- はじめに
- 平成29年度までの「学校における働き方改革」の経緯
- 教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(平成29年4月28日)
はじめに
「学校における働き方改革は可能か㉔」で、平成27年度までの働き方改革の経緯を説明し、その後のシリーズでも、学校における働き方改革に関連する施策について紹介してきました。
今回は、まずそれらのおさらいを含め、平成29年度までの学校における働き方改革の経緯について説明してみたいと思います。
その後、「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」、「経済財政運営と改革の基本方針2017」、「未来投資戦略2017」、平成30年度概算要求までの、文部科学省の働き方改革に関する施策、の順番に書いていきます。
平成29年度までの「学校における働き方改革」の経緯
平成27年度から平成29年度までの「学校における働き方改革」に関する施策
平成27年には、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」(「学校における働き方改革は可能か㉔」参照)、平成28年に「学校現場における業務の適正化に向けて」(「学校における働き方改革は可能か㉗」参照)がそれぞれ文部科学省から通知されました。
また、平成28年度から、「教育委員会による学校の業務改善のための取組状況調査」(下図参照)が始まり、平成28年度に「チーム学校の実現に向けた業務改善等の推進事業」(「学校における働き方改革は可能か㉕」参照)、平成29年度には、「学校現場における業務改善加速事業」(「学校における働き方改革は可能か㉙」参照)が実施されました。
そして、平成29年度予算編成では、法改正による加配定数の基礎定数化や、加配定数の改善で、868人の定数改善が行われることが決定し、64,000人の加配定数のうち約3割を、10年かけて基礎定数化することも明記されました。(「学校における働き方改革は可能か㉙」参照)
昭和41年度は月8時間、平成18年度は月34時間の教員の残業時間
そんな中、平成28年度に10年ぶりの全国的な教員勤務実態調査が行われ、その速報値が平成29年4月に出されました。
結果は、後述するように、小・中学校ともに、10年前の平成18年度の調査に比べて勤務時間が大幅に増えているというものでした。
平成18年から遡ること40年前の昭和41年度の教員の時間外労働時間は、小中学校平均で月約8時間でした。
それが、平成18年度の教員勤務実態調査では小中学校平均で月約34時間まで膨れ上がっていました。(「学校における働き方改革は可能か④」参照)
「義務教育等教員特別手当」の縮減の経緯
平成18年6月2日に「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行政改革推進法)が施行されました。
その中で、「政府は、『学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材に関する特別措置法(人材確保法)』(「学校における働き方改革は可能か③」参照)の廃止を含めた見直しその他の公立学校の教職員の給与の在り方に関する検討を行う。」と決定していました。
さらに、「基本方針2006(平成18年7月7日)」でも、「義務教育費国庫負担金については、地方公務員の給与構造改革や地方における民間給与水準への準拠を徹底させる。」、「人材確保法に基づく優遇措置(義務教育等教員特別手当)を縮減する。」ことが、閣議決定されていました。(「学校における働き方改革は可能か③」参照)
そのため、平成20年度概算要求で、文部科学省は「人材確保法に基づく優遇措置(義務教育等教員特別手当)」を、2.76%の縮減することを要求事項に盛り込みました。(「学校における働き方改革は可能か⑤」参照)
教職調整額の見直しはされなかった
文部科学省は、平成20年度概算要求では、教員の職務の見直しを行い、それぞれの職に応じた役割分担の明確化を図ることなどを通して、教員の残業時間を平成18年の「月34時間」の半分の「月17時間」程度まで減らすことを提案しました。
そして、その残業時間に見合うように、教職調整額を10%に引き上げることも合わせて要求しました。
さらに、教職調整額の一律支給を見直し、教員の職務負担に応じて支給率に差をつけることを要求しました。(「学校における働き方改革は可能か⑤」参照)
しかし、平成20年度予算では、教職調整額の増額はされませんでした。
平成19年3月29日「今後の教員給与の在り方について(答申)」で教員の業務削減を宣言
そんな中、文部科学省は、平成19年3月29日に、「今後の教員給与の在り方について(答申)」を発表しました。
そして、教員の職務の見直しや学校事務の軽減・効率化又は事務体制の強化を図ることにより、教員の仕事量を減らすことを掲げました。
また、「義務教育等教員特別手当等により、教員の給与の一定程度の水準が安定的に確保され、安心して教育活動に取り組むことができるようにすることが必要。」としながらも、「義務教育等教員特別手当」は縮減、教員の給与については「それぞれの職務により金額を変え、メリハリのある教員給与にしていく。」という考えを示しました。(「学校における働き方改革は可能か④」参照)
平成18年以降10年間、改善されないばかりか逆に増加した教員の残業時間
そして、平成18年度の教員勤務実態調査から10年間、平成28年度まで、文部科学省としては、業務の見直しを進めてきたつもりでした。
しかし、後述するように、平成28年度の教員勤務実態調査では、逆に教員の残業時間は大幅に増えて、過労死ライン(1ヶ月の残業時間80時間以上)を超えている教職員が小学校では約3割、中学校では約6割いる、という実態が明らかになったのでした。
教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(平成29年4月28日)
平成29年4月28日に文部科学省より、「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」が発表されました。
教員勤務実態調査 概要
教員勤務実態調査 目的
教職員指導体制の充実、チーム学校の推進、学校の業務改善の推進等の教育政策について、これらが教員の勤務実態に与える量的・質的な影響を明らかにし、エビデンスを活用した教育政策※1の推進に必要な基礎的データを得るため、教員の勤務実態に関する調査研究※2を実施。
(「教育政策に関する実証研究」の1つとして、平成28・29年度の2か年計画で実施。)
※①「エビデンスを活用した教育政策」、※②「教育政策に関する実証研究」については、「学校における働き方改革は可能か㉘参照)
教員勤務実態調査 調査対象
小学校400校、中学校400校(確率比例抽出により抽出。)に勤務する教員(校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、講師、養護教諭、栄養教諭)。
当該校のフルタイム勤務職員全員を対象。
教員勤務実態調査 調査日程
10月期(小・中各200校)
10月17日(月)~10月23日(日)、又は10月24日(月)~10月30日(日)
(予備週:11月7日(月)~11月13日(日)、又は、11月14日(月)~11月20日(日))
11月期(小・中各200校)
11月7日(月)~11月13日(日)、又は11月14日(月)~11月20日(日)
(予備週:11月28日(月)~12月4日(日))
1日当たりの勤務時間の時系列変化①(職種別:平日)
1日当たりの勤務時間の時系列変化④(年齢階層別:土日)
1週間当たりの勤務時間の時系列変化①(職種別)
1週間の総勤務時間の分布 ①教諭(主幹教諭・指導教諭を含む。)
1日の勤務時間の内訳①
1日の勤務時間の内訳②
業務内容別の勤務時間①(教諭)
業務内容別の勤務時間②(時系列変化:教諭・平日)
業務内容別の勤務時間③(時系列変化:教諭・休日)
属性別勤務時間①(担任児童数・授業担当生徒数と総勤務時間、成績処理)
属性別勤務時間②(部活動の状況別)
(参考1)教員調査基礎集計表(抜粋)
あなたは、1週間に何コマの授業を担当していますか。
小学校
教員の1週間の授業数は、小学校では、26コマ以上が40.9%で最も多く、次に多いのが、21~25コマで34.2%となっています。
中学校
教員の1週間の授業数は、中学校では、21~25コマが49.9%で約半数、次に多いのが26コマ以上で20.8%となっています。
昨年にあなたが取得した有給休暇は何日程度でしたか。
小学校
1年間に取得した有給休暇の日数は、小学校教員では、6~10日が30.2%で最も多く、11~15日が22.7%、16~20日が15.6%でした。
中学校
1年間に取得した有給休暇の日数は、中学校教員では、6~10日が33.4%で最も多く、3~5日が20.8%、11~15日が13.6%でした。
「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通した生産性向上~(骨太方針)(平成29年6月9日閣議決定)」
平成29年6月9日に、平成30年度予算編成の方針として、「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通した生産性向上~(骨太方針)」が閣議決定されました。
主なポイント
働き方改革
社会資本整備
人材投資・教育
人材投資の抜本的強化
大学教育の質の向上
女性の復職・再就職、社会人の学び直し支援
社会保障
2018年は節目の年
- 診療報酬・介護報酬の同時改定
- 医療計画等の実施
- 国保の財政運営の都道府県単位化の施行
※ガバナンス=内部統制・規律を図りつつ、目的達成を目指すこと
薬価制度の抜本改革
- 薬価制度の抜本的改革に向けた基本方針(28年12月)に基づき、改革を実現。
- 類似薬と比べて画期性、有用性等に乏しい新薬については、革新的新薬と薬価を明確に区別するなど、薬価がより引き下がる仕組みにする。革新的新薬を評価しつつ、長期収載品の薬価をより引き下げる。
- 医療品産業をより高い創薬力を持つ産業構造に転換。
生産性の向上
イノベーション
消費の活性化
新たな成長市場の創出、需要の喚起
可処分所得※の拡大
※可処分所得=収入のうち、税金や社会保険料などを除いた所得で、自分で自由に使える手取り収入のこと。
最低賃金を年率3%程度を目途として引上げ、全国加重平均※が1000円になることを目指す。
※加重平均=企業の賃上げ額を賃上げの影響を受ける常用労働者数を計算に反映させ、1人当たりの平均値を算出する方法をいう。
見える化
「経済財政運営と改革の基本方針(概要)/第2章 成長と分配の好循環の中長期の発展に向けた重点課題/1.働き方改革と人材投資を通じた生涯現役社会の実現/(2)人材投資・教育」のうち、関連部分抜粋
適正な勤務時間管理や業務の効率化・精選、学校の指導・事務体制の強化・充実や勤務状況を踏まえた処遇の改善等を通じて、教員の長時間勤務状況を早急に是正、年内に緊急対策をとりまとめる。
未来投資戦略2017(平成29年6月9日閣議決定)
「未来投資戦略」とは、平成25年から28年は、「日本再興戦略」という名称だったものです。
平成29年から「未来投資戦略」と変更され、令和2年9月までその名称が続きました。
「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)が「経済財政諮問会議」で話し合われるのに対し、「未来投資戦略」は、「未来投資会議」で話し合われました。
「未来投資戦略」には、企業活動を活発にさせる規制緩和策など、予算がなくても経済成長を促す取組が多く含まれていました。(「学校における働き方改革は可能か㉖」参照)
Society5.0※に向けた戦略分野
※Society5.0=狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、以下のような新たな経済社会をいう。
- サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、
- 地域、年齢、性別、言語等による格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供することで経済的発展と社会的課題の解決を両立し、
- 人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会
健康寿命の延伸
移動革命の実現
サプライチェーン※の次世代化
※サプライチェーン=製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ、供給連鎖
快適なインフラ・まちづくり
FinTech※
※FinTech=金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指す。スマートフォンを使った送金もその1つ。
Society5.0に向けた横割課題
価値の源泉の創出
データ活用基盤・制度構築
教育・人材力の抜本強化
イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システム
価値の最大化を後押しする仕組み
規制の「サンドボックス※」の創設
※サンドボックス=コンピュータ上に設けられた「安全な仮想環境」のこと。検査したいプログラムがある時、コンピュータ上で安全な仮想環境を設けて、その中でプログラムを動作させて分析すれば、もし実行されたプログラムが悪意のあるものだったとしても、コンピュータの安全は保たれる。
規制改革・行政手続簡素化・IT化の一体的推進
「稼ぐ力」の強化(経営者の大胆な投資と再編の決断を後押し)~コーポレートガバナンス改革を形式から実質へ~
公的サービス・資産の民間開放
国家戦略特区※の加速的推進
※国家戦略特区=「世界で一番ビジネスしやすい環境」を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度。平成25年度に関連する法律が制定され、平成26年5月に最初の区域が指定された。
サイバーセキュリティ
シェアリングエコノミー※
※シェアリングエコノミー=物・サービス・場所などを多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み。
地域経済好循環システムの構築
中堅・中小企業・小規模事業者の革新/サービス産業の活性化・高付加価値化
攻めの農林水産業の展開
観光・スポーツ・文化芸術
海外の成長市場の取り込み
教育委員会による学校の業務削減のための取組状況調査の結果(速報値)及び学校現場における業務改善に係る取組の徹底について(通知)(平成29年6月22日)
平成29年6月22日に、文部科学省より、「教育委員会による学校の業務削減のための取組状況調査の結果(速報値)及び学校現場における業務改善に係る取組の徹底について(通知)」が出されました。
「教育委員会による学校の業務削減のための取組状況調査の結果(速報値)及び学校現場における業務改善に係る取組の徹底について(通知)」が出された経緯
教育委員会における所管する学校に対する業務改善方針の策定等について
教育委員会における所管する学校に対する業務改善方針の策定についての調査結果
「所管する学校に対する業務改善方針・計画等を策定していない」と回答した教育委員会
教育委員会における所管する学校に対する業務改善方針の策定等の取組の徹底
勤務時間の適正把握について
教職員の勤務時間管理の把握方法についての調査結果
「タイムカードの導入等で管理している」と回答した教育委員会
勤務時間管理について
- 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること。
- 使用者は、労働基準法108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入した賃金台帳を調製しなければならないこと。
- 使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。
- 使用者が、始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
- 使用者が自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
- なお、上記の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は、ガイドラインに基づき適切な措置を講ずること。
- 労働時間の記録に関する書類について、労働基準法109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。
- 事業所において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業所内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消に努めること。
労働安全衛生管理体制の整備について
部活動の適切な運営等について
運動部活動についての調査結果
「休養日の基準を設定している」と回答した教育委員会
部活動の適切な練習時間や休養日の設定について
部活動指導員について
平成30年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(平成29年7月20日閣議了解)の骨子
平成30年度予算は、「経済財政運営と改革の基本方針2017」を踏まえ、引き続き、「基本方針2015」※(「学校における働き方改革は可能か㉓」参照)で示された「経済・財政再生計画」の枠組みの下、手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組む。
歳出全般にわたり、安倍内閣のこれまでの歳出改革の取組を強化し、予算の中身を大胆に重点化する。
要求
年金・医療等については、前年度当初予算額に高齢化等に伴う増加額(6,300億円)を加算した範囲内で要求。
ただし、増加額について、平成25年度予算から平成29年度予算までと同様、経済再生やこれまでの改革等の効果を引き続き適切に見込む。
過去5年間の増加額が高齢化による増加分に相当する伸びとなっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を平成30年度まで継続していくことを目安とする。
年金・医療等に係る経費について、「経済・財政再生計画 改革工程表」にそって着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組む。
地方交付税交付金等については、「経済・財政再生計画」との整合性に配慮しつつ要求。
義務的経費については、前年度予算額と同額を要求。衆議院議員総選挙に必要な経費の増等の特殊要因については加減算。
義務的経費を見直し裁量的経費で要求する場合は、後述の要望基礎額に含める。
その上で、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行い、可能な限り歳出の抑制を図る。
その他の経費については、前年度予算額の100分の90(「要望基礎額」)の範囲内で要求。
予算の重点化を進めるために、「人づくり革命」の実現に向けた人材投資や地域経済・中小企業・サービス業等の生産性向上に資する施策を始め、「基本方針2017」及び「未来投資戦略2017」(平成29年6月9日閣議決定)等を踏まえた諸課題について、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、各省は上記要望基礎額の100分の30の範囲内で要望。
予算編成過程における検討事項
要求・要望について、これまでの安倍内閣の取組みを基調とした効率化を行う。
その上で、「新しい日本のための優先課題推進枠」において要望された経費については、「安倍内閣のこれまでの3年間の取組では一般歳出の実質的な増加が1.6兆円程度になっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を平成30年度まで継続させていくこととする。」との「経済・財政再生計画」における国の一般歳出の水準の目安を踏まえ措置する。
「基本方針2017」で示された「幼児教育・保育の早期無償化や待機児童の解消に向け、財政の効率化、税、新たな社会保険方式の活用を含め、安定的な財源確保の進め方を検討し、年内に結論を得、高等教育を含め、社会全体で人材投資を抜本強化するための改革の在り方についても早急に検討を進める」との方針を踏まえた対応については、財源と合わせて、予算編成過程で検討する。
要求期限
要求に当たっては、8月末日の期限を厳守。
学校における働き方改革に係る緊急提言(平成29年8月29日)
平成28年8月28日に、「学校における働き方改革に係る緊急提言」が文部科学省から発表されました。
「学校における働き方改革に係る緊急提言」の目的
緊急提言
校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
業務改善を進めていく基礎として、適切な手段により管理職も含めた全ての教職員の勤務時間を把握すること。
勤務時間管理は、労働法制上、校長や服務監督権者である教育委員会に求められている責務である。
服務監督権者である教育委員会は、自己申告方式ではなく、ICTやタイムカードなど勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムが直ちに構築されるよう努めること。
教職員の休憩時間を確保すること。その上で、学校の諸会議や部活動等について勤務時間を考慮した時間設定を行うこと。
教員の勤務時間外における保護者や外部からの問合せに対応するため、服務監督権者である教育委員会は、緊急時の連絡に支障がないよう教育委員会事務局等への連絡方法は確保した上で、留守番電話の設置やメールによる連絡対応をはじめとした体制整備のための支援を講じること。
部活動の適切な運営について、教員の負担軽減や生徒の発達を踏まえた適切な指導体制の充実に向けて、休養日を含めた適切な活動時間の設定を行うとともに、部活動指導員の活用や地域との連携等必要な方策を講じること。
長期休暇期間においては、一定期間の学校閉庁日の設定を行うこと。
また、こうした点について、PTA等の協力も得ながら、保護者や地域住民等の理解を得るための取組を進めること。
管理職の役割分担を明確にするとともに、組織管理や時間管理、健康安全管理等のマネジメント研修を充実し、意識改革と実践力の向上を図ること。
全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること
学校・教職員の勤務時間管理及び業務改善の促進
「チームとしての学校」の実現に向けた専門スタッフの配置促進等
学校の指導・運営体制の効果的な強化・充実
まとめ
今回の記事では、まず、平成18年度教員勤務実態調査から始まった「学校における働き方改革」に関する施策の経緯について説明しました。
そして、10年後の平成28年度教員勤務実態調査で、減らしたはずの業務量がむしろ増えており、教員の残業時間が増えている実態が明らかになったことを書きました。
そこから、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2017」では、国として社会全体の「働き方改革」を進めることを打ち出したほか、「教員の長時間勤務状況を早急に是正、年内に緊急対策をとりまとめる。」と学校における働き方改革を重点課題として進める方針を固めました。
そして、平成29年6月22日に「教育委員会による学校の業務削減のための取組状況調査の結果(速報値)及び学校現場における業務改善に係る取組みの徹底について」という通知を出しました。
文部科学省からは、「学校における働き方改革」に対する取組みについて、各教育委員会へ再三通知してきました。
それにも関わらず、平成27年度の「教育委員会による学校の業務削減のための取組状況調査」調査と平成28年度の調査の比較から、学校の業務削減のための取組みをあまり進めていない教育委員会が多くあったことが分かりました。
例えば、「所轄する学校に対する業務改善方針・計画等を策定していない」と回答した教育委員会の割合は、都道府県は31.9%→14.9%で改善しているものの、指定都市は45.0%→45.0%と改善なし、市区町村は93.0%→92.4%とわずかに改善となっています。
また、教員の勤務時間の管理方法について「タイムカードの導入等で管理している」と回答した教育委員会の割合も少なく、都道府県は12.8%、政令市は40.0%、市区町村は8.1%となっています。
まるで、各教育委員会は、「そう言われても、業務改善なんて、そのための予算もつかないのにできない。」と、文部科学省の意向に反発しているのではないか、と感じるぐらいです。
そして、そんな地方自治体の鈍い動きに業を煮やしたのか、ついに、文部科学省から、「学校における働き方改革に係る緊急提言」が発表されました。
その中で、「『今できることは直ちに行う』という認識を教育に携わるすべての関係者が共有するとともに、必ず解決するという強い意識を持って、それぞれの立場から取組みを実行し、教職員がその効果を確実に実感できるようにする」と述べました。
この「教育に携わるすべての関係者が共有する」という言葉を見て「おやっ?!」と思う教職員の方が多くいらっしゃるのではないですか?」
平成29年当時在職されていた教職員の皆さんは、この「緊急提言」をご存じでしたか?
私自身、令和元年度まで公立小学校の正規教員として長年勤めてきましたが、実は、平成29年頃、私がこのシリーズで書いてきたような「学校における働き方改革」に関する数々の施策について、学校内で、何も知らされていませんでした。
私は、教員組合に所属していたので、機関誌で一部の情報を目にすることはありました。
そして、「残業時間が月80時間を超えると、産業医との面接になるから、残業時間を減らすように!」ということだけは、管理職から散々言われていました。
それ以外は、ほとんど何も知らずに、校務分掌で割り当てられた本来教員の仕事ではない面倒な仕事も、超過勤務しながら今までどおりし続けていました。
なぜなら、教育委員会から校長宛に通知が届いても、通知を見ることのできる管理職や事務員を除く普通の教職員への伝達は、特にそのように記載されていなければ、されてこなかったからです。(学校や自治体により、違いはあるかもしれません。)
そして、自分で調べるような知識も時間もありませんでした。
何だか長年騙されて働かされてきた気持ちです。
これが退職後、私が毎日記事を書き続けている理由の最も大きなものです。
次回の記事では、そんな時代の流れの中、文部科学省の概算要求がどのような形で出されたのか、”学校における働き方改革は可能か㉛~「学校給食費徴収・管理業務」と「部活動指導員配置」と平成30年度概算要求~”で示していきます。
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