はじめに
私と夫は、令和2年3月31日をもって、長年勤めた公立学校の教員を退職しました。
私は、定年前早期退職です。
夫は、管理職になった後、定年退職です。
私は、「そろそろ退職したい。」と考えるようになってから、何歳で退職すると退職金を割り増しで受け取ることができるのか、いつ退職するのがお得なのか、自治体の教員組合の冊子を読んで調べました。
そして、「定年前早期退職」制度のことを知りました。
その冊子では、退職金の金額の他、受け取れる年金額のことも調べることができました。
しかし、それ以外の、退職のときに必要な手続き等については、調べようと思っても、ネットにも必要な情報がほとんどありませんでした。
退職することは、同僚たちには内緒でしたので、職場内でそういった話をすることもできず、困りました。
実際に退職間際になり、事務員さんに聞きながら、手続きを始めてみると、事務員さんも退職の手続きについて、よく分かっていないこともありました。
その理由は、その方が学校事務員になったばかりの方だったことと、私の自治体では、たまたま教員の身分が、県職員から市職員に変わったばかりだったことの2つです。
さらに、実際の手続きが、ネットなどで調べた内容と違っていたり、「えっ、そんなこともするの?あの書類必要だったんだ。」などと、後から分かったことも多かったです。
そこで、現在、早期退職を検討の方や、定年退職を間近に控えた方が私のように困らないよう、退職制度や、退職手当の計算の仕方、手続きの仕方等について、私の経験したことや各自治体の情報などを基に、詳しく説明します。
なお、この記事では、退職の手続きの仕方については、退職前の手続きについての説明になります。
この記事を読んでほしい人
- 早期退職を考えている公立学校の教員
- もうすぐ定年退職を迎える公立学校の教員
- 公立学校の教員の退職制度に興味のある人
この記事を読むと分かること
- 公立学校教員の退職制度の種類
- 公立学校教員の退職の手続き(退職前)
私と夫の職歴
受け取ってきた給与の金額や職歴によって、退職金の金額やその他の手続きの仕方が、違いますので、簡単に私と夫の職歴をご紹介します。
私の職歴
私は、現役で教育大学に入学しました。
小学校・中学校とも1級の教員免許をもっています。
卒業後すぐに、採用試験に受かり、33年間、某政令指定都市の公立小・中学校で正規教員として勤務し続け、令和元年度末に退職しました。
管理職の経験はありません。
校務主任や学年主任を経験した程度です。
途中、療養休暇(1年未満を1回)や育児休暇(1年未満を2回)などの休暇を取りました。
主人の職歴
私の夫は、1浪して教育大学に入学しました。
小学校・中学校とも1級の教員免許をもっています。
卒業後すぐに、採用試験に受かり、37年間、私と同じ政令指定都市の公立小・中学校で正規教員として勤務し続け、定年退職しました。教頭職7年間、校長職4年間です。
公立学校教員の退職制度と退職金の計算方法
総務省の「地方公務員の退職手当制度について」という資料によると、
地方公務員の退職手当については、各地方公共団体の条例により定めること
(中略)国家公務員の退職制度に準じること
となっています。
地方公務員の退職手当は、以下のように計算します。(これは、一例です。各自治体により異なります。)
退職理由によって、支給率などの計算方法が変わり、場合によっては、受け取る金額が大きく異なってきます。
また、退職手当だけでなく、「加配金」が加わる場合があります。
以下で説明します。
公立学校教員の退職制度の種類
定年前早期退職特例措置制度
対象者について
退職時の年齢が55歳以上かつ退職手当算定上の勤務期間が25年以上で年度の末日に退職する人。(各自治体により異なります。)
私が利用した制度は、これになります。
※「退職手当算定上の勤務期間」に、入らない主なものには、「育児休業期間のうち、3分の1に相当する月数」等があります。
手続き等について
退職予定日の属する前年度に勧奨を受け、4月10日までに所属長を通して教育長に対して申告を行う。(各自治体により異なります。)
退職手当について
支給率については整理退職等を適用する。
また、年齢に応じて最高20%の加算があり、加算割合は、退職日に応じて次のとおりになる。(各自治体により異なります。)
【定年前早期退職特例措置制度退職金の加算割合の表の例】
55歳に達した日の属する年度の末日‥20%
56歳に達した日の属する年度の末日‥16%
57歳に達した日の属する年度の末日‥12%
58歳に達した日の属する年度の末日‥8%
59歳に達した日の属する年度の末日‥4%
準早期退職特例措置制度
対象者について
退職時の年齢が55歳以上かつ退職手当算定上の勤務期間が10年以上で年度の末日に退職する人。
手続き等について
退職予定日の属する年度の1月31日までに所属長を経由して教育長に対して申し出を行う。(各自治体により異なります。)
退職手当について
支給率については整理退職等を適用する。
また、年齢に応じた最高20%の加算はない。
定年退職
60歳になった年度末での退職。
退職手当支給率については整理退職等を適用する。
普通退職
上記以外の退職。
退職手当支給率は普通退職を適用する。
退職制度を利用するにあたっての留意点
勤務した期間の違いで、利用できる制度が違う
定年前早期退職特例措置制度と準早期退職特例措置制度の違いは、勤務した期間の違いです。
32歳に教員になった方は、55歳の時点で、勤務期間が25年未満なので、まだ定年前早期退職特例措置制度が利用できません。
準早期退職特例措置制度と普通退職の違いの1つは、勤務した期間の違いです。
47歳で教員になった方は、55歳の時点で、勤務期間が10年未満なので、まだ準早期退職特例措置制度が利用できません。
いつ退職を申し出るとお得か?定年前早期退職特例措置制度の場合①
私の自治体では、定年前早期退職特例措置制度を利用する人は、
退職予定日の属する前年度に勧奨を受け、4月10日までに所属長を通して教育長に対して申告を行う。
ことが必要です。
ただし、ここに記載してある内容は、自治体によって異なります。すべて、私の自治体の例です。
まず、54歳になる年度の1月頃に、条件に該当する先生は全員、校長先生から退職勧奨を受けます。
そして、3月頃までに、校長先生に次年度末で退職するかどうかの意向を口頭で伝えておきます。
そして、55歳になる年度の4月始めに、正式に、その年度で早期退職をすることを校長先生に伝え、書類を書いて提出します。
書類提出後の変更はできません。
すると、55歳での定年前早期退職特例措置制度を利用することができます。
55歳での利用は、退職金の加算割合が一番高く、20%増です。
※前述「定年前早期退職特例措置制度退職金の加算割合の表の例」参照
56歳以降も、毎年、1月に校長先生より勧奨を受けることになります。
その後の申請の流れは同じです。
56歳以降は、4%ずつ加算率が下がっていきます。(自治体により異なります。)
いつ退職を申し出るとお得か?定年前早期退職特例措置制度の場合②
定年前早期退職特例措置制度を利用することができる年齢、勤務期間であるにも関わらず、利用できない場合があります。
それは、申し出と書類提出が退職する年度の4月10日以降になった場合です。
その場合は、「準早期退職特例措置制度」しか、利用することができません。
すると、退職金の加算がなくなってしまいます。
ですので、55歳を過ぎたら、年度途中で退職するのは、極力避けましょう。
そして、退職予定日の一年以上前に、管理職に申し出るようにしましょう。
病気になったとしても、療養休暇などの制度を利用して、何とか次の年度末まで退職を先延ばしするようにしましょう。
申し出が遅れてしまった場合は、もう一年退職を先延ばしにした方がいいでしょう。
いつ退職を申し出るとお得か?準早期退職特例措置制度の場合
準早期退職特例措置制度と普通退職の違いの1つ目は年齢であることは、前述したとおりです。
しかし、準早期退職特例措置制度を利用できる年齢、勤務期間であるのにも関わらず、普通退職しか利用できなくなるケースがあります。
それは、
- 退職する時期
- 書類を提出した時期
によります。
1.は、年度途中で退職する場合です。
2.は、年度末に退職する場合であっても、その年度の1月31日までに、書類を提出できない場合です。
普通退職では、
退職手当支給率は普通退職を適用する。
となります。
なので、55歳以上の方は、「退職したい。」と思っても、年度末までは、退職しないようにしましょう。
その年度の1月31日までに申し出て、年度末に退職するようにした方が、退職金がアップします。
公立学校教員の退職の手続き
こちらは、すべて私の自治体の例です。
自治体により、異なります。
定年退職
退職前の手続き
※退職後の医療保険制度や、年金については、こちらが参考になります。
※退職金制度については、各自治体に条例があります。
※下記の画像は、私の自治体の「職員退職手当条例施行規則」で、退職制度について書かれています。
まとめ
年度途中で退職すると、55歳以上であっても、退職金の支給率、加算割合のどちらも、割り増しにはなりません。
いつ公立学校教師を退職するとお得か、と言われれば、退職金の割り増し率のよい、55歳以上の年度末でしょう。
しかも、校長先生に申し出る時期は、退職を予定する日の1年以上前です。
そして、退職金の割り増し率が一番よいのは、やはり、私のように、定年前早期退職制度を利用できる年齢に達したら、すぐに利用することですね。
そのためには、まず、日頃から、情報を収集しておくことです。
そして、教員をやめたくなったり、病気や家庭の事情で続けられなくなったりして、退職する可能性が出てきたら、早めに管理職に相談することです。
ただし、年齢が上がると、それだけ昇級して、給料が上がる可能性があります。(今後この制度は変わる可能性もあります。)
給料が上がり、勤続年数が増えれば、退職手当金額も上がる可能性が高くなります。
ただし、私と夫の退職金は、勤続年数は、私の方が少なく、私は、管理職の経験もありませんでしたが、二人ともおよそ2,500万円でした。
これには、公立の教員の管理職の給料が、長年減らされていたことも関係すると思います。
また、退職手当の「支給率」も、勤続年数35年まで上がり続けますので、しっかり計算して支給額を調べてみてください。
各自治体で、退職手当の支給額が自分で計算できるシートを用意していると思いますので、正確な金額は、現在お勤めの自治体に問い合わせるなどしてください。
コメント
静岡県の教員55歳になります。34年が終わりました。早期退職制度は、まだありますか?早く退職したいのですが、早期退職制度は20%アップと聞いたのですが。まだ、その制度は、残っていますか?知りたいです。
k様、コメントありがとうございます。静岡県の例規集などを見ましたが早期退職制度(勧奨退職制度)について書かれているものが見つけられませんでした。静岡県の教職員組合などに問合わせてみられてはいかがでしょうか。教員不足のおり、早期退職制度がなくなった自治体があるという情報もあります。しかし、その代わりと言っては何ですが、高齢者部分休業制度も始まったようです。「業務に支障のない範囲で取得することができる」とあり、実際に学校現場で取得できるかは自治体によるのではないかと思いますが…。体力的にきついということであれば1度その制度についても勤務している自治体の規則などを調べてみられてはどうでしょうか。