部活動は、生徒の自主的・自発的な参加により行われるものであり、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、学習指導要領に位置付けられた活動である。
とあります。
ここで私が注目したいのは、
の3点です。
私の感想はこんな感じです。(私は関西人ではありませんが、何となく関西弁っぽくしてみました‥。)
部活動は、生徒の自主的・自発的な参加により行われるものです。
今まで強制的に全員参加せんといかん学校たくさんあったやん。何を今さら言うとんねん。
部活動は、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものです。
部活動を行うと学習意欲が向上する?初めて聞いたわ!家の子なんて部活動一生懸命やりすぎて、授業中寝とったんだけど。
部活動は、学校教育の一環として、学習指導要領に位置付けられたものです。
学習指導要領を改訂せえへんと、部活動はなくならへんの?
部活動って、「学校教育の一環として学習指導要領に位置付けられたもの」なのに、「参加したい生徒だけ参加すればいい」って矛盾しとらん?
具体的な方策
地域部活動の運営主体
「具体的な方策」の節の中に、「地域部活動の運営主体」という項があり、地域部活動を行う際の注意事項がいろいろ書かれています。
休みの大会・コンクールへの参加については、平日の学校部活動に参加する生徒のみで参加する場合で校長が認めるときは、地域部活動に参加する生徒が学校代表として参加することが考えられる。
学校代表としての大会参加を含め、地域部活動の際に事故が発生した場合は、地域部活動の運営主体や大会の主催者が責任を負うことになる。
生徒が怪我をした場合の救護や保護者、学校、教育委員会等への連絡など、事故発生時の役割分担について、あらかじめ明確にする。
なお、大会への引率については、指導のみを担う場合と比べて地域人材の確保が当面限定的になると考えられるため、やむを得ない場合に限り、教師が学校部活動として大会引率を行うことも考えられる。
休みの大会・コンクールへの参加については、校長が認めるときは、生徒が学校代表として参加することがあるそうです。
地域部活動中に事故が発生した場合は、地域部活動の運営団体や大会の主催者が責任を負うことになるようです。
「大会への引率については、指導のみを担う場合と比べて地域人材の確保が当面限定的になる」と書かれているということは、引率をする人材は、地域人材のうち誰でもいいというわけではないのでしょうか。
そして、やむを得ない場合は、教師が休日の大会の引率を行う場合もあるということです。
休日の指導等を担う地域人材の確保
地域部活動において休日の指導を希望する教師は、教師としての立場で従事するのではなく、兼職兼業の許可を得た上で、地域部活動の運営主体の下で従事することとなる。
今年度中に兼職兼業の考え方や労働時間管理、割増賃金の支払い等について整理を示すこととする。
とあります。
土日に地域部活動に従事した教師は、その分の労働時間が、月45時間までの時間外労働の中に組み込まれるのか注目したいですね。
そして、「割増賃金」と書かれているのは、地域部活動に従事する教師の給与が割増されるということでしょうか。
これも非常に気になるところです。
そして、
兼職兼業の運用に当たっては、あくまで休日の指導を希望する教師の申請を教育委員会が許可する仕組みであることから、教師が希望しないにもかかわらず、休日の指導等に従事させることがないよう十分留意する。
ということです。
まとめ
今回は、予定を変更して、「学校における働き方改革を本部(第4回)」で話し合われた部活動に関する内容についてお伝えしました。
「休日の部活動は、地域部活動として、地域人材による運営団体が担う。」「教師は、希望すれば、兼職兼業として、休日の部活動の指導もすることができる。」「保護者の費用負担が生じてくる。」「地域部活動で事故があった場合は、運営団体が責任を負う。」等のことが分かったと思います。
まだまだ議論しなければいけない問題はいろいろありそうです。
でも、この方向性に沿って、休日の部活動の地域への移行がスムーズに行われるといいですね。
そして、いずれは、平日の部活動も、地域に移行することが、一般の多くの中高教師の願いなのではないでしょうか。
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