はじめに
前回の記事「学校における働き方改革は可能か⑪~三党連立政権下でのマニフェストに沿った事業仕分け(平成22年度概算要求)~」では、公立高校の実質無償化や少人数学級の推進等を「マニフェスト」(政権公約)に掲げた政党の樹立した3党連立政権の方針の下、平成22年度の予算の概算要求が行われたことを書きました。
そこには、公立高校の実質無償化のための措置をすることや、教員の質と量を充実させるため、少人数指導に必要な教員を定数で措置するという内容等が盛り込まれていました。
この記事では、史上初めて公開して行われることになった、行政刷新会議による事業仕分けで、概算要求がどのように変更され、予算が成立したのかを見ていきます。
平成22年度予算(全体)
「予算編成の方針について」で「ムダづかいや不要不急な事業を根絶すること等により、マニフェストの工程表に掲げられた主要な事項を実現していく」とあったように、事業仕分けにおける評価結果を踏まえて、概算要求額が大幅に見直されました。
その結果、国全体としては、昨年度予算比3兆7,512億円の減額となりました。
平成22年度予算(文部科学省)
文部科学省予算全体で過去最高の伸び率
国全体の予算が減額となったのにもかかわらず、「マニフェスト工程表」に主要事項として掲げられた、「公立高校の実質無償化」や「子ども手当の半額実施」を実現するために、文部科学省予算は、対前年度比3,109億円(5.9%)の増となりました。
これは、文部科学省予算としては、過去30年間で最高の伸び率でした。
義務教育費国庫負担金
教職員定数の改善
平成22年度概算要求では「教員の質や数を充実する」ため、教職員定数の改善を盛り込んでいました。
成立した予算では、概算要求に比べ、1,300人の減の、対前年度比4,200人増となりました。
それでも、7年ぶりの純増で、前年比5倍強でした。
①「理数教科の少人数指導の充実」のための定数改善数は2,052人のままでした。
②の「養護教諭定数の充実」、③「外国人児童生徒への日本語指導の充実」、④「食育の充実(栄養教諭定数の充実)」、⑤「教員の事務負担の軽減(事務職員定数の充実)」のための定数改善数が減らされました。
「主幹教諭によるマネジメント機能の強化」の定数改善はなくなりました。
教員給与の縮減
平成18年の、「行政改革推進法」の制定で、教員の給与を減らすことになり、教員の給与の優遇措置である「義務教育等教員特別手当」の給与の2.76%分の引き下げを段階的に進めてきました。
合わせて、教職調整額の見直しを議論してきました。
平成22年度予算では、人事院勧告と事業仕分けの結果、「義務教育等教員特別手当」がさらに減額されることとなり、給料の2.2%→1.5%へ縮減されました。
さらに、特別支援学校や特別支援学級で指導する教育職員に支払われる「給料の調整額」が、平成21年度に引き続き、さらに縮減され、調整額1.5→1.25になりました。
概算要求と同様に、教職調整額の見直しについては、やはり記述はありませんでした。
また、概算要求に盛り込まれていた「管理職手当の改善」はなくなりました。
給与を増額する施策がなくなりましたので、「メリハリのある給与体系」という言葉も消え、「給与の縮減」という項目になりました。
退職教員等(非常勤講師等)の活用
「退職教員等(非常勤講師)の活用」として、概算要求では、19,500人(週12時間換算)を要求していましたが、成立した予算では、7,000人(週12時間換算)と大幅に減らされました。
それでも、前年比5,500人の増です。
まとめ
「学校におけるの働き方改革」という観点から見ると、平成22年度予算は、教職員定数が7年ぶりに純増され、しかも前年度比8倍強になった、という点で評価できます。
しかし、民主党マニフェストにあった、「少人数学級の実現」は、叶いませんでした。
政権がマニフェスト工程表に主要事項として掲げた、「公立高校実質無償化」などの莫大な予算を確保するために、文科省としては、やむを得なかったということでしょう。
次回は、3党連立政権として、初めて予算編成に本格的に携わることになる、平成23年度予算について説明していきます。
いよいよ少人数学級が実現していきます。
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