はじめに
「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか②~校長・副校長・教頭は、60歳以降、役職定年により、降格?」で、「管理監督職上限年齢制(役職定年制)が始まることで、公立学校の校長・副校長・教頭は、60歳以降は平教員に戻るの?」という疑問に対して調べた結果を詳しく書きました。
その中で「管理監督職勤務上限年齢制の例外措置」のことに触れました。
そして、「管理監督職勤務上限年齢制の例外措置」のうちの1つである「管理監督職勤務上限年齢による降任等の例外(特例任用)」の中の「特定管理監督職群」として、公立学校の校長・副校長・教頭が、人事院規則で規定されるだろう、という結論であることを述べました。
そのことにより、
- 年齢別構成の偏り等により後任の補充が困難な場合に限り、公立学校の校長・副校長・教頭は、60歳以降も引き続き、校長・副校長・教頭として降任又は転任することができ、定年退職日まで最長で5年延長することができる。
- 年齢別構成の偏り等により後任の補充が困難でない場合は、公立学校の校長・副校長・教頭は、60歳以降、役職定年により降格して、平教員に戻る場合がある。
と予想しました。
その後、令和4年の6月、9月と地方議会が開催され、各自治体で続々と地方公務員の定年延長に関する条例が制定されています。
この記事で、これらの、既に条例が制定された自治体では、人事委員会規則で公立学校の校長・副校長・教頭が「特定管理監督職群」として規定され、降任の補充が困難な場合は、60歳以降も管理職として働けることが決まったのかについて、令和4年9月現在の最新の情報を書いていきます。
結論は、「公立学校の校長は、『特定管理監督職群』として認定されるが、公立学校の副校長・教頭は『特定管理監督職群』として認定されない場合がある。」です。
東京都の特定管理監督職群
「職員の定年等に関する条例の一部を改正する条例」で特定管理監督職群について規定
令和4年6月1日に東京都「職員の定年等に関する条例の一部を改正する条例」が制定されました。
その第3章「管理監督職勤務上限年齢制」第9条第3項で特定管理監督職群について規定されました。
任命権者は、第1項の規定により異動期間を延長することができる場合を除き、他の職への降任をすべき特定管理監督職群(職務の内容が相互に類似する複数の管理監督職であって、これらの欠員を容易に補充することができない年齢別構成その他の特別の事情がある管理監督職として人事委員会規則で定める管理職をいう。以下この項において同じ。)に属する管理監督職を占める職員について、当該特定管理監督職群に属する管理監督職の属する職制上の段階の標準的な職に係る標準職務遂行能力及び当該管理監督職についての適性を有すると認められる職員(当該管理監督職に係る管理監督職勤務上限年齢に達した職員を除く。)の数が当該管理監督職群の数に満たない等の事情があるため、当該職員の他の職への降任により当該管理監督職に生ずる欠員を容易に補充することができず業務の遂行に重大な障害が生ずると認めるときは、当該職員が占める管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して一年を超えない期間内で当該異動期間を延長し、引き続き当該管理監督職を占めている職員に当該管理監督職を占めたまま勤務させ、又は当該職員を当該管理監督職が属する特定管理監督職群の他の管理監督職に降任し、若しくは転任することができる。
「職員の定年等に関する条例施行規則の一部を改正する規則」で特定管理監督職群の具体的な職種を規定
令和4年6月17日「東京都人事委員会規則の一部改正等」が施行されました。この中の「職員の定年等に関する条例施行規則の一部を改正する規則」第6条第4項で、「管理監督職への任用の制限の特例」として特定管理監督職群の具体的な職種が規定されました。
管理監督職勤務上限年齢制の導入に伴う新設(第6条)
異動期間の延長に係る規定(第1項~第3項)
異動期間を延長する場合において、発令通知書を交付すること、職員の同意は書面によること、人事委員会への承認の申請については人事委員会が定める様式により行うことを規定
特定管理監督職群を規定(第4項)
- 行政系の出先機関の部長
- 行政系の出先機関の課長
- 行政専門職
- 都立学校等の校長
- 都立学校等の副校長
- 運輸系の出先機関の課長
都立学校等の校長・副校長は特定管理監督職群として規定するという内容です。
都立学校等の副校長は他の自治体の多くにある教頭職と似た役職です。
都立学校等には教頭職はありません。
ですので、東京都立学校等では、学校の管理職のうちで特定管理監督職群と規定されなかった職種はありません。
東京都 特定管理監督職群まとめ
東京都では、都立学校等の校長と副校長は特定管理監督職群に規定されたため、校長や副校長としての能力や適正がある職員数が必要数に満たない等の事情がある場合に限り、60歳以降も校長または副校長として勤務することができます。
また、条文から、校長が副校長に降任したり、校長が他の学校に校長として転任したりすることができると解釈できます。
大阪府堺市の特定管理監督職群
一般に、多くの自治体の市町村立小中学校の教職員(県費負担教職員)は市町村の職員でありながらも、人事権は県の教育委員会にありますが、政令指定都市の場合は、教職員の人事権は市にあります。
そして、大阪府堺市は大阪府では大阪市に次いで人口が多く、政令指定都市です。
ですので、堺市単独で教職員の定年引上げに伴う関係条例の整備も行うことができます。
「堺市職員の定年等に関する条例」で特定管理監督職群について規定
堺市令和4年第3回定例会で地方公務員法の一部改正に伴う関係条例の整備等に関する条例が制定されました。
そして、「堺市職員の定年等に関する条例」が改正され、第3章「管理監督職勤務上限年齢制」の第9条第3項で特定管理監督職群について規定されました。
任命権者は、第1項の規定により異動期間を延長することができる場合を除き、他の職への降任をすべき特定管理監督職群(職務の内容が相互に類似する複数の管理監督職であって、これらの欠員を容易に補充することができない年齢別構成その他の特別の事情がある管理監督職として人事委員会規則で定める管理職をいう。以下この項において同じ。)に属する管理監督職を占める職員について、当該特定管理監督職群に属する管理監督職の属する職制上の段階の標準的な職に係る標準職務遂行能力及び当該管理監督職についての適性を有すると認められる職員(当該管理監督職に係る管理監督職勤務上限年齢に達した職員を除く。)の数が当該管理監督職群の数に満たない等の事情があるため、当該職員の他の職への降任により当該管理監督職に生ずる欠員を容易に補充することができず業務の遂行に重大な障害が生ずると認めるときは、当該職員が占める管理監督職に係る異動期間の末日の翌日から起算して一年を超えない期間内で当該異動期間を延長し、引き続き当該管理監督職を占めている職員に当該管理監督職を占めたまま勤務させ、又は当該職員を当該管理監督職が属する特定管理監督職群の他の管理監督職に降任し、若しくは転任することができる。
「職員の定年引上げに伴う関係条例の整備等に関する条例の制定について」に特定管理監督職群に公立学校の校長を指定する方針を明記
堺市における「庁議」とは、市長、特別職、局長などで構成し、市の行政運営の基本方針、重要施策及び重要課題への対応等について審議し、併せて各部局間の総合調整を行う会議です。
令和4年8月16日に行われた堺市の庁議の議事要旨が公表されました。
そこに「職員の定年引上げに伴う関係条例の整備等に伴う条例の制定について」の案件が話し合わたことが書かれています。
その中に、
管理監督職勤務上限年齢制(役職定年制)について、管理監督職員は60歳に達した日以降の最初の4月1日に非管理監督職へ降任する。
※小・中・支援・高等学校の校長は、特定管理監督職群として特例任用の対象とし、60歳以降も引き続き留任可能
と明記されています。
堺市立の小・中・支援・高等学校の校長は、特定管理監督職群として規定するという内容です。
堺市には副校長という職はないようですので、特定管理監督職群として規定されなかった学校管理職は教頭職ということになります。
堺市 特定管理監督職群まとめ
堺市では、市立学校の校長は、特定管理監督職群に規定されたため、校長としての能力や適正がある職員数が必要数に満たない場合等の事情がある場合に限り、60歳以降も校長として勤務することができる(※教頭に降格して管理職にとどまることはできない)ということです。
そして、堺市立の学校では、教頭は60歳以降は必ず管理職でない平教員に戻るということです。
ただし、ここに書いた内容は、堺市議会で決定されたものではありませんので、確実にこの内容で議決されるかどうかは分かりません。
まとめ
東京都の場合は、学校の管理職のうち特定管理監督職群として規定されなかった職種はなく、校長、副校長ともに特定管理監督職群に規定されました。
しかし、堺市では、校長は特定管理監督職として規定された一方、教頭は規定されませんでした。
よって、他の自治体も、校長は特定管理監督職群として規定される可能性が高いと考えられますが、副校長や教頭については自治体により特定管理監督職群として規定されない場合もあると予想されます。
堺市のように、副校長や教頭を特定管理監督職群として規定しない場合、副校長や教頭が60歳に達した場合は必ず降格して平教員に戻ることになります。
令和4年9月18日現在、地方公務員の定年延長について、地方議会で審議中、または議決されたばかりの自治体が多いです。
各自治体のホームページや報道記事などで、各自治体の公立学校職員の管理監督職勤務上限年齢制の詳しい内容が分かる情報が、ほとんど公表されていません。
ですので、ここでは東京都と堺市の2例のみについて紹介して説明しました。
今後も各自治体が公表する情報を引き続き調べていきたいと思います。
私の別の記事「地方公務員法改正案施行で60歳以降の勤務条件はどう変わるのか①~定年前再任用短時間勤務制~」で令和5年度から施行される地方公務員法改正で新設された定年前再任用短時間勤務制のことも詳しく分かります。ぜひ読んでみてください。
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