- はじめに
- 平成29年度文部科学省予算(案)の概要
- 平成29年度文部科学省予算(案)のポイント
- 平成29年度文部科学省予算
- 平成29年度予算 義務教育費国庫負担金「『次世代の学校』指導体制強化‥1兆5,248億円(▲22億円)
- 多彩な人材の参画による学校の教育力向上~補習等のための指導員等派遣事業~‥45億8,600万円(概算要求53億7,100万円、平成28年度47億3,600万円)
- 学校現場における業務改善加速事業‥2億8,800万円(概算要求4億6,00万円、平成28年度1億2,500万円)
- いじめ対策・不登校支援等総合推進事業‥61億1,400万円(概算要求76億7,300万円、平成28年度57億1,500万円)
- インクルーシブ教育システム推進事業‥14億5,200万円(概算要求18億100万円、平成28年度10億100万円)
- キャリア教育・職業教育の充実‥2億1,300万円(概算要求3億4,700万円、平成28年度2億600万円)
- 全国的な学力調査の実施‥52億5,200万円(概算要求59億8,500万円、平成28年度52億5,900万円)
- 小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業等‥14億3,900万円(概算要求15億1,600万円、平成28年度12億2,100万円)
- 地域とともにある学校づくりの推進‥3億9,300万円(概算要求7億円、平成28年度2億9,600万円)
- 学校を核とした地域力強化プラン‥69億3,200万円(概算要求82億4,700万円、平成28年度68億3,200万円)
- 地域の教育資源を活用した教育格差解消プラン~親子の学び・育ち応援プラン~‥8,800万円(概算要求4億200万円、新規)
- 次世代の教育情報化推進事業‥5,200万円(概算要求3億円、新規)
- ICTを活用した教育推進自治体応援事業‥1億7,100万円(概算要求4億8,000万円、平成28年度2億6,100万円)
- 次世代学校支援モデル構築事業‥1億3,800万円(概算要求2億5,000万円、新規)
- 人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業‥6,800万円(概算要求1億1,400万円、平成28年度1億3,600万円)
- 学校健康教育の推進‥2億9,100万円(概算要求3億5,900万円、平成28年度2億5,700万円)
- スポーツ施策の総合的な推進①~スポーツの成長産業化~
- スポーツ施策の総合的な推進③~子供の体力の向上、学校体育・運動部活動の推進~
はじめに
平成29年度予算では、何と、「義務標準法の改正」により、教職員の基礎定数も加配定数も改善する形で、教職員定数の改善が行われることになりました。
具体的には、「加配定数の基礎定数化」として473人の増加、「加配定数の改善」として395人の増加に対し、教職員数の自然減等が4,150人ですので、合計すると教職員定数は、3,282人減になります。
前回の記事「学校における働き方改革は可能か㉘~「『エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立』のために業務が増えます」平成29年度予算1~」で、文部科学省は、平成28年度予算折衝において、財務省から「教職員定数の配置について確かなエビデンスに基づく要求を行うこと」と指摘されたことを書きました。
そして、それを受け、平成28年度に引き続き、平成29年度も「教育政策に関する実証研究」を行うことになったことにも触れました。
さらに、平成28年度予算で、財務省自ら「教職員定数の中期見通しの提示」を求めた背景には、少子化の影響や、「チーム学校」の考え方、学習指導要領の改訂による授業時数や指導内容の増加などで、将来の見通しを立てながら、教職員定数を改善せざるを得なくなった、という事情もあったことを説明しました。
実は、前回の記事では書きませんでしたが、「コロナ禍で少人数学級への移行は可能か⑤」で書いたように、平成29年度予算編成時には、財務省と文部科学省は、教員一人当たりの児童生徒数についても、考え方の相違から論争をしていました。
重要なことは、平成28年度に「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」を行ったのに、平成29年度の予算編成では、財務省より、「教育政策に関してもエビデンスに基づくPDCAサイクルの確立が必要」と指摘されたことです。
特に、外国人生徒の日本語指導や通級指導、初任者指導の加配措置の効果の検証とスクールカウンセラーの効率的な活用のための配置の在り方について指摘を受けたのです。
しかし、そうとはいえ、前述したように、教職員定数の改善を行わざるを得ない状況下であったために、平成29年度予算での教職員定数に対する大幅な改善が行われることになったわけです。
それでは、平成29年度の文部科学省の予算(案)のうち、教職員定数の改善も含めた「学校における働き方改革」に関連する施策を中心に、詳しく見ていきましょう。
平成29年度文部科学省予算(案)の概要
歳出予算の一般会計は、5兆3,097億円で、対前年度比較増減額は▲86億円、対前年度比率▲0.2%でした。平成29年度概算要求額は5兆8,266億円でした。
歳出予算のエネルギー対策特別会計は、1,095億2,500万円で、対前年度比較増減額は▲2,300万円、対前年度比率▲0.02%でした。平成29年度概算要求額は、1,412億円でした。
歳出予算の復興特別会計は、別枠になりました。
平成29年度文部科学省予算(案)のポイント
文部科学関係予算(案)のポイント
平成29年度文部科学関係予算額は、5兆3、097億円で、対前年度増減額は▲86億円、増減率は▲0.2%でした。
平成28年度予算の対前年度増減率と同じでした。
文教関係予算のポイント
平成29年度文教関係予算額は、4兆238億円で、対前年度増減額▲96億円、対前年度増減率▲0.2%でした。対前年度増減率は、平成28年度予算と同じでした。
スポーツ関係予算のポイント
平成29年度のスポーツ関係予算額は334億円で、対前年度増減額は、+10億円でした。対前年度増減率は、3.2%でした。
平成28年度の対前年度増減率は11.7%でしたので、対前年度増減率は大幅減でした。
しかし、平成28年度第2次補正予算で、
- ナショナルトレーニングセンターの拡充整備‥24億円
- ハイパフォーマンスセンターの基盤整備‥11億円
- 中学校武道場や公立社会体育施設の整備‥46億円
の合計81億円が予算措置されました。
文化芸術関係予算のポイント
平成29年度の文化芸術関係予算額は、1,043億円で、対前年度増減額は3億円でした。そして、対前年度増減率は+0.3%でした。
平成28年度の対前年度増減率は+0.2%でした。
科学技術予算のポイント
平成29年度科学技術予算額は9,621億円で、対前年度増減額は+1億円でした。対前年度増減率は+0.01%でした。
平成28年度の対前年度増減率は▲0.6%でした。
スポーツや文化芸術に比べ、伸び率はよくないです。
平成29年度文部科学省予算
平成29年度予算 義務教育費国庫負担金「『次世代の学校』指導体制強化‥1兆5,248億円(▲22億円)
教職員定数の改善‥+868人・+19億円(概算要求+3,060人・+65億円)
加配定数の基礎定数化‥+473人
加配定数の改善‥+395人
教職員定数の自然減等‥▲4,150人(▲89億円)
部活動手当の改善増‥+3億円
メリハリのある給与体系の推進や部活動指導に対する教員の負担の実態等を考慮し、休養日の設定など部活動運営の適正化に向けた取組を進めつつ、土日の部活動指導業務に係る手当を引き上げ(平成30年1月~)(3,000円→3,600円)
部活動運営適正化による部活動手当の減‥▲3億円
教職員の若返り等による給与減‥▲88億円
人事院勧告の反映による給与改定‥+136億円
平成29年度~38年度の10年間で、加配定数(平成28年度約64,000人)の約3割を基礎定数化【義務標準法の改正】
平成29年度概算要求で、「『次世代の学校』指導計画実現構想」という名称で予算を要求していたものです。
平成28年度予算で、「少子化の進展、エビデンス等を踏まえた教職員定数の中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」事業が行われた結果を受け、この10年間の教職員定数の改善計画が実現しました。(「学校における働き方改革は可能か㉘」参照)
概算要求で文部科学省が提示した「『次世代の学校』指導計画実現構想」では、1年ごとにそれぞれの事業で何人の教職員定数の改善が必要か細かく算定していました。
しかし、成立した10ヵ年計画では、「加配定数(平成28年度約64,000人)の約3割を基礎定数化」という、大まかな数字で表しただけでした。
それには、まだ「中期見通しの提示に向けた教育政策に関する実証研究」が進行途中であることが関係するでしょう。
つまり、概算要求で文部科学省が策定した「今後の教職員定数の見通し(予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し)」が、確かなエビデンスに基づいたものであるとは判断されなかったことの表れだと思います。
そのことについては、「学校における働き方改革は可能か㉘」で書いたとおり、
から分かります。
【関連施策】教育政策に関する実証研究‥5,700万円(概算要求1億2,700万円、平成28年度4,600万円)
平成29年度も、「少子化の進展や学校の諸課題に関する実証研究等を踏まえた教職員定数の中期見通しの策定に向けた教育政策に関する実証研究」事業が行われ、「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立」を目指すことになりました。
有識者や意欲ある自治体の協力を得つつ、時代の変化に対応した新しい教育への取組、いじめ・不登校、子供の貧困等の学校の課題に関する状況や、それらの課題に対応するための指導体制の在り方など、教育政策の効果を評価する実証研究を実施。
機関数
3機関→4機関
継続して実施する課題
この他、国立教育政策研究所予算において
に関する実証研究を実施。
その他1つ程度課題を追加
多彩な人材の参画による学校の教育力向上~補習等のための指導員等派遣事業~‥45億8,600万円(概算要求53億7,100万円、平成28年度47億3,600万円)
退職教職員や教員志望の大学生など多彩な人材をサポートスタッフとして学校に配置する事業です。概算要求では、13,000人分を要求し、11,100人分が予算措置されました。平成28年度は、11,500人分でした。
学校現場における業務改善加速事業‥2億8,800万円(概算要求4億6,00万円、平成28年度1億2,500万円)
いじめ対策・不登校支援等総合推進事業‥61億1,400万円(概算要求76億7,300万円、平成28年度57億1,500万円)
外部専門家を活用した教育相談体制の整備・関係機関との連携強化等‥59億1,000万円(概算要求70億700万円、平成28年度56億7,900万円)
学校等支援
スクールカウンセラーの配置拡充
スクールソーシャルワーカーの配置拡充
- 小中学校のための配置‥5,000人(概算要求同、平成28年度3,000人)
- 高等学校のための配置‥47人(概算要求同、平成28年度同)
24時間子供SOSダイヤル
自治体支援
幅広い専門家を活用していじめ問題等の解決に向けて調整、支援する取組の促進等
いじめ対策・不登校支援等推進事業‥1億7,900万円(概算要求6億2,100万円、平成28年度1,800万円)
インクルーシブ教育システム推進事業‥14億5,200万円(概算要求18億100万円、平成28年度10億100万円)
平成28年4月1日の障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の施行、平成28年8月1日施行の発達障害者支援法の改正(発達障害者支援法の一部を改正する法律)等を踏まえ、自治体のインクルーシブ教育システムの推進に向けた取組に対しての経費の一部を補助する事業でした。
特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期、社会参加までの切れ目ない支援体制整備【新規】‥30地域(概算要求同)
特別な支援を必要とする子供について、就学前から卒業後にわたる切れ目ない支援体制の整備を促すため教育部局と福祉・保健・医療・労働等の部局が連携し一貫した支援体制を構築する地域を支援する。
特別支援専門家等配置
キャリア教育・職業教育の充実‥2億1,300万円(概算要求3億4,700万円、平成28年度2億600万円)
将来の在り方・生き方を主体的に考えられる若者を育むキャリア教育推進事業‥3,200万円(概算要求7,200万円、平成28年度3,100万円)
地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業‥800万円(概算要求2,600万円、平成28年度1,200万円)※学校を核とした地域力強化プランの一部)
「キャリアプランニングスーパーバイザー」を都道府県等に配置し、地元企業等と連携した職場体験やインターンシップ及び地元への愛着を深めるキャリア教育の推進等を通じ、地元に就職し地域を担う人材を育成する。‥15人(概算要求49人、平成28年度21人)
スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール‥1億7,300万円(概算要求2億2,500万円、平成28年度1億6,400万円)
全国的な学力調査の実施‥52億5,200万円(概算要求59億8,500万円、平成28年度52億5,900万円)
概要
義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、国・教育委員会における教育施策の課題を検証し、その改善に役立て、さらに、そのような取組を通じた教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立するため、全国的な学力調査を実施するものでした。
全国的な学力調査の実施
小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業等‥14億3,900万円(概算要求15億1,600万円、平成28年度12億2,100万円)
地域とともにある学校づくりの推進‥3億9,300万円(概算要求7億円、平成28年度2億9,600万円)
協働による地域とともにある学校づくりの推進
首長局との協働による新たな学校モデルの構築事業
コミュニティ・スクール導入等促進事業‥1億6,200万円(概算要求2億3,000万円、平成28年度1億6,000万円)※「学校を核とした地域力強化プラン」の一部
学校と地域住民・保護者が力を合わせて学校の運営に取り組む「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度」)について、運営の充実や未導入地域での体制づくりへの支援等により、一層の拡大・充実を図ることで、地域とともにある学校づくりを推進する事業でした。
地域提案型の学校を核とした地域魅力化事業‥400万円(概算要求1,100万円、平成28年度1,100万円)※「学校を核とした地域力強化プラン」の一部
学校を核とした地域の魅力を創造する取組として、地域が提案する創意工夫ある独自で多様な取組を支援する事業を4自治体で行うための予算が措置されました。
自立的、組織的な学校運営体制の構築
学校現場における業務改善加速事業(再掲)
学校を核とした地域力強化プラン‥69億3,200万円(概算要求82億4,700万円、平成28年度68億3,200万円)
学校を核とした地域力強化プラン
地域学校協働活動推進事業‥64億3,500万円(概算要求75億4,100万円、平成28年度62億9,500万円)
地域コーディネーター等の配置‥17,500人(概算要求/統括コーディネーター500人、地域コーディネーター20,000人、平成28年度/統括コーディネーター250市区町村、地域コーディネーター15,000人)
地域学校協働活動の振興
地域における家庭教育支援総合推進事業‥7,300万円(概算要求1億6,300万円、平成28年度7,300万円)
地域人材の養成を通じて家庭教育支援チームの組織化、家庭教育支援員の配置等を行い、身近な地域における保護者への学習機会の提供や親子参加型行事の実施、相談対応等の支援活動を実施することで、家庭教育支援を総合的に推進する事業に、1000箇所分の予算措置がされました。
地域と連携した学校教育活動
健全育成のための体験活動推進事業‥9,900万円(平成28年度同)
地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業(再掲)
地域提案型の学校を核とした地域魅力化事業(再掲)
地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業‥8,600万円(平成28年度8,800万円)
「スクールガード(学校安全ボランティア)」の活用等により、地域ぐるみで子供の安全を見守る体制を整備する事業の予算を1,538箇所分確保することができました。
地域と連携した学校保健推進事業‥800万円(平成28年度1,000万円)
養護教諭の未配置校に対し、経験豊富な退職養護教諭をスクールヘルスリーダーとして派遣し、学校、家庭、地域の関係機関等の連携による効果的な学校保健活動の展開を図るため、53箇所分の予算措置がされました。
地域の教育資源を活用した教育格差解消プラン~親子の学び・育ち応援プラン~‥8,800万円(概算要求4億200万円、新規)
事業の要旨
家族構成の変化、厳しい労働環境、地域・経済格差の進行等により困難を抱える親子が増加しているが、こうした家庭では、親の学習、読書等の経験が十分ではない状況も見られ、結果的に子供の教育機会に影響している状況が見られる。
このような子供の教育機会の格差は、学力等の格差を生み、将来的な経済格差の要因となるなど世代間にわたる貧困の連鎖を生む要因となることから、教育格差解消に向けた取組を促進することが喫緊の課題となっている。
このため、地域の多様な教育資源を効果的に活用し、困難を抱えている親子の状況等に応じたきめ細かなアプローチを行う多様で特色のある取組モデルを構築するとともに、地域発の教育格差解消の取組を全国に普及することにより、困難を抱える親子が共に学び・育つことを応援し、家庭環境に関わらず全ての者が活躍できる一億総活躍社会の実現の促進を図る。
図書館資源を活用した困難地域等における読書・学習機会提供事業‥3,700万円(概算要求2億9,100万円、新規)
趣旨
子供の貧困問題等の困難地域等において読書格差の解消を図るため、多様な場において困難を抱える親子の読書活動を確保するとともに、図書館が地域課題解決に積極的に取り組むこととなるようその機能強化を図ることが必要である、とされています。
このため、困難地域等において図書館資源を活用した読書格差の解消に向けた活動が推進されるよう、困難を抱える親子等を対象としたブックリストや指導法等の作成等を通じて読書機会の充実を図ることがこの事業の趣旨でした。
活用現場
先駆的家庭教育支援推進事業(訪問型家庭教育支援の実施)‥2,000万円(概算要求4,700万円、新規)
趣旨
ひとり親家庭や経済的問題により家庭生活に余裕がなくなっている家庭が増加している。
また、地域のつながりの希薄化などによって、子育て家庭は、子育てについて悩みや不安を抱えて孤立しがちな状況にある。
訪問型家庭教育支援は、こうした家庭に対する効果的な支援手法としてニーズが高い一方、地域人材の不足や家庭教育支援員のスキル不足及び支援ノウハウの不足といった多くの課題がある。
事業の目的
様々な課題を抱えた家庭に対する類型別の効果的な支援モデルの開発を国の主導によりパイロット的に行う。
貧困、不登校等の支援が必要な家庭の類型ごとにメニューを検討して構築するとともに、保護者を学びの場や地域とのつながりの場につなぎ、保護者の教育力を高めることを重視する。
事業の概要
文部科学省
都道府県‥5か所(概算要求同)
支援体制の構築
市町村‥2か所(概算要求4か所)
各家庭における訪問型家庭教育支援の実施
学びを通じたステップアップ支援促進事業‥2,000万円(概算要求2,300万円、新規)4箇所
趣旨
高校中退者等は、就職やキャリアアップにおいて不利な立場にあり、高卒資格が必要であると認識している者が多い一方で、高校中退者を対象とした学び直しのための支援体制が十分でない、という現状がありました。
そこで、国において、高校中退者を対象に、高等学校卒業程度の学力を見に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる地方公共団体の取組について、実践研究を行うとともに、その研究成果の全国展開を図る、という趣旨で行われた事業でした。
概要
教育相談
教育委員会事務局OBや退職教員等によって、下記のような学習に関する相談・助言を行いました。
本人のみでなく、保護者を含めた相談も可能としました。
学習支援
ICT機材をはじめ、教科書センター等の協力を得て、教科書や副教材の閲覧・貸出も可能としました。
困難を抱える親子を対象とした自然体験活動推進事業
「困難を抱える親子を対象とした自然体験活動推進事業」に、2,800万円を要求しましたが、予算措置されませんでした。
次世代の教育情報化推進事業‥5,200万円(概算要求3億円、新規)
事業の要旨
次期学習指導要領を見据え、教科横断的な情報活用能力の育成に係るカリキュラム・マネジメントの在り方等の実践的な研究を実施する事業でした。
また、ICTを活用したアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善等、次期学習指導要領下での教員のICTを活用した指導力向上を推進するものでした。
概算要求では、「官民コンソーシアムを設立し、優れた教育コンテンツの開発・共有等を推進」とありましたが、その内容は削除され、予算も大幅に減額されました。
事業の内容
情報教育の推進に関する調査研究
推進校を指定し、教科横断的な情報活用能力の育成にかかるカリキュラム・マネジメントの在り方や、それに基づく指導方法・教材の利活用等(プログラミングや情報セキュリティに関する学習を含む)について実践的な研究を実施するものでした。
小・中・高等学校14校分の予算措置がされました。
次世代型ICT活用指導力向上等
ICTを活用したアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善等、次期学習指導要領下での教員のICTを活用した指導力向上を推進するものでした。
ICTを活用した教育推進自治体応援事業‥1億7,100万円(概算要求4億8,000万円、平成28年度2億6,100万円)
「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」への予算額は、概算要求額から大幅に削られ、事業の数も減らされました。
校務におけるICT活用促進事業【新規】
ICT活用教育アドバイザー派遣事業
文部科学省にICT活用教育アドバイザリーボードを設置して、ICT環境の整備を図ろうとする自治体のニーズに応じてアドバイザーを派遣し、ICTを活用した教育の推進計画やICT機器整備計画(機器購入の調達手法も含む)の策定や校務支援の在り方についての留意事項等の助言を行う事業でした。
概算要求では、平成28年度予算での45地域の倍となる90地域へアドバイザーを派遣する予算を要求しましたが、措置されたのは46地域分でした。
学校情報における情報セキュリティを確保したICT環境強化事業
要求した「学校情報における情報セキュリティを確保したICT環境強化事業」への予算は措置されませんでした。
調査研究
教員のICT活用をサポートするICT支援員の育成や、情報活用能力調査の今後の在り方に関する調査研究を実施する内容でした。
次世代学校支援モデル構築事業‥1億3,800万円(概算要求2億5,000万円、新規)
「次世代学校支援モデル構築事業」は、総務省と連携し、全国5地域、各地域3校で実証研究を行う事業でした。
人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業‥6,800万円(概算要求1億1,400万円、平成28年度1億3,600万円)
学校健康教育の推進‥2億9,100万円(概算要求3億5,900万円、平成28年度2億5,700万円)
要旨
児童生徒が生涯にわたって健康で安全に生活ができるよう、がん教育、通学路の安全確保など学校における安全管理・安全教育、学校を核として家庭を巻き込んだ食育の推進を図るための事業でした。
内容
がんの教育総合支援事業‥3,200万円(概算要求3,500万円、平成28年度3,200万円)
学校におけるがん教育の取組を推進するため、教員及び外部講師の質の向上や指導方法の充実に継続して取り組む必要があることから、教員や外部講師の資質向上を目的とした研修会を全国で実施すると共に、がん教育の指導方法の充実に積極的に取り組む地域や学校を支援する事業です。
要求どおり、10箇所分の予算が措置されました。
防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業‥2億2,600万円(概算要求2億3,200万円、平成28年度2億2,500万円)、42地域
教育手法の開発
被災地支援を通した体験型防災教育の推進
学校の安全管理体制の充実
つながる食育推進事業‥3,300万円(概算要求7,000万円、新規)、6箇所
現状
これまで学校を中心とした多様な取組による成果が見られたものの、食を取り巻く環境が大きく変化する中、子供の食に関する課題を解決するには、学校における取組だけでは限界があり、家庭を巻き込んだ取組が必要である、という現状がありました。
第3次食育推進基本計画では、朝食欠食率の現状が4.4%であるのに対し、0%とするのが目標に設定されていました。
事業概要
子供の日常生活の基盤である家庭においても食育を推進していく必要があることから、栄養教諭と養護教諭等が連携した家庭へのアプローチや、体験活動を通した食への理解促進など、学校を核として家庭を巻き込んだ取組を推進することで、家庭における食への理解を深める、という内容でした。
効果検証・普及
- 朝食欠食率、肥満度、共食の回数、子供・保護者の意識変化等、子供の変化に係る共通指標を予め設定。
- 事業終了後に全国の取組の成果を検証
- 実効性のある取組みを全国へ普及
スポーツ施策の総合的な推進①~スポーツの成長産業化~
スポーツ産業の成長促進事業‥1億3,000万円(概算要求4億円、新規)
背景・目的
スポーツの成長産業化の実現を図るため、官民が連携した協議会の開催や専門家の派遣等による収益性の高いスタジアム・アリーナの整備促進、スポーツ団体等の経営人材育成、新たなスポーツビジネスの創出促進を通じて、スポーツが有するポテンシャルを最大限に発揮し、スポーツの自律的好循環を実現するとともに、スポーツ市場拡大を図る目的で始まった事業です。
事業内容
大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)創設事業‥1億円(概算要求4億円、新規)
大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の具体的な在り方について検討する産学官連携の協議会を開催するとともに、大学スポーツの活性化に全学的体制で取り組む大学において、専門人材の配置や先進的モデル事業を展開する事業でした。
日本版NCAAの組織の充実
大学スポーツ振興の推進
大学スポーツを全学的に推進する体制を整える大学に対して、「大学スポーツ・アドミニストレーター」の配置等のスポーツ活動を支援し、大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の中核となる大学群の形成につなげる事業内容でした。
スポーツ施策の総合的な推進②~スポーツ参画人口の拡大、地域社会の活性化、障害者スポーツの推進~
スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト‥9,000万円(概算要求1億5,900万円、新規)
スポーツツーリズム・ムーブメント創出事業‥2,000万円(概算要求1億円、新規)
運動・スポーツ習慣化促進事業‥8,000万円(概算要求1億円、新規)
Specialプロジェクト2020‥7,600万円(概算要求2億2,000万円、新規)
2020年東京大会のレガシーとして共生社会を実現するため、2020年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催するためのモデル事業や、特別支援学校等を活用した地域における障害者スポーツの拠点づくり事業等を実施するものでした。
スポーツ施設環境整備事業費補助金
24億円を要求しましたが、予算措置されませんでした。
しかし、前述したように、平成28年度第2次補正予算で、
- 中学校武道場や公立社会体育施設の整備‥46億円
が予算措置されました。
スポーツ施策の総合的な推進③~子供の体力の向上、学校体育・運動部活動の推進~
運動部活動の在り方に関する調査研究事業‥1億円(概算要求2億2,000万円、新規)
運動部活動に関する実態調査
中学校・高等学校の教員、生徒、保護者、外部指導者等を対象とした運動部活動に関する総合的な実態調査を実施するものです。
運動部活動に関するスポーツ医・科学的調査研究
スポーツ医・科学の観点を取り入れた、生徒の発達段階や学校生活への影響を考慮した練習時間や休養日の設定に関する調査研究を実施する内容です。
民間活力による運動部活動支援体制の構築のための実践研究
民間活力による新たな運動部活動の仕組みを構築するための課題を探り出し、その解決策について実践研究を行うものでした。
運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの策定
運動部活動における休養日の設定等や、地域のスポーツ指導者等の活用に際しての留意事項等について明確にした運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを策定することとしました。
学校における体育・スポーツ資質向上等推進事業‥7,200万円(概算要求1億4,400万円、新規)
具体的な課題
プログラム開発
取組を実践研究することによって成果と課題を整理し、また、それらの諸課題を解決するプログラムを開発することで、全国的な普及を促進することを目指しました。
取組例
武道等の円滑な実施の支援‥47億2,500万円(概算要求47億8,500万円、平成28年度47億2,900万円)
武道等指導充実・資質向上支援事業‥1億9,000万円(概算要求、平成28年度1億9,500万円)
教員の資質向上・指導力強化
武道等や課題が見られる領域の指導を担う教員の資質向上を図る。
特色ある武道指導の実践
中学校武道の指導の充実を図る。
支援体制の強化(拡充)
関係団体との連携による支援体制の強化のための取組
指導成果の検証
中学校保健体育において武道等を必修化したことによる成果と課題の検証を踏まえた課題解決のための指導法等
公立中学校武道場等の整備促進‥45億3,400万円(概算要求同、平成28年度同)
まとめ
平成29年度予算では、平成23年度以来6年ぶりに義務標準法の一部改正による教職員定数の改善が行われました。
「通級指導」、「外国人児童生徒等への日本語指導」、「初任者指導」、「指導方法工夫改善加配の一部」の4種類の加配定数が基礎定数化されました。
そして、「小学校専科指導」、「貧困等に起因する学力課題の解消」などの加配定数に対しても教職員数の改善が行われました。
さらに、平成29年度~38年度の10年間で、加配定数の約3割を基礎定数化する計画が予算案に表記されました。
ただし、1年ごとの細かい教職員改善数までは、明確にされませんでした。
これは、平成28年度の「教育政策に関する実証研究」だけでは、財務省が求めた「確かなエビデンスに基づいた教職員定数の中期見通しの提示」ができなかったことの表れです。
そして、平成28年度「経済・財政再生計画 改革工程表」の計画どおりに、平成29年度、平成30年度の2年間で実証研究をさらに進めることになりました。(「学校における働き方改革は可能か㉘」参照)
その他の事業については、「次世代の教育情報化推進事業」、「次世代学校支援モデル構築事業」の2つがICT関連の新規の事業として予算措置されたました。
さらに、学校が子供を通し、家庭に対しても食育を行う「つながる食育推進事業」が、新規で始まりました。
その他、「武道等の円滑な実施の支援」事業に47億2,500万円の予算がつきました。
前々回の記事でも武道教育に対する政府の思惑について触れましたが、2021年度から全面実施される中学校学習指導要領改訂で、武道指導の内容が充実されることになりました。
従前どおり、「柔道」、「剣道」及び「相撲」の中から選択して履修する方法に加え、以前から示されている「なぎなた」に加えて、「空手道、弓道、合気道、少林寺拳法、銃剣道」についても履修させることができることになりました。
そこで、教員の資質向上・指導力強化、支援体制の強化などの予算が措置されたものでした。
それだけではなく、「公立中学校武道場の整備促進」として、公立中学校武道場新改築事業に対して45億2,400万円が国庫補助されるなど、武道の普及に対しての政府の力の入れようが見て取れます。
そして、「運動部活動の在り方に関する調査研究事業」が新規で予算措置され、「民間活力による運動部活動支援体制の構築のための実践研究」が始まり、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの策定」も予算化されました。
新たな事業がいくつか増えて教員の負担は例年どおりに増しましたが、運動部活動においては、教員の負担を減らす方向へと着実に歩みを進めたことは、喜ばしいことでした。
次回、「学校における働き方改革は可能か㉚~教員勤務実態調査速報値と働き方改革緊急提言と経済財政運営と改革の基本方針2017~」では「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」、「経済財政運営と改革の基本方針2017」、「未来投資戦略2017」、「平成30年度概算要求までの文部科学省の働き方改革に関する施策」の順番に書いていきます。
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