はじめに
学校における働き方改革は可能か⑨では、平成21年8月30日の第45回衆議院議員総選挙で、民主党が高校無償化や少人数学級の推進等を「マニフェスト」(政権公約)に掲げたことについて書きました。
そして、総選挙で勝利した民主党が、三党連立政権を樹立し、平成22年度予算は、「連立政権樹立に当たっての政策合意」を踏まえて編成することとなりました。
この記事では、文部科学省が平成22年度予算の概算要求を、どのような内容で提出したのか、書いていきます。
平成22年度概算要求
平成22年度予算編成の方針について
政権交代を受けて、平成21年7月1日に閣議了承された「平成22年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」は廃止されることになりました。
新たに、3党連立内閣が提出した「平成22年度予算編成の方針について」が、9月29日に閣議決定されました。
マニフェストに従い、新規施策を実行するため、すべての予算を組み替え、新たな財源を生み出す。
各大臣は既存予算についてゼロベースで厳しく優先順位を見直し、できる限り要求段階から積極的な減額を行うこととする。
とあり、マニフェストに従って、既存の予算を大幅に組み替えようとする姿勢が見られます。
予算編成プロセスの変更
平成22年度は、予算編成プロセスも大きく変更されました。
それは、概算要求が提出された後、
行政刷新会議における事業仕分けを全面公開で実施。
するということです。
そして、
事業仕分けにおける評価結果を踏まえ、歳出を大胆に見直し。
横断的な事業の見直しを徹底。
するところです。
この、事業仕分けのときの映像は、TVでも放映されましたので、私もよく記憶しています。
蓮舫議員が、「次世代スパコン事業」で開発中の、スーパーコンピュータ「京」の世界最先端の処理速度について、「世界一になる理由には何があるんでしょうか?2位じゃだめなんでしょうか?」と発言したことは、世間でも大きなニュースになりましたね。(おそらく30代以上の方ならご存知でしょう。)
予算の決定の際は、
・事業仕分けの評価結果等の反映状況を公表。
・22年度の国債発行額を約44兆円以内に抑える。
ということもあらかじめ明記されています。
平成22年度概算要求当初案(平成21年8月)
8月にまず、概算要求の一回目の案が提示されました。
「義務教育費国庫負担金」については、その「趣旨」で、「教職員定数の改善」が、掲げられています。
定数改善は、主幹教諭の配置などで、5,500人の要求でした。
退職教員等外部人材非常勤講師(サポート先生)は、新学習指導要領で授業時間数が増えることや、習熟度別少人数指導への対応等にあたるため、32,900人(週12時間換算)に増やす要求も示しました。
教職調整額の見直しについては、何も触れていませんね。
前年度までの議論で、結局従前のまま、一律4%の支給率で、一応の決着が着いたということでしょうか。
「メリハリのある給与体系の推進」という文言は残っており、平成23年1月から、管理職手当を改善させる旨が記されています。
平成22年度概算要求当初案(平成21年8月)の見直し(平成21年8月~10月)
3党連立政権への政権移行後、マニフェストを踏まえて、概算要求当初案(8月)の見直しがされました。
「平成22年度文部科学省 概算要求の概要」では、「2.要求に対する基本方針」として、
特にマニフェストや総理指示に基づく施策に重点的に取り組み、知識社会において最も重要な社会全体の資産であるソフト(知的財産)やヒューマン(人材)への効果的な投資に厳選
とあります。
そして、「3.文教関係」の②では、
将来の日本を支える人材を育てるため、教員の質や数を充実することなどによる質の高い教育を実現するための施策を展開
と明記されています。
この文言を証明するかのように、概算要求の見直し案では、退職教員等外部人材の非常勤講師により人材を確保する予定だった少人数指導を、定数措置により行うという要求に変えています。
ただし、その人数は、非常勤講師として要求していた人数が、32,900人(週12時間換算)に対し、2,052人でした。
週12時間担当する非常勤講師3人分≒週36時間担当する正規教員又は常勤講師1人としても、少なすぎますね。
そして、少人数指導教員の定数が増えた分、主幹教諭の定数を減らしたので、総教職員定数改善は、概算要求の当初案と同じ5,500人のままでした。
マニフェストを踏まえた平成22年度概算要求(平成21年10月16日)
文部科学省一般会計全体の概算要求額としては、6兆461億円の当初案から、見直しによって、5兆7,562億円に減額されました。2,899億円の削減になりました。
そして、「マニフェスト(「三党連立政権合意書」を含む。)を踏まえた概算要求が、各省庁から提出されました。
文部科学省概算要求額は、マニフェストに掲げられ、新設された、高校実質無償化ための予算(4,624億円)等のため、前年度比4,745億増となっています。
行政刷新会議による事業仕分け(平成21年11月~)
さらに、行政刷新会議による事業仕分けが行われました。
事業仕分けの結果や国民から寄せられた意見を踏まえ、それを予算案にどう反映したのかについても、公表されました。
初等中等教育に関連した内容では、「全国学力・学習状況調査」や「全国体力・運動能力・運動習慣等調査」について、行政刷新会議による事業仕分けがありました。
事業仕分けの結果や国民の意見聴取、地方自治体や学校の要望等を踏まえ、両調査とも、全員実施ではなく、抽出式とする方向で意見が取りまとめられました。
まとめ
平成22年度概算要求では、三党連立政権の樹立と、それに伴う予算編成の方針の変更により、9月~10月に概算要求の練り直しを行いました。
さらに、概算要求について、行政改革会議による事業仕分けで検討され、予算案が固められていきました。
次回「学校における働き方改革は可能か⑫~3党連立政権による事業仕分け後、平成22年度予算成立~」では、平成22年度予算の成立についてお伝えしていきます。
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