はじめに
このシリーズでは、主に、毎年の予算編成の内容を通して文部科学省の施策を考えてきました。
そして、文部科学省の予算編成や施策に影響力のある、毎年の政府の経済・財政の施策の方針、いわゆる「骨太の方針」についての内容も扱ってきました。
今回は、まず、この「骨太の方針」とは、いったい誰が、そのようにして立案しているのかということを説明します。
その後、平成28年の「骨太の方針(経済・財政運営と改革の基本方針2016)」や、「日本再興戦略2016」の内容から、学校教育の経済効果と政府の予算の関係について考えます。
「骨太の方針」の存在が、学校教育に予算をかけない国を作り出す?
政府の予算編成の方針は、前年の6、7月頃に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)で表明されます。
この方針を決めるのは、首相を議長とする「経済財政諮問会議」です。
経済や財政に関係する省庁の大臣はこの会議の議員になっています。
文部科学大臣は、残念ながら、この会議の議員ではありません。
(文部科学省をはじめ、その他の各省庁の大臣は、関連する内容を話し合う時に「臨時議員」として、この会議に参加することはできます。)
国の施策の方針である、「骨太の方針」はこの「経済」や「財政」に関する会議で決定します。
つまり、日本の政策は、国の経済力や利益率を高めるものに重点化される傾向にあるということです。
私は、この「骨太の方針」の存在こそが、学校教育への予算が増えない大きな理由ではないかと思います。
なぜなら、小学校や中学校・高等学校等で「学校教育」を行うことは、国や国民の利益に直接結びつきにくく、即効性もなく、成果が見えにくいからです。
それどころか、国や企業や国民の収益の一部を使って行うものだからです。
そこで、今回は、まず、この「骨太の方針」や「経済財政諮問会議」について、説明していきます。
「骨太の方針」について
「骨太の方針」とは
「骨太の方針」は、政府の経済財政運営の指針で、毎年、次年度の予算編成作業が本格化する前の夏に策定します。
首相自ら議長を務める「経済財政諮問会議」が司令塔となり、経済政策・財政政策の柱となる基本方針を答申し、最終的に閣議決定されます。
「骨太の方針」の由来
2001年(平成13年)1月の経済財政諮問会議で、退陣前の森喜朗首相が、「重要な課題として、”骨太”の政策を明確にすることが必要」と提言したことがこの呼び方の由来です。
その後、当時の宮沢喜一財務相が「骨太」と命名したと言われています。
「骨太の方針」を策定する理由
「骨太の方針」を策定する理由は、財務省(旧大蔵省)主導ではなく、首相主導の予算編成や政策決定をすることができることです。
そして、「骨太の方針」を定めることによって、各省庁の過大な要求を抑え、利益が多く見込める政策や首相が望む政策に予算を多くかけることが可能となります。
政府が「骨太の方針」を策定して政策を進めるプロセス
- 毎年の概算要求前の6、7月頃に、「経済財政諮問会議」で、「骨太の方針」の総論を作成。
- 各省庁が各論を作成、経済財政諮問会議で発表。
- 各省庁が各論の実施プロセスを「工程表」として作成、提出。
- 閣議決定され、予算編制・税制改正・法改正に反映。
- その後も、各省がその進捗状況を定期的に政府に報告する。
「骨太の方針」の変遷
- 2001年(平成13年)6月に小泉純一郎政権が「聖域なき構造改革」の着実な実施(※学校における働き方改革は可能か㉘参照)のために初めて作成。
- 2001年~2006年‥「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の名称。
- 2007年~‥「経済財政改革の基本方針」の名称に変更。
- 2009年7月~2012年‥民主党政権で中断。
- 2013年~2020年現在‥自民党政権で復活。「経済財政運営と改革の基本方針」の名称に変更。
経済財政諮問会議について
法的根拠
「内閣府設置法」(平成11年法律第89号)によって、「経済財政諮問会議」は、以下のように定められています。
第十八条 本府に、内閣の重要政策に関して行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に資するため、内閣総理大臣又は内閣官房長官をその長とし、関係大臣及び学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための機関(以下「重要政策に関する会議」という。)として、次の機関を置く。
経済財政諮問会議
総合科学技術・イノベーション会議
性格
経済財政政策に関する重要事項について有識者等の優れた識見や知識を活用しつつ、内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、内閣府に設置された合議制(※)機関。(※)「合議制」=行政機関の意思が複数の構成員の合議によって決定される制度。
構成員
- 人数を、議長(内閣総理大臣)及び10名の議員、計11名以内に限定。
- 内閣官房長官、経済財政政策担当大臣以外の議員は決定せず。
- 民間有識者の人数を、議員数の4割以上確保することを法定。
- 上記「議員」の他に、議案を限って、他の国務大臣を、「臨時議員」として、会議に参加させることができる。
所掌事務
- 内閣総理大臣の諮問に応じて、経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針、その他の経済財政政策に関する重要事項についての調査審議
- 内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じて、国土形成計画法に規定する全国計画その他の経済財政政策に関連する重要事項について、経済全般の見地から政策の一貫性・整合性を確保するための調査審議
- 上記1.2.について、内閣総理大臣に意見を述べること
事務局機能
- 内閣府の内部部局のうち、経済財政政策に関する総合調整を担当する政策統括官部局が、事務局機能を担う。
- 同部門には、行政組織の内外から人材を登用する。
- 経済財政諮問会議が有効に機能するため、内閣府と内閣官房の連携を図る。
経済財政諮問会議議員名簿(令和2年 管政権)
- 議長 菅 義偉 内閣総理大臣
- 議員 麻生 太郎 副総理 兼 財務大臣
- 同 加藤 勝信 内閣官房長官
- 同 西村 康稔 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼 経済再生担当大臣
- 同 武田 良太 総務大臣
- 同 梶山 弘志 経済産業大臣
- 同 黒田 東彦 日本銀行総裁
- 同 竹森 俊平 慶應義塾大学経済学部教授
- 同 中西 宏明 株式会社日立製作所 取締役会長 兼 執行役
- 同 新浪 剛史 サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長
- 同 柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科教授
専門委員と専門委員会
「経済財政諮問会議令」(平成12年政令第257号)で、「専門委員」と「専門委員会」について、以下のように定められています。
内閣は、内閣府設置法(平成11年法律第89号)第25条の規定に基づき、この政令を制定する。
専門委員
第一条
内閣総理大臣は、内閣府設置法第19条第一項第一号及び第二号の調査審議並びに同三号の意見具申の前提となる特定の専門的事項を調査させるため必要があるときは、経済財政諮問会議(以下「会議」という。)の意見を聴いて、会議に専門委員を置くことができる。
- 専門委員は、当該特定の専門的事項に関し学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
- 専門委員は、その者の任命に係る当該特定の専門的事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
- 専門委員は、非常勤とする。
専門調査会
第二条
会議は、内閣府設置法第19条第一項第一号及び第二号の調査審議並びに同項第三号の意見具申の前提となる特定の専門的事項に係る調査をさせるため、その議決により、専門調査会を置くことができる。
- 専門調査会に属すべき者は、専門委員のうちから、議長が指名する。ただし、議長は、必要があると認める場合は、専門調査会に属すべき者として議員を指名することができる。
- 専門調査会は、その設置に係る調査が終了したときは、廃止されるものとする。
経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太2016)(平成28年6月2日閣議決定)
第1章 現下の日本経済の現状と課題
日本経済の現状と課題
世界経済の状況と我が国の課題
- 我が国経済のファンタメンタルズ(※)に大きな変化はないが、昨夏以降、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっており、国内経済も個人消費や設備投資等の民需に力強さを欠いた状況。(※)「ファンタメンタルズ」=国や企業などの経済状態を表す指標。経済成長率、物価上昇率、財政収支など。
- その背景にある人口減少、高齢化、現役世代の先行き不安等の構造的課題への取組により、生産性・イノベーション力を引き上げ、働き方改革を進めること等により、潜在成長率を高めていくと同時に、新市場の開拓、潜在需要の掘り起こし等、需要の拡大が重要。
- 加えて、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、経済財政と財政健全化の双方を一体として実現することが重要。
熊本地震への対応
- 平成28年度補正予算により、1日も早く、被災者が安心して生活でき、被災地での復興を成し遂げられるよう、できることはすべてやる。その決意の下で政府一丸となって全力で取り組む。
「成長と分配の好循環」の目指すところ
- 「新・三本の矢」は、「成長と分配の好循環」を確立することにより、地方を含め日本経済全体の持続的拡大均衡を目指すもの。
- また、「地方創生」により、人口減少と地域経済の縮小の悪循環に歯止めをかけ、将来にわたって地域の成長力を確保する。
600兆円経済に向けた道筋の基本的考え方
- 「新・三本の矢」は、一億総活躍の考え方の下、「国民の希望の実現」を中核として、新たな需要と供給を生み出し、その成果を国民一人ひとりに分配することにより好循環を強化するもの。その結果として、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長を実現。
東日本大震災からの復興・創生
- 「復興・創世期間(平成28年度~32年度)」においては、被災者の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現することを目指す。
- 復旧・復興事業の規模と財源は、復興期間10年間で32兆円程度を確保。
- 福島の原子力在外被災地域においては、遅くとも平成29年3月までに避難指示解除準備区域・居住制限区域の避難指示を解除できるよう環境整備に引き続き取り組む。
第2章 成長と分配の好循環の実現
「成長と分配の好循環」の実現に向け、引き続き、「経済再生なくして、財政健全化なし」を基本とし、消費税率の10%への引上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する。「経済・財政再生計画」の枠組みの下、アベノミクスの成果と活用等を図りつつ、短期・中長期的視点から、適切な経済財政運営に努める。
結婚・出産・子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現:経済成長の隘路の根本にある構造的な問題への対応
- 少子高齢化への対応は待ったなしの最重要課題。アベノミクスの成果の果実が得られつつある今こそ、「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえ、取組を進める。
結婚・出産の支援
- 地域の特性に応じた自治体の取組支援、企業等による結婚支援の取組支援、ライフプランニング・キャリア形成のための教育強化、若者・子育て世帯向け住宅支援、不妊治療の充実。
子ども・子育ての支援、子供の貧困対策等
- 妊娠期から子育て期まで切れ目ない子育て支援体制の拡充等。
- 様々な保育ニーズに対応し、待機児童の解消等の保育の受け皿等の確保や保育士の処遇改善、放課後児童クラブや児童養護施設等における処遇改善、三世代同居・近居の推進等。教育費負担軽減、世代を超えた貧困の連鎖をなくす取組、若者の経済基盤の強化等。
就業を希望する女性・高齢者の就業促進、非正規雇用労働者の待遇改善等
- 同一労働同一賃金の実現など非正規雇用労働者の待遇改善、長時間労働是正に取組み、多様な働き方の選択肢を広げる。非正規雇用労働者の正社員転換等を推進する。
- 高齢者の就業率を高め、地方の特性に応じた働き方改革を進める。
- 女性が働きやすい税制・社会保障制度・配偶者手当等への見直しの具体的検討。
女性の活躍推進
- 「女性活躍加速のための重点方針2016」に基づき、働き方改革や男性の家事・育児への参画促進、女性活躍のための行動計画の策定・情報公表等の推進。
介護の環境整備等
- 在宅・施設サービスの整備、保険者等の好事例の全国展開、介護基盤整備や介護人材の処遇改善等
- 認知症施策推進総合戦略の実現、拡充された介護休業制度の周知、介護と仕事の両立可能な働き方の普及、健康寿命の延伸への取組等。
障害者等の活躍支援、地域共生社会の実現
- 障害者、難病患者、がん患者等の就労支援及び職場定着支援、医療と職業生活の両立支援、障害者の文化芸術活動の振興等を進め、社会参加や自立を促進。
成長戦略の加速等
- 600兆円経済の実現に向け、成長戦略の深化・実現に取り組む。「官民戦略プロジェクト10」として、第4次産業革命への対応、世界最先端の健康立国への取組等に取り組む。
生産性革命に向けた取組の加速
- 人材育成(実践的な職業教育、教育研究拠点の強化、体系的育成等)
- 教育再生(世界トップレベルの学力達成と基礎学力の向上、チーム学校、給付型奨学金の創設に向けた検討等)
- 官民を挙げて、IoT(※),ビッグデータ、人工知能の研究開発を推進。2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上(政府1%)とすることを目標。(※)「IoT」=様々な物がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。
- 企業の中長期的な成長力・収益力の強化、サービス産業の生産性向上。
新たな有望成長市場の創出・拡大
- 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の開催への取組等。文化芸術立国・スポーツ立国を目指す。
- PPP(※1)/PFI(※2)事業の推進、メンテナンス産業の育成・拡大。(※1)「PPP」=行政と民間が連携して、より効率的で質の高い行政サービスの提供を目指す手法。官民連携。(※2)「PFI」=公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して民間主導で行う手法。
- 観光の基幹産業化、攻めの農林水産業の展開。
TPP等に対応した海外の成長市場との連携強化
- TPP(※1)を活用した新たなグローバル・バリューチェーン(※2)構築等に必要な施策を講じる。TPP協定の早期発効、日EU・EPA(※3),RCEP(※4),日中韓FTA(※5)等の締結を推進。(※1)「TPP」=環太平洋経済連携協定(※2)「グローバル・バリューチェーン」=国境を越えた機能的分業(※3)「日EU・EPA」=日EU経済連携協定(※4)「RCEP」=アールセップ。東アジア地域包括的経済連携(※5)「日中韓FTA」=日中韓自由貿易協定
- 一年以内を目途とする行政手続き等の抜本的な簡素化等の政策パッケージ等により、対日直接投資をさらに促進。事業環境の国際的なイコールフッティング(※6)を確保。(※6)「イコールフッティング」=商品やサービスを販売する上で、双方が対等な立場で競争できるよう、条件を同一にすること。
- 農林水産品、インフラシステム等分野横断的に、「安全」・「安心」・「高品質」等の評価を「日本ブランド化」するとともに、クールジャパン戦略(※7)を推進し、輸出・観光を促進。(※7)クールジャパン戦略=外国人がクール(かっこいい)ととらえる日本の魅力である、「食」、「アニメ」、「マンガ」、「ゲーム等のコンテンツ」、「ファッション」等の情報発信、海外への商品・サービス展開、インバウンド(訪日外国人旅行)の国内消費を進めること。
- 外国人材の活用の拡大のため、世界最速級の「日本版高度外国人材グリーンカード(※8)」の創設など諸外国以上に魅力的な入国・在留管理制度を整備するとともに、子弟の教育環境を含む生活環境整備を進める。(※8)「グリーンカード」=永住権
地方創生、中堅・中小企業・小規模事業者支援
- 「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)」、「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」に基づく、地方創生の深化を実現する政策の推進等。
- 中堅・中小企業・小規模事業者が第4次産業革命に対応できるようICT投資やIT人材の育成を支援。生産性向上に向けた取組等を推進するとともに、その経営基盤強化を図る。
- 地域の活性化(広域的な高速交通ネットワークの早期整備・活用を含む)、沖縄振興、地方分権改革等を推進。
防災・国土強靱化、成長力を強化する公的投資への重点化
- 社会資本整備の重点化と生産性革命、国土強靭化、防災・減災、バリアフリー化の推進等の都市の活力の向上等。
規制改革の推進
- 現在の規制改革会議の設置期限(平成28年7月末)以降も切れ目なく規制改革に取り組む。国家戦略特区は、平成29年度末までの2年間を「集中改革強化期間」とし、「岩盤規制」の改革等を行う。
経済統計の改善
- 各種統計の改善に向けた取組方針を年内に取りまとめ。
個人消費の喚起
- 人口減の下でも需要先細り懸念にとらわれず、少子化・高齢化・グローバル化等、時代の変化に対応した新たな財・サービスを生み出す。
賃金・可処分所得(※)の引上げ等 (※)可処分所得=給与やボーナスなどの個人所得から、税金や社会保険料などを差し引いた残りの手取り収入
- 労働分配率の低下傾向に歯止めをかける。賃金、最低賃金の継続的な引上げを実現するための環境整備。
- 社会保障の効率化による社会保険料の増加の抑制等。
潜在的な消費需要の実現
- 健康長寿分野での自治体や企業・保険者における先進的な取組の全国展開。高齢者の生活環境向上のため、民間活力による健康・医療サービスの創出・利用促進等。
- 国内・外国人旅行者双方による観光・旅行消費の活性化のため、「観光ビジョン実現プログラム2016」に基づき「明日の日本を支える観光ビジョン」の早期実現を目指す。
ストックを活用した消費・投資喚起
- 良質な住宅ストックの流通促進、住宅の長寿命化に資するリフォームの促進、地域の価値を高めるための空き店舗等のリノベーション(※)支援、不動産投資の促進等。(※)「リノベーション」=機能、価値の再生のための改修
消費者マインドの喚起
- 過去のプレミアム商品・旅行券、子育て支援バウチャー等(※)の分析を踏まえつつ、全国規模のセールスイベントの実施等も含め、消費者マインドの喚起策を検討。(※)「バウチャー」=引換券、割引券、金券、クーポン券。
成長と分配をつなぐ経済財政システムの構築
アベノミクスの成果の活用
- これまでのアベノミクスの取組により、歳入面では税収が大幅に増加し、歳出面でも現役世代の生活保護世帯や失業給付の減少、歳出改革の取組等により、成果が生まれてきている。
- 我が国の経済成長の隘路(※)の根本にある人口減少、少子高齢化という構造的課題に対処するため、アベノミクスの成果も活用しつつ、一億総活躍社会の実現等の重要課題に係る取組を推進。(※)「隘路(あいろ)」=物事を進める妨げとなる困難な問題
行政手続の簡素化・効率化・オンライン化
- 規制改革、行政手続簡素化、IT化を一体的に進め、事業者目線で規制・行政手続コストを削減。
歳出効率化の成果等を現役世代や地域に還元する仕組みの構築
- 歳出改革や経済再生による歳出抑制の成果を、子育て支援等に還元することができる仕組みを構築。
資源配分の効率化
- 国・地方のワイズ・スペンディング(※)を推進し、効率的な資源配分を実現。(※)「ワイズ・スペンディング」=賢い支出
安全・安心な暮らしと持続可能な政財社会の基盤確保
外交、安全保障・防衛等
- 戦略的な外交を強力に展開。「国家安全保障戦略」を踏まえ、各国との協力関係を拡大・深化させる。「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」等に基づき、実効性の高い統合機動防衛力を効率的に整備。
暮らしの安全・安心(治安、消費者行政等)
- 良好な治安を確保するための「『世界一安全な日本』総合戦略」に基づく取組、司法分野での取組や消費者の安全・安心確保のための取組。
資源・エネルギー(原子力の安全確保を含む)
- エネルギー革新戦略等により、エネルギー分野での投資拡大・効率改善による経済成長とCO₂排出抑制の両立を図る。
地球環境への貢献
- 世界の温室効果ガスの削減等の地球温暖化対策、循環共生型社会の構築等に取り組む。
第3章 経済・財政一体改革の推進
経済・財政一体改革の着実な推進
- 「経済再生なくして財政健全化なし」。600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す。「経済・財政再生計画」における歳出・歳入両面の取組をすすめるため、主要分野の改革の方向性を具体化するとともに、経済・財政再生アクション・プログラムに基づきPDCAサイクルを実効的に回していく。
- 追加的な歳出増加要因(子ども子育て・家族支援等)については、必要不可欠なものとするとともに、適切な安定財源を確保する。また、一定期間内の追加的な歳出増加要因については、資産売却等を含めた財源を確保し、財政規律を堅持する。
先進・優良事例の展開促進、国と地方の連携強化、「見える化」の徹底・拡大
先進・優良事例の展開促進
- 健康増進・予防サービス、公共サービス分野をはじめ、改革事例を関係者間で共有し、広く基礎自治体レベルの現場まで浸透・拡大を図る。
国と地方の連携強化
- 国と地方の協議の場をはじめとして、対話を積み重ねながら着実に推進。地方からの提案型も含めた仕組み作り、地方行財政改革、頑張る地方を応援するための施策の拡充。
「見える化」の徹底・拡大
- 「見える化」の基礎となるデータセットを公開。集約・分析したデータを一元的かつ容易に閲覧・検索できるシステムを構築。
ワイズ・スペンディングの仕組みの強化
- 優先順位付けとデータ分析による効果の評価などの分析を、経済財政諮問会議での議論等を通じて、適切に予算編成の過程に取り込む。
- 義務的経費も、健康寿命の延伸や住民サービスの広域化、IT化の進展等を踏まえ、制度全体の見直し等を行い、エビデンスに基づくPDCAサイクルを徹底。
- 国庫支出金の性格に応じ、成果の向上と「見える化」に一段の工夫が必要。地方の裁量度が高いものは、国庫支出金のパフォーマンス指標の設定・評価のための分野横断的仕組みを構築。
実効的なPDCAサイクルの構築
- 実効的なPDCAサイクルを構築するため、経済財政諮問会議において、概算要求の検討に着手する前から議論と精査を進める。経済・財政一体改革推進委員会において、主導的に進捗管理、点検、評価を行う。各府省庁は、概算要求等に適切に反映させる。
主分野ごとの改革の取組
社会保障
- 経済・財政再生計画に掲げる44の改革項目について、改革工程表に沿って、着実に実行。その中で、次のような取組を推進。
- 医療費の地域差の半減に向け、医療費適正化基本方針に係る追加検討。
- 医療従事者の需要の見通し、医師に係る実効性のある地域・診療科偏在対策等を検討。
- 医療費の増加要因や地域差について、更なる分析。医療・介護の総合的な対策を推進するため、双方のデータを連結した分析。
- 保険者によるデータの集約・分析、保険事業の共同実施の支援等によりデータヘルスを強化。
- がん検診と特定健診の受診率の向上。
- 人生の最終段階における医療の在り方について、国民的な議論を踏まえながら、医療従事者から適切な情報提供と説明がなされた上で、患者本人による決定を基本として人生の最終段階における医療を進めるプロセスの普及を図る。
- 保険者機能強化、高齢者の自立支援・介護予防等を通じた給付の適正化に向けた取組へのインセンティブ付け等に係る制度的枠組みについて検討。
- 平成28年度診療報酬改定の影響の調査・検証。
社会資本整備等
- コンパクト・プラス・ネットワークの形成と公的ストックの適正化を図る。
- 国際競争力の強化、国土強靱化、防災・減災対策、老朽化対策等の分野で、ストック効果が最大限発揮されるよう、安定的・持続的な公共投資を推進。ストック効果の評価手法の具体化と実務的な運用方法の確立。
- 建設生産システムの生産性の向上や担い手の確保を図る。
- コンパクトシティがもたらす多様な効果を明らかにする指標を開発。
- 上下水道、文教施設、都市公園、公営住宅について、集約化・複合化等を進める具体的ガイドラインを策定。
- 公共施設のストック量等を地方公共団体間で比較可能な形で示す「見える化」を着実に推進。
- 多様なPPP/PFIの推進のため、「PPP/PFI推進アクションプラン」の10年間で21兆円の事業規模目標の確実な達成に向け、PDCAを徹底、進捗状況等の「見える化」。
- ピンポイントの渋滞対策等により人流・物流を効率化。「社会のベース」の生産性向上を実現。
地方行政改革・分野横断的な課題
- 窓口業務の適切な民間委託等の加速と自治体クラウド等のICT化・業務改革等の全国展開、それらの自治体の広域化・共同化を軸に、以下のような取組を推進。
- トップランナー方式の導入に際し、趣旨、経費の算定基準、今後のスケジュールを公表、周知。
- 平成27年度決算より、経年変化や類似団体比較を含めて住民一人当たりコストを性質別・目的別に網羅的な「見える化」を実施。
- ユーザーが様々な条件を設定して自治体間比較ができるデータベースの早期実現等。
- 公共施設の集約化、自治体が直面する課題について、地域の実情に応じた広域化・共同化等。
- 「国・地方IT化・BPR(※1)推進チーム報告書」に基づく進捗状況の把握や必要な措置を行う。(※1)「BPR」=業務改革
- 地方自治体のIT化・BPRの推進に向け、政府CIO(※2)による支援、自治体におけるCIOの役割を果たす人材確保。(※2)「CIO」=情報システムやIT部門を統括する役職、最高情報責任者
- 自治体の情報システムの運用コストの圧縮(3割減)を図る。
文教・科学技術等
- 少子化の影響を踏まえた予算の効率化、民間資金の導入促進、予算の質の向上・重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本方針として改革。
- 教職員定数の中期見通しの策定に向けて、教育政策に関する実証研究を進める。
- 上記の主要歳出分野のほか、全ての歳出分野において、聖域なく改革を進める。
歳入改革、試算・債務の圧縮
- 歳入増加に向けて、課税ベース(※1)の拡大等を通じ、新たな税収増を生み出す。マイナンバーをキーとした仕組みを早急に整備。税・社会保険料徴収の適正化。(※1)「課税ベース」=課税対象とされる範囲
- 経済社会の構造が大きく変化する中、引き続き、税体系全般にわたるオーバーホール(※2)を進める。国際的な租税回避等を巡る近年の動きを踏まえ、グローバルなビジネスの構造変化に対応した国際課税制度の再構築等について、制度・執行の両面から更なる取組。(※2)「オーバーホール」=徹底的に見直すこと
- 一億総活躍社会の実現に資する観点等に照らし、国公有地の有効活用を推進、不要な資産の売却等。
第4章 当面の経済財政運営と平成29年度予算編制に向けた考え方
経済の現状及び今後の動向と当面の経済財政運営の考え方
- 「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」(※)も踏まえ、個人消費、住宅・自動車等の耐久財等の動向、海外経済等に最新の注意を払い、この秋に向けて総合的かつ大胆な経済対策をとりまとめること等により、デフレに後戻りすることなく完全に脱却できるよう、万全の対応を行う。(※)「G7伊勢志摩経済イニシアティブ」=平成28年5月26日及び27日、伊勢志摩にて、安倍総理の議長の下でG7サミットが開催された。日本、米国、フランス、ドイツ、英国、イタリア、カナダの7か国首脳と、EU代表者で行われた。「G7伊勢志摩総合イニシアティブ」は、世界経済、貿易、インフラ、保険、女性、サイバー、腐敗、といった具体的な分野におけるG7としての行動を取りまとめて合意したもの。G7が世界経済を牽引するとの明確な姿勢を発信した。
- 賃金・可処分所得の引上げ、規制改革、消費・投資喚起策等を推進するとともに、成長戦略の加速と一億総活躍社会の構築を通じ、成長と分配の好循環を実現。
- 日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待。
平成29年度予算編成の基本的考え方
集中改革期間2年目の取組
- 「経済・財政再生計画」、経済・財政再生アクション・プログラム、改革工程表に則って、経済・財政一体改革を面的に拡大するとともに、国と地方を通じたボトムアップ(※)の改革を加速する。(※)ボトムアップ=現場の声を積極的に拾い上げ、意思決定に反映する手法。
平成29年度予算編成の在り方
- 平成29年度予算編成に当たっては、以下に掲げる取組を重点的に推進する。
- 経済財政諮問会議において、概算要求の検討前からエビデンスを基に議論と精査を進める。その上で、予算編成に経済・財政一体改革を反映させる。
- 健康増進、コンパクトなまちづくり、住民・行政サービスの広域化・IT化等に向け、先進・優良事例の全国展開、国と地方の連携強化、「見える化」の徹底・拡大を進める。
- 人口減少、少子高齢化という構造的課題に対処するため、アベノミクスの成果も活用しつつ、一億総活躍社会の実現等の重要課題に係る取組を推進する。
- 第3章に掲げる主要分野毎の改革を推進するためのメリハリの効いた予算とする。
「経済財政運営と改革の基本方針2016」及び経済・財政再生計画改革工程表(文教・科学技術分野抜粋)
- 少子化の進展や学校教育現場における諸課題、地方公共団体の政策ニーズ等を踏まえ、集中改革期間中の教職員定数の中期見通しの策定に向けて、多様な研究者等の知見も活用しつつ、学級規模等の影響・効果の調査や加配教員・専門スタッフ配置の効果分析、教員の勤務実態・雇用形態の把握・分析等の教育政策に関する実証研究を進める。
- 全国学力・学習状況調査や教育政策の成果及び費用、背景にある環境要因を総合的に考慮して予算要求を行うことなど、教育政策においてエビデンスに基づくPDCAサイクルを確立する。その際、幼児教育から高等教育、社会人教育まで、ライフステージを通した教育全体について、政策目的が効果的に達成されているか等の観点から予算や制度の検証を行うとともに、国・都道府県・市町村それぞれの権限を踏まえ全体を通じて横断的に検証する。
- 学校現場で特に急務である学校の業務効率化・業務改善を図るため、教員の勤務実態等の把握とこれに基づく業務改善の取組を推進する。
- 国立大学法人運営費交付金の各大学の機能強化の取組構想やその評価に基づく重点配分により、大学間の連携や学部等の再編・統合の促進を図るとともに、民間資金の獲得割合の上昇を1つの指標とすること等により、民間資金の導入を促進する。
- 国立大学・公的研究機関と民間企業等との共同研究の促進等による民間資金導入の促進、国立大学の寄附金収入の拡大など財源の多様化、有能な人材の流動化、研究設備の共用化を推進する。
日本再興戦略2016
日本再興戦略とは
「日本再興戦略」とは、第二次安倍内閣による成長戦略の名称です。平成25年6月14日に閣議決定後、平成28年まで毎年内容が改定されながら、「日本再興戦略」の名称が継続されました。
「日本経済再生本部」の下で設置される、「産業競争力会議」(平成25年から28年)で、首相を議長として話し合われ、決定されてきました。
「日本再興戦略」には、企業活動を活発にさせる規制緩和策など、予算がなくても経済成長を促す取組が多く含まれていました。
平成29年から「未来投資戦略」、令和2年10月からは、「成長戦略」と名称を変えてきました。
「産業競争力会議」の変遷
- 平成25年~28年‥産業競争力会議
- 平成29年~‥「未来投資会議」に名称変更
- 令和2年10月16日~‥管政権で、「成長戦略会議」設置。経済財政諮問会議で決定された経済財政運営、改革の基本的な方針を具体策に移すための制度改革について、官房長官を議長として議論する場へと格下げされた。「日本経済再生本部」、「未来投資会議」は廃止された。
「日本再興戦略2016」の概要
600兆円に向けた「官民戦略プロジェクト10」
新たな有望成長市場の創出
- 第4次産業革命の実現~IoT・ビッグデータ・AI・ロボット~
- 世界最先端の健康立国へ
- 環境エネルギー制約の克服と投資拡大
- スポーツの成長産業化
- 既存在宅流通・リフォーム市場の活性化
ローカルアベノミクスの深化
- サービス産業の生産性向上
- 中堅・中小企業・小規模事業者の革新
- 攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化
- 観光立国の実現
消費者マインドの喚起
- 官民連携による消費者マインド喚起策等
生産性革命を実現する規制・制度改革
- 新たな規制・制度改革メカニズムの導入
- 国家戦略特区の活用(構造改革の突破口)
- コーポレートガバナンスの更なる強化
- PPP/PFI等による公的サービス・資産の民間開放拡大
イノベーション創出・チャレンジ精神に溢れる人材の創出
- イノベーション、ベンチャー創出力の強化
- 経済成長を切り拓く人材の育成・確保
- 成長制約打破のための雇用環境整備、女性の活躍等多様な働き手の参画
「経済成長を切り拓く人材の育成・確保」のうち、学校教育に関する記述
初等中等教育でのプログラミング教育の必修化(2020年~)・IT活用による習熟度別学習、高等学校での数理・情報教育の強化、トップレベル情報人材の育成
海外の成長市場の取り込み
- TPPを契機にした中堅・中小企業の海外展開支援
- インフラシステム輸出の拡大
- 対内直接投資誘致の拡大
- 経済連携交渉、投資協定・租税条約の締結・改正の推進
改革のモメンタム※の活用 ※「モメンタム」=はずみ、勢い
まとめ
「経済財政運営と改革の基本方針2016」第3章5節「主要分野ごとの改革の取組」の(4)「文教関係」では、
少子化の影響を踏まえた少子化の影響を踏まえた予算の効率化、民間資金の導入促進、予算の質の向上・重点化、エビデンスに基づくPDCAサイクルの徹底を基本方針として改革。
教職員定数の中期見通しの策定に向けて、教育政策に関する実証研究を進める。
上記の主要歳出分野のほか、全ての歳出分野において、聖域なく改革を進める。
とあるように、教育予算をいかに少なくするか、どのように教育予算を確保するか、どのように予算を効率的に使うかに注視した内容となっています。
これは、小泉内閣の「骨太の方針」や「経済財政諮問会議」が、「聖域なき財政改革」の着実な実行のために作られたもので、その精神を継承していることから、当然のことです。
また、第2章「成長と分配の好循環の実現」の第2節「成長戦略の加速」(1)には、
人材育成(実践的な職業教育、教育研究拠点の強化、体系的育成等)
教育再生(世界トップレベルの学力達成と基礎学力の向上、チーム学校、給付型奨学金の創設に向けた検討等)
と書かれており、国の経済成長戦略として、人材育成や世界トップレベルの学力達成と基礎学力の向上が据えられていることが明記されています。
そして、「経済財政運営と改革の基本方針2016」及び経済・財政再生計画改革工程表(文教・科学技術分野抜粋)の中に、
全国学力・学習状況調査や教育政策の成果及び費用、背景にある環境要因を総合的に考慮して予算要求を行うことなど、教育政策においてエビデンスに基づくPDCAサイクルを確立する。
とあるように、教育予算を要求する上で、「エビデンス」や、「PDCAサイクル」が重視されることになっています。
さらに、
政策目的が効果的に達成されているか等の観点から予算や制度の検証
とあり、 やはり、教育の効果を目に見える形で測り、それを予算編成や制度改革をする上での指針にしよう、ということが分かります。
続いて、「『日本再興戦略2016』の概要」の第3章「イノベーション創出・チャレンジ精神に溢れる人材の創出」の「経済成長を切り拓く人材の育成・確保」では、
初等中等教育でのプログラミング教育の必修化(2020年~)・IT活用による習熟度別学習、高等学校での数理・情報教育の強化、トップレベル情報人材の育成
となっており、学校教育でプログラミングやIT活用の技術が身に付についた人材を育成することで、経済成長を目指す、ということが書かれています。
ここまでに書いた内容を振り返ってみると分かるように、国の経済成長を目指すことに重きをおけば、学校教育で必要とされる履修内容は、「知」・「徳」・「体」の3つの教育内容のうちでも、「知」のごく一部の分野に限られてくるのです。
そして、教育の成果をとらえる上で、目に見える形で表すことができるものを根拠とするのであれば、「知識・技能・思考力」など、テストで成果をとらえやすいものに偏りがちです。
さらに、政府の方針から分かるように、理数、英語などのような、それを学ぶことで、国際的に経済競争力の向上が期待できる分野に、予算が配分されやすい、ということです。
だって、考えてみてください。
「いじめをなくす。」という「徳」の部分についてで言えば、道徳の授業をきっちり行ったおかげで、いじめアンケートの結果が良くなり、思いやりのある心をもつ大人が増えたとしても、それが直接国の税収アップにつながったと、目に見える形で表れてくるでしょうか。
「体」の部分で、「体力・運動能力テスト」の結果を向上させるために、すべての体育教師や運動部活動指導者が工夫して、成果を上げたとしても、スポーツ関係の予算を増やしてもらえるでしょうか。
それよりも、プログラミングができる人材を多く育てたり、英語が話せる人材を増やしたりする教育施策の方が、それに予算をかけることによって、確実に国の利益につながるであろうことは、誰の目から見ても明らかです。
今回は、いつもと違う形で記事を書きました。
言いたいことは、学校教育、特に小学校や中学校の教育効果は、経済効果としては表れにくいため、「骨太の方針」に沿った施策でないと、予算がつきにくい、ということです。
言い換えれば、「骨太の方針」の存在が、教育に予算をかけない国を作り出しているということです。
ですから、教育の効果を測るのに、教育施策がどのぐらい経済効果をもたらすのかを指標とするのはやめて欲しいと思います。
そうしないと、いくら現場の教師が文部科学省の言うとおりに、子どもたちの様々な能力や資質、情操、道徳心や体力を高めようと頑張ったとしても評価されず、少ない職員数で、効率的に仕事をして、学習能力を高めることのみが評価されることになってしまいます。
それよりも国の政治に携わる人たちは、もっと学校現場の普段の様子を見て欲しいです。
なぜなら、学校教育の予算を決める指標の中で、私が最も大事だと考えることは、子どもたちにとって、学びやすくて居心地のいい学校の環境はどういうものなのか、ということだからです。
次回は、”学校における働き方改革は可能か㉗~平成29年度概算要求「民間活力による新たな運動部活動の仕組み構築」と「一部基礎定数化による10ヶ年で29,760人の教職員定数の改善計画」~”で、平成29年度概算要求について書いていきます。
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